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枠(フレーム)を考える 2話目


1話目からの続き。

前回はフランスのプロジェクションマッピングの原型を見たという話で終わっていました。この原型は建物に2Dのモーショングラフィクスを投影したもので、当時それだけでも斬新な発想でしたが、僕は3DCGの仕事をしていたので、見た瞬間これはすぐに世界的に3Dになる!と考えました。

当時の相棒、エンジニア&CGクリエーターの橋本くんに相談して、夜な夜なやり方を考えました。半年〜1年ぐらいしたら努力が徐々に実って小さなオブジェクトにはそれなりに照射できるようになります。​

別のマテリアル(オブジェクト)に映像が憑依していく感覚。ほんと面白かった。

詳しい技術的説明は長くなるので置いておきますが、超簡単に書くと、空間の大きさと、投影するオブジェクトの大きさと空間における位置を3Dのコンピューター空間で作成します。その空間内でプロジェクターの位置と実際に人が見る位置を設定。プロジェクターからの映像が投影するオブジェクトの面に当たった時に、視聴者の位置から正しく映るように、3次元で計算して歪んだ映像を作るということです。そうすると、その映像がリアルワールドに出てきたときに、パソコン内の3D空間で作ったものと同じ物の実寸台が目の前に現れるわけです。

3次元なので奥行き表現ができるのが特徴なのと、割とプロジェクターの位置が自由に設定できます。映画館がわかりやすいですが、通常プロジェクターの位置は視聴者の後ろな場合が多いですが、僕らの編み出した方法だと、位置をあまり気にしなくて良いので、後日仕事にし初めてからは割と役に立ちました。

フランスのものが脅威的だったのは、プロジェクターの使い方。当時は外の建物に映せるほど明るいルーメン数のプロジェクターは大変高価でした。しかも1台では無理。外って意外と明るいんです。何台も重ねないと映像が認識できません。

そんな数のプロジェクター、お金も実績もないので用意できない。はて困りました。次は建物に写して見たいんだけど見積もったら400万以上かかります。今だと、日本初!プロジェクションマッピング!とか言ってクラファンとかするんだろうけど、そんなサービスはまだ世の中にありません。

そしたら、当時の我が社の社長は映写の仕事をしていたのですが、社長の友人の会社が割と大きいプロジェクターを持っているということを聞きつけました。

何かをやりたいという情熱は強い。真剣に頼みに行くと、めちゃくちゃ良い人たちで無料で協力してくれることに 涙。*モノリスさんと言います。プロジェクターやイベント映像の現場仕事に困ったらぜひご相談を!ありがとう。

そして、この出会いから約3ヶ月後、当時のほぼ最高峰のプロジェクターを4台スタックして使ってやった実験作品。この出会いから現在まで、モノリスさんとはずっとお仕事を頼め合える仲間であり続けています。嬉しい出会いです。



やはり大きいものに移すと、よりフレームを意識せずに済むことを発見。フレームがオブジェクトのエッジ面になるので、そういう感覚がしました。

先ほどの施策を見てくれた方がオファーしてくれて、初のお仕事になったものです。いきなり対象が巨大すぎなのと、これまたビッグスポンサーで、ちょっと気合が入りました。場所は大阪心斎橋のど真ん中。電通さん調べですが、これが広告として、日本で最初にプロジェクションマッピングを活用した事例として記録されてます。関西では割と大騒ぎになり、凄まじい数のメディアが来たんですよ。昔すぎて、前例がなく、色々と技術的な突破に苦労したし、条例なども前例がなく、広告代理店チームの方々が懸命に調べて突破してくれて、総合的に勉強になった仕事でした。

今話題の新宿の3Dネコちゃんと同じノリですね。これが明るく高精細になって、屋外モニター画面の中で展開してるのが、新宿ネコちゃん。あれを見ると映像表示機器の進歩の凄さを感じます。スーパー明るそう。今度見に行かなきゃ。

そしていくつか仕事を挟み、2010年、NIKEとお仕事をさせてもらったのがこの作品。これは文化庁メディア芸術祭で推薦作品に選んでもらえた。

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そしてこの後、ロックバンドのB'zと横幅17mの超巨大プロジェクションマッピングを全国の会場を回ってやったり。ブルーレイ、DVDに入ってるので映像がお見せできないのが残念ですが、これは凄まじい数のプロジェクターを使ったので、映像はスーパー高解像度。自分が作ったプロジェクションの中では一番のハイクオリティーだったかも。

川越の企業様と川越の光祭りで2年連続やらせてもらったり、

人と絡めてみたものとか。

色々やりましたが、やはりフレームはあるのです。

薄くはなっただけで、見慣れてくるとやはり、投影先のオブジェクトの輪郭がフレームなわけです。そう言うジレンマが、再度ふつふつと心に湧き上がってきたときに下の作品が転機になりました *一部前後関係が新旧混じっておりますが、文章をわかりやすくするために入れ替えております。

この作品はプロジェクションを使用したものだけど、背景にも同時に投影して、拡張感を出そうとやってみた物です。鏡も使ってて、今見ると、昔の自分めっちゃ枠と戦ってんなと思います 笑。

ただ、この作品のおかげで、自分自身も違うことをこの作品から受け取れました。映像の枠をなぜ越えたいのか?と言う、もっと本質的なことに挑戦しようと決意しました。

境界というものは、今、目の前に起こっている瞬間の視覚だけに限定すると目に見えてしまうものだけど、人間の他の感覚を駆使して、もっと奥深くに訴えかけるとフレームはなく、体感、感性に乗り移ることができるのではと考えたのです。枠をなぜ崩したいのかという本質を探るべきだと決意しました。

そしてこの後、プロジェクションにこだわらなくなり、光を使ったインスタレーションアートを制作していくことになります。

枠を拡張していくことは、簡単にいうと感覚の拡張だと思うのです。現在VRとかってやってみると体感できるけど、視覚が完全に支配できるので、そのおかげで別の感覚が確実に拡張されてる。

VRの画面は、モニターなので向こうから迫ってくる光なので、襲われてる感が半端ないですけどね。

その点プロジェクターは照射、いわばカメラアイ的で、その点で情緒的なので僕はプロジェクターの光の方が好きですが。

この光の質も含めてインスタレーションを使って考えていく、さらに次の旅が始まるのですが、このインスタレーションの話こそ、めちゃくちゃ長いのでまた別の記事で書きます。

僕のフレームを越えていきたい旅は、次は感覚の拡張の旅になり続いていくことになるのです。 




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