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自由演技からの脱却

2023年度も英語科教育法の振り返りを頑張っていく覚悟を決めた。
昨年度の英語科教育法IからIVまでの振り返りはこちらのマガジンにまとめてある。

授業の基本設計

今年度の英語科教育法IIIは(既に見知った顔ばかりなので初回ガイダンスは春休み中に動画で済ませて),3回1セットを5セット回す15回の構成。
1セットの内容は「講義」「授業準備」「模擬授業&検討会」となっており,各セットで(4技能)5領域のうちの1領域をメインで扱う。
講義回と模擬授業回は去年と大体一緒。今年は模擬授業の準備を完全に学生の1週間に任せることはせずに,「授業準備」をみんなでする回を設ける。
『英語授業デザインマニュアル』を読んで,これ自体をきちんと教育法で扱わなければと考えての試み。

というわけで,教科書はこちらの二冊を併用。

最初のセットは「読むこと」
基本は昨年度と同じような内容。
昨年度の読むことについての講義回はこちら。

今年度新しく加えたのは,"What Should Every EFL Teacher Know?"から,Extensive Reading, Intensive Reading, Reading for Fluencyについてのまとめ。3名の履修学生に予め教科書の該当箇所を読んで,日本語でまとめてきてもらった。
単に「読む」とか「リーディングの授業」と言っても,読み方・読む素材・読む目的など,本来色々なバリエーションがあるはずなのだが,どうもこれまで受けてきた英語授業の経験から,「読むこと」はつまり「訳すこと」みたいなイメージが強い。そこを払拭できればと入れてみたところ。

今期は授業後に学生とSA(昨年度英語科教育法IIIを履修した4年生)と一緒に授業の感想を喋ることにした。それをもとにnoteの振り返り記事を書いていく。

今回は履修者のMさんと,SAのKさんとの鼎談の録音を聞いて書いてみる。
書いていて思ったが,これは「振り返り」というか「延長戦」に近い。
学生がどういうことを考えていたかが気になって,自分の授業者としての
振り返りになっていなかった。難しい。

推論発問と評価発問を考えること

授業の延長戦として話したことの一つが,発問。

教科書の本文から発問を考えてもらうタスクで,Mさんは推論発問を作ることに苦労したとのこと。確かに推論発問は本文に書かれてはいないけど,書かれていることから推論できる(いくつかの可能性が導き出せる)必要があるので,そもそも教師側の英文の理解が深まっていないと成り立たない。
一方で「評価発問」の方は,「あなたがこの登場人物だったら…」としてしまえば,一応それっぽいものにはなるので,意外と作るのは難しくないように感じられる。

授業では「もしあなたが…」のパターンも,それが果たして考えてみたくなるような仮定かどうかが大事で,なんでも登場人物と自分を置き換えれば良いわけではないよ,というぐらいのところで終わってしまったので,もう少し評価発問について深められればよかった。

また,教科書の本文から作れそうなタスクについてもいくつかアイデアが出たが,それはまた次の授業準備回(模擬授業に向けて授業を設計する回)にとっておく。

英語科教育法IIIは座学が多い。

履修学生のMさんは「座学が多い」「教育法IとIIが自由すぎて,それに比べると楽しさの面ではちょっと落ちる」という率直なコメントをしてくれた。
一年間散々模擬授業,検討会,ディスカッションと「自由演技」で踊ってきたので,ここでいよいよ,というかようやく,専門知識に踏み込むよというのが今期なのだが,どうしても私の話す時間が長くなりすぎてしんどさはあったよう。
まぁ,ある程度は覚悟の上だし,多分昨年度の自由演技の積み重ねがない状態で同じ授業を受けていたら,恐らく内容の受け取り方の質も下がっていただろうと思う。
実際,昨年度の履修者であるSAのKさんは一番最初の文法指導の模擬授業をしてくれたが,「あれ,講義回で話した内容があんまり活かされてないぞ?」と僕が焦るぐらいの模擬授業だった。それだけ「講義を聞いて,やってみる」時の「聞く」と「やってみる」のギャップは大きいのだと痛感した。
あの模擬授業を見た経験が,「次の世代は英語科教育法IIIで理論(めいたこと)を教える前に沢山踊らせて,沢山失敗させて,どういう授業が良い授業なのか考え尽くしてもらおう」という覚悟に繋がったのだ。
(こんなところで去年の模擬授業に辛口コメントをして申し訳ないが,Kさん自身も今ならあんな授業はしないと秋頃に言葉にしていたので,まぁ許してくれるかな)

とは言え,次回は(模擬授業担当者以外も)一人一人が教科書の本文から授業の設計を考える時間。(実際にはその前段階の教材の理解が中心にはなるけど)
ということで,1週目とは打って変わって私が話す時間は多分ほとんどないと思っている。
ワーワー声を出すタイプのアクティブではないかもしれないが,頭の中はかなりアクティブになるだろうと思うので,ある意味「産みの苦しみ」みたいなことを感じそうな時間を学生がどう捉えるか,初めての試みで不安もないではないが,楽しみが大きい。

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