#242 少ない環境で、必死に取り組む姿に
途上国のスポーツ環境
僕はモンゴルという国でサッカーをしていました。
いまはラオスという国に移っているのですが、アジアでもタイやカンボジア、ネパールといった国々で生活をしてきました。
やはり、日本人として、日本で育ってきた僕からすると
彼らの置かれている環境というのは整ってはいない。
プロとしての環境となれば、最近はタイやカンボジアは日本のいくつかのクラブよりも優れた設備を有しているクラブもある。
しかし、一般的に言えば彼らのスポーツ環境というのは日本のそれよりも難しい。
特に、モンゴルではまだまだスポーツの現場での改善というのが必要だと思いました。
モンゴルサッカーの環境
モンゴルはみなさん知っての通り、冬場は大幅に冷え込みます。冬場はマイナス30度というのも珍しくない世界です。
僕はモンゴルのサッカーチームに所属していた際に1度だけ、10月の中旬に雪の降る中で試合を行いました。
その時の気温はマイナス12度。
身体が冷えたらもう痛くて動けないからハーフタイムなんていらないと思いました。
寒いとかいうより、痛いと言った方が適切です。
なので、そういう冬場の環境も考慮されてピッチは人工芝です。
そして、冬場は外出は困難なので、4月から10月の暖かい時期にリーグは行われます。
女子サッカーとの出会い
僕はモンゴルで生活をして練習を行い、試合をしていました。
そんなある日、モンゴルの女子代表チームの監督さんが日本人だということを知り、練習の見学に行きました。
そして、好奇心旺盛な僕はぜひ自分にも何か手伝えることがあれば勉強させて欲しいという事で、臨時コーチのような形で女子選手たちに指導を始めました。
最初は周りで一緒に練習をしたり、ボールを蹴ってあげたりというくらいでしたが、徐々に指導を選手たちに求められるようになってきました。
そこから彼女たちのタイ・ブリーラムでの国際大会でも帯同させていただけるようになるとは思ってもいませんでした。関係者の方々にたくさんご配慮いただいて、再会を果たせたこともとても嬉しいことでした。
こうしたスポーツを通して、異国の異性であるが共通の趣味であるサッカーを通して全力をぶつけ合う中で生まれた絆というのを感じました。
その際には、選手たち一人ひとりからメッセージをもらいました。その前日に選手たちが何やらホテルで作業をしているのをみていて、まさかそれが自分に向けてのものだとは思いませんでした。
とても感動しました。しかも、監督の通訳さんの力を借りて日本語で書いてくれていたのです。
途上国のスポーツ指導での課題
途上国の課題として、プレーできるお手本となるものが少ないというのも感じました。
だから、言われたことに対して、それを実践して見せてくれる存在がいないために、確信を持ってそれに取り組めない。
日本のサッカーでは、Jリーグがあることによって参考にする事ができますよね。僕の場合は地元に柏レイソルというクラブがあって、試合を見て「すげえ!」と感動してその後にはもうサッカーがしたくて仕方がなくなるという経験がたくさんありました。
見て、感動して、学び、それを実践するんです。
またそれ以下のカテゴリーでもレベルが高いですし、より良い指導者というのが増えているので、説得力も増すのでしょう。
言って、それを実践できる存在がいるというのはとてもわかりやすい。
しかし、それがないと「口ばっかり」となってしまうこともあるのかもしれない。
自身の経験として、それを伝えられてかつ、周囲にそれが認知されている存在というのは極めて重要だと感じています。
環境が少ない中でも情熱がある
冒頭で述べたように、モンゴルのスポーツ環境というのは日本と比べればまだ足りない部分が多いです。
もしかしたらインドア競技に関しては冬場の長いモンゴルの方が発展しているかもしれません。(バスケットボールとかは非常に人気です。)
ちなみに女子のバスケットボールは世界的にもモンゴルは強いんですよね。
多くのスポーツ環境は日本と比べれば十分ではない。
でも、そうした少ない環境の中でも、強い情熱を感じたのです。それが、僕が彼女たちに支援をしたいと思った動機です。
毎朝8時から練習がスタートします。
なぜ8時からなのかというと、その後に男子が使うからです。
女子は男子と比べるとその環境が得られる機会も少ない。男子が使わない時間を狙って練習しなければならない。そんな中でも普段よりも環境が用意される代表チームでの活動に、選手たちは目を輝かせ、真剣な眼差しとともに学べる喜びに満ちていました。
それを感じさせられた。わからない事はしっかりと質問してくれる。そして、出来なかった事は翌日朝早く来て自分たちで課題と認識して練習をしているんです。
僕はこの時思ったんです。
熱意 > 環境
環境があったとしても、学びたいとか、強くなりたいという意志がなければその環境をも無駄にしてしまうと僕は思った。
男子チームを批判したり、比べたりするつもりはないけれど、僕がその時に感じたのは女子と男子の熱量の違い。その当時、僕はモンゴルでプレーをしていたのだから当然、男子チームといえば僕らが所属しているチームとの比較ともなる。
男子の方が良い環境を得られる。
女子チームは大きなスタジアムでトレーニングをしている。その横で女子チームは狭いフットサル場ほどの大きさのピッチでトレーニングをしている。
しかし、圧倒的に熱量を感じられたのは女子チームだった。それは当時監督をされていた日本人の壱岐さんの指導力にも強く影響されていたと思う。これは間違いない。僕にとって、この壱岐さんとの出会いも、後にラオスでクラブをマネージメントする際にとても参考になった。
上にあげた写真はスタジアムで、女子チームは早朝の空き時間を活用してここでトレーニングをしていた。しかし、それ以外の場合にはその奥にあるフットサル場を活用していました。現在は新たなナショナルトレーニングセンターが出来上がったので、少し環境は改善されていると思います。
熱意 > 環境
これは僕の意見です。
環境がないからできないということをよく聞きます。
僕は途上国や南米でもプレーをしました。南米での経験というのは後にとても大きなものだったなと感じさせられます。
僕のいたクラブはとても大きなクラブで、その地域でも強豪チームであり、トップチームには監督シメオネ氏、アルゼンチン代表でキャプテンも務めたファンセバスチャンベロン氏という超大物も所属していました。
僕はその世代別チームにいて、多くの国からテスト生が2週間おきくらいで参加していました。ときには1週間でいなくなったりもしました。
彼らは良い環境を求めてきているわけではないんですよね。生きるためにチャレンジをしにきている。そしてその情熱に突き動かされて人生をかけているんです。
どんなに過酷な環境であれ、彼らの心には強い意志や情熱がある。
だからこそ、その彼らがより良い環境に移ればさらなる成長、秘めている能力が開花されるのは想像に容易いと思います。しかしながらそれでも一握りしか残れないのです。そういう厳しい世界だと僕は学びました。
成長には何が大切なのか
以上の経験から、僕は成長するために必要なのは「環境」よりも「情熱・想い」だと思います。そして、想いがあるところには環境というのは後からでもついてくると信じています。
なぜなら、想いがあるところにはその想いに共感をする人たちが集まります。そして、その熱を育てるために一緒に建設的な努力を目指すことができる。
しかし、情熱がなく、環境が先行してしまった場合には、ガッカリしてしまうこともあると思う。
最後に、支援とは何か
そうした中で、僕はサッカー選手としてプレーする傍らで途上国のサッカーを愛する子供達への支援や、一緒にサッカーをする機会を作ったりしてきました。
初めはただ物資を支援したところで満足感がありました。
「ああ、良いことをしたな。」
だけど、活動を継続していく中でこんなことを感じました。
いま支援したものがなくなったら今後、彼らはどうするのだろうか?
そうして現実を見た。また支援を求める。
支援が永遠に続いていく。そしてそこから抜け出せない。
もしかしたら、支援する側にも責任があるのではないのか。
支援した彼らが次に目指すべきことは、その必要なもの、または欲しいものを自分で手に入れる技術や考えを得ることだと思う。
誰かのために支援をするということはとても良いことだと思う。だけど、そこには必ずメッセージを添えて欲しいと願う。
「あなたたちが頑張っているから、その背中を押したい。そして、次は自分の手で掴み取っていけるように成長してください。」
もちろん、短期的にその成長ができるかはわからない。支援する側としても、可能な限り、継続的に支援ができることは現実として必要だけれど、それと合わせて支援は永続的ではないかもしれないということは理解しなければならないと思う。
だから、僕はスポーツを通して支援をしてきたけれど、支援をして終わりなのではなくて、人を育てたいと思った。スポーツを通して努力すること、目標を持つことの大切さを伝えていきたい。課題に対して解決に向けて努力ができる人材育成がしたい。
そして国際社会で活躍できる人材を国際的なスポーツをツールとして活用して育てていきたい。
これからますます少子高齢化が進み、問題として現れてくるであろう日本にも還元ができるものとなればと思っている。
必ず海外からの労働力が必要となるだろう。その時に、僕の関わった国の人たちが日本で働くことを望んでくれたら、日本でも働けるスキルを得ていたら?
また、日本で大切となる時間的感覚や文化、姿勢というのをスポーツを通して教えてあげることができればと思う。
そして、そうした中から僕自身も多くの気づきや学びを得ています。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?