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ビールを飲みながら速くなる~総論③~水分摂取活動(略して水活)

 5月も半ばになり、気温が上がってきました。
 そしてビールの美味しい季節になってきました。

 走ったあと、水を我慢して我慢して我慢してビール!!そんな人もおられるのではないでしょうか。のどの渇きはビールが癒してくれる、疲れはアルコールが和らげてくれる。そして仲間と語らって元気が回復する。
 これが楽しみで走られる方も多いと思います。

 走って抗酸化力のウコンの力を飲んで、たんぱく質補給のザバスを摂取してさぁビール!!

 でもそうだ!!もう一つ注意事項があります。

1.運動中・後は脱水!肝臓の働きは落ちています。

 運動中・運動後は主に脱水により胃腸の血液の流れが低下します。肝臓は主に胃腸の静脈(門脈)から血液を供給されますから、運動により肝臓の血流は著しく低下します。ベルギーの文献では、最大酸素摂取量の70%程度でバイクを漕いだ際、その門脈血流は安静時の20%まで低下したと報告がありました。

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 門脈血流は、脱水や運動で低下すると言われています。なので運動を終了しても、脱水まで改善しないと門脈血流は軽度の改善にとどまる可能性が高いと思っています(ここは文献が見当たらなかったので、予想でグラフを作製しました)。

 門脈血流が落ちると、肝臓は力を発揮できません。ですのでしっかり水分を補給しましょう。アメリカスポーツ医学会(ACSM)は、ランニング中は400~800ml/時で摂取、ランニング後は脱水からの回復のために失った水分量の1.5倍の水分摂取が推奨されます
 肝臓の元気をつけるためにも、積極的に水分を摂取しましょう。

2.脱水は筋肉にも負担がかかります。

 総論②でも述べたように、水分不足は電解質異常、体温調節機能異常につながります。その状態でビールをたくさん摂取すれば、それは横紋筋融解症に代表される筋肉への負担につながります。一応横紋筋融解症の病因分類を貼っておきます。

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 水分摂取に加え、電解質の補給、それにこの時期は高体温にも気を付けないといけません。
 それなら・・・冷たいビールに、塩味をかけた枝豆でいいんじゃねぇ!?

3.でもビールで水分補給をすると?

 気持ちはわかります。ビールも立派な水分ですから。
 ですがビールで補給しても、やはり尿量が増えてすぐにまた脱水になってしまうようです。オランダからの文献で、運動により体重の1%の水分を失ったあと、失った水分と同等のビール、水、スポドリで補充したという研究があります。

プレゼンテーション1

 ビールで水分補給しても、最初の1時間で補給した水分の40%近くが尿として出ていっています。これでは補給しても補給しても追いつかないですね。走ったあとはまずはスポーツドリンクでしっかり補給、そのあとビールにしないといけませんね。

 そして日本ではこの方のデータもあります。

 そう自分です(笑)。先日月刊ランナーズに載せて頂きました。
 自分の研究では、12.5km走ったあとに①1リットルの水+卵を摂取してビール、②卵を摂取してビール、③ビールのみ摂取して、その後の体重変化をみてみました(水1リットル飲んで直後ビール700mlとか、めちゃ辛かった(泣))。

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 オランダの報告と違って、ビールで摂取した水分は3時間で喪失してしまいました。特に今回のような高アルコールビールがよくないようです。ただ、食べ物を合わせて摂取することで軽減できるようです(塩分がよいという文献もあります)。また、飲む前に水分を摂取していてもあっという間に水分を喪失してしまいます。
 走ったあとは十分に水分補給したつもりでも、普段より口喝が強く、ついつい飲みすぎてしまう。そんなからくりはここにあるものと思います。飲んでいる最中、ビールでなく非アルコール水分の補給も併せて行うとよいと思います。

4.ビアランナーの最適解

・運動前・中・後は十分に水分をとる。
・ビールを飲んでいる最中は、同量の水分も摂取するよう心がける(ビール→排尿→口喝→ビール→排尿→口喝の悪循環を抑える、低アルコールビールは水分が保持されやすい)。
・飲酒時は、食事も一緒に摂る。
・飲酒後も水分は体から抜けやすい。水分はこまめにとる。

5.余談:夏場の脱水は、胃腸にも影響します(最近言われ始めた運動誘発性胃腸症候群(EIGS)という概念) 

 運動による消化管の血流低下は、ランニング中の腹部症状(腹痛、嘔気、下痢、血便)の原因になると、以前から言われてきました。さらに最近は、血流低下に伴う腸管の粘膜障害に、暑さの熱ストレスが加わることにより、腸内細菌やその毒素が全身をまわるようになったり、免疫系が暴走を起こすことがあると言われるようになってきました。特に2021東京オリンピックでは、その対策が叫ばれています。その予防のために書いてあったことを列記します。
・水分摂取
・冷却(アイススラリーなど)
・腸管血流の増加のため、運動前中後の補食
・栄養補助食品
 グルタミン、整腸剤、牛の初乳、クルクミン

 ここでもグルタミン(・・・味の素ですね、アミノバイタルproに入っています)、クルクミン(・・・ウコンの力ですね)が出てきます。色々な意味で、ランニング後に摂取した方がよいものが見えてきますね。
 
 最後に、日本スポーツ栄養協会が同論文を日本語で要約したサイトをつくってらっしゃるので貼っておきますね。

 

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