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チームドクター/ツアードクター

格闘家のチームドクターの目的、それはとにかく選手を勝たせることだ。

もちろんアンチドーピングは大前提で、怪我やダメージを軽減しながら、試合当日に最大限のパフォーマンスが発揮できるように、いろんなアイディアを実行する。

怪我の状態によっては、戦略や戦い方も変える必要がある。いくらローキックが主武器でも、膝を痛めている時は、ローキックは負担が大きいため、前蹴り、膝蹴り主体で組み立てる、といった感じだ。

また実際に、テーピングひとつでフットワークが変わることもあるし、パンチの当たる面積をタイトにして効かせる方法、相手の攻撃を喰らった場合のダメージを軽減する方法まで、「一般化できないノウハウ」は結構ある。

「試合2週間前に足底筋断裂したんですけど、なんとか試合に勝ちたいんで」みたいな依頼がしょっちゅうあって。

そういう無茶振りのケースになんとかこたえようとしてきたので、ハードワーカーのための医療知識や医療技術は、僕それなりに蓄積している気がする。

ミュージシャンのツアードクターの目的は、疼痛や不安を感じずに演奏に集中できる状態にもっていくことだ。

ミュージシャンの場合は、急性期的な受傷よりも、慢性的なダメージの蓄積がハンパない。

腱鞘炎に悩むドラマー、上肢や肩に疼痛を抱えるベーシスト、両手指の変形性関節症のキーボーディストなど、

「それだけ練習して、レコーディングして、ツアーに出てたら、治る暇も予防する暇もないよな」

というような職業病感が半端ない。しかも基本キャンセルは効かない仕事でもある。いくら好きだからといっても、「代わりの効かない仕事」である重圧も半端ないだろう。

このようにファイターも、ミュージシャンも、ハードさや受傷起転に違いがあるだけで、「身体を酷使して他者に感動を与える」という部分では共通点も多い。

だから

・身体が変形するほどやり込まないと、上には行けない。
・身体を壊してしまったら、上には行けないどころが、継続が危うい。

というジレンマの中に身を置いているのも事実だ。

今年は、演劇のサポート・ドクターとして、カクシンハンのリハや本番のサポートドクターの機会をいただいた。俳優さんならではのフィジカルのダメージや特性について、学ぶことが非常に多かくて勉強になりまくっている。

そのうちまとめて記事にしたいと思うが、やはり「己の身体で勝負する」って、ホント、尊いことをやっているなぁ、と改めて感嘆している。





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