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読書会・勉強会の進め方まとめ


こんな質問を頂きました。振り返ると色々な読書会・勉強会をやってきたので,この機会にnoteにまとめておこうと思います。

報告資料作成型

事前に決めた範囲について担当者がレジュメを作ってくるタイプの読書会。これは学生仲間の読書会ではあまりやらなかった気がするけど,バーミンガム大学の院生時代,他大学の院生で認知言語学をやっていた方とGeorge Lakoffの"Women, Fire, and Dangerous Things"を読んでいた時にはこのスタイルでした。結構重厚な専門書で,「どう思いました〜?」なんて軽いノリでは(少なくとも当時の私には)とても読めたものじゃなかったので、報告資料作成型を選びました。

このスタイルの良いところは,とにかくちゃんと理解が深まることです。特に自分の担当箇所は。
問題はやはり準備にかかる時間でしょうか。「この本は本腰入れて読むぞ!」っていう本の時に頑張ってやりたいスタイルですね。

感想共有型

私のやってきた読書会の大半がこれかもしれません。同じ本を読んできて,特に資料作成は要らなくて,「どう思った?」とか「わからないとこあった?」とか。
このスタイルの良いところはやっぱり準備の手軽さです。そして,読みたい本があるから読むという大前提は守りつつ,他の人がそれを読んでどう思ったかも深掘れるという点ですごく良いので、個人的に好きなスタイルです。

このスタイルの欠点というか難しさとしては,ある程度会話をリードできる人や,他のメンバーより少し深い知識がある人や,何かその分野について一家言ある人がいないと,本当に感想の共有で終わる可能性があること。
学部3年生の夏に初めて「読書会」と呼ばれるものを同期とやった時,『国際英語論で変わる日本の英語教育』を読みました。

その時は前期にゼミに配属されて「人と対等に学ぶ」ことの楽しさを感じていたからこそ,同期と一緒に本を読もうと思い立ったのですが,今思えばあまり読書会としての深まりはなかった気もします。
もちろん,一緒に本を読んだ仲間として仲が深まることはあるし,そのコミュニティが上手く続けば段々とそれぞれの強みを発揮できる分野が生まれてくる可能性もあるので,地道に続ければ良い話なのですが。

学生時代ではないですが,『民主主義の育てかた』を現役の教員と院生で読んでいた時には,誰も専門でこういうことを考えてきた人はいないながらも,それぞれの専門(英語教育・国語教育・教師教育)に照らしながら,色々と言いたいことを言って,喋る人によって深ぼられる箇所も方向性もが全然変わるのが面白かったです。ただ単に「みんなで勉強しよう」というだけではなくて,「この本をベースにしてこのメンバーで語り合いたいよね」という空気感が良かったので、このスタイルは本そのものと同じぐらいメンバーが大事かもしれません。

院生時代にはこのスタイルで学部生との読書会もやりました。「ゆるふわ読書会」と名付けて,基本的に読んでくる前提ながらも,忙しかったりして読んでこれなかった学生がいれば冒頭で内容をフォローアップするぐらいの優しさ。「とにかく,何でも良いからみんなで本読んだり勉強したりしようよ」と、ひたすらハードルを下げて後輩を誘いました。結局その時のメンバーとは教員になってからも時々オンラインで集まって,お悩み相談会なんかをしています。

グループワーク型

教員一年目の2020年,やはり院生の頃より本を読む時間が減ってしまい,それへの不満というか反動もあって,夏休みにデューイの『経験と教育』を院生や現職教員とオンラインで読みました。
この時は元々仲の良いメンバーに声をかけていましたが,私を含め何人かがそれぞれの勤務校で参加希望者を募った結果,全員のことを知っている人は誰もいない状態になりました。人数も10人を超えるぐらいだったと記憶しています。

その時にはZoomのブレイクアウト機能を使って,複数のグループで感想を共有し合い,それぞれの学校の文脈も共有しながら,最後は全体に戻ってそれぞれのグループでのディスカッションを報告してもらいました。
教員・院生の枠どころか,学校も自治体も違う,本来何の繋がりもなかった先生たちが一緒に本を読んでる空間は,なんか不思議で,めっちゃ良かったです。

ジグソー型

これは上述の「ゆるふわ読書会」で一度使った方法ですが,同じ本の違う章を読んできた人が,その章について10分で内容を紹介するというもの。
全部を細かく読みたい本や,章ごとのつながりが大事な本ではなく,目次を見て気になった章から読むようなタイプの本には結構向いていて,忙しい中で多くの知見に触れたい人には良い方法だと思います。
あの時は『はじめての英語史』の中でそれぞれが気になる章を選んで,一週間後にその内容を紹介し合いました。(教師になる学生の集まりということもあり)他の人に「私もその章を読みたい」と思わせることを目指してもらいました。
読書量や知識を増やすだけでなく,人に伝える力も鍛えられるのがこのスタイルの利点の一つ。そして何より,読んでない人に伝えるにはかなりしっかり内容を理解する必要があるため,自分自身の理解も深まります。
ただし,読んだ本人が理解できなかったことを読んでいない人に質問して解決するのは,不可能ではないが少し難しいと思います。この時は私が『はじめての英語史』を通読済みだったこともあり,学部生の質問に答えていた気がします。
これは「ゆるふわ読書会」全体を通しての課題として残ったことですが,院生が呼び込んで学部生が参加するという形で,どうしても院生が「指導係」みたいな感じになってしまい,あまり対等なディスカッションはできませんでした。

段落読み型

今も"A Student's Introduction to English Grammar"を北陸大学と中京大学の学生とで一緒に読む読書会に参加させてもらっているのですが、そこで採用されているのがパラグラフごとに交代しながら声に出して読んでいくスタイルです。今は洋書を読んでいるので、音読ではなく和訳を声に出して言う感じです。参加者にとってかなり難しく「背伸び」感のある本を読むときに使うと良い方法かなぁと思っています。
私が学部生の頃には統語論を専門とされていた先生と一緒にチョムスキーの『我々はどのような生き物なのか』『統辞理論の諸相』をこのスタイルで読んだと記憶しています。この時は日本語版を読んだので段落ごとに音読しながら、節ごとに「ここまでで分からないところとかあった?」みたいな感じでした。タイトルは忘れてしまいましたが、チョムスキーの書いたミニマリストプログラムに関する英語の論文も読んだ気がします。その時はパラグラフごとに和訳を口に出すスタイルでした。
このスタイルは、日本語だろうと英語だろうと、とにかく「背伸び」の読書なので、基本的には「専門家」の存在が必須のような気がします。予習の有無はメンバー間で合意を取ればOKですね。今参加している中京大学さんとの読書会は予習が基本です(毎回申し訳ないと思いながら私だけ予習せず参加しています)が、学部生時代のチョムスキー読書会シリーズは予習無しでした。

ダイアログ・リーディング

勤務校の先生と今まさにやっているのがダイアログ・リーディングです。基本的には章や節で検討範囲を割って、お互い同じところを事前に読んできます。その際、一つ一つの範囲に対して「キーワード」「意味・内容」「考えたこと」を書き出しておき、読書会の時にそれを共有します。
大体いつもお相手の先生と私の切り取る「キーワード」「意味・内容」「考えたこと」が違っていて、「この章をそう読むんですね、なるほどー」みたいな気づきが生まれます。と言うか、大抵私の読みの浅さや身勝手さを強く感じることになります。笑
でも自分よりずっと知識も経験も積まれている先生が自分と同じ本をどんな風に読んでいるのかがハッキリ分かるので、本そのものからだけでなく一緒に読んでいる人からも多くを学べるという点ですごく良いです。お相手の先生が同じように感じているかどうかは分かりませんが。
今読んでいる『省察的実践とは何か―プロフェッショナルの行為と思考』がまさにそうなのですが、結構歯応えのある重厚な本を読む時に向いている気がします。

ミニ研究発表

これは読書会というか「自主ゼミ」的なものです。
信州大学の院生仲間から、院生と学部生が何人か集まって「自主ゼミ」をしていると聞き、それがあまりに羨ましかった私と同期は静岡大学でも同じように自主ゼミを開講しようとするも,学部生からの人望に欠け,実現しませんでした。
そんな折に指導教官の仕事にくっついて信州大学に行ける機会があったので,そこで静大・信州大の院生・学部生だけで集まって,院生がそれぞれの研究テーマについて簡単にプレゼンしました。
それぞれ研究の分野こそ決まっていましたが,まだ基礎的な知識をつけていた段階だったこともあり,そこまで専門的になりすぎず学部生も含めみんながそれなりに理解できるぐらいにおさまりました。
信州大学の人たちとはよくオンラインでの読書会を今でも時々やる仲ですが,一人一人のテーマを軸に色々な対話をしたあの会は少し特別な記憶です。

指導実践型

もはや学生時代の話では全然ないし、なんならまだ始まってもいないのですが,この春休み中に4回ほど企画している「文法指導勉強会」というものがあります。東北大学の院生(静大時代に仲良くしていた)と立命館大学の院生(私の勤務校の卒業生)、そして私の勤務する大学の学部生や,静大の後輩にあたる学部生が参加し,4月から中高で教鞭をとる院生2人が任意の文法項目について,その指導アイデアや教材を持ってくる。それに対して,改善点や抑えるべきポイントを参加者全体でディスカッションするイメージです。
これはまだ始めてもいないので、一通りやってみてからリフレクションがてら、またnoteで共有しようかなと思います。

マシュマロお待ちしております

こんな感じで、質問に答えるnoteも時々書こうと思います。
私自身の振り返りの機会としてすごくありがたいので、些細なことでも質問を送ってもらえるとありがたいです。(100字ぐらいで答えられるものは普通にtwitterで答えます)


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