できる営業パーソンは、「競合他社」よりも「あれ」を気にしている

 営業において避けては通れないのが、「競合他社」とのコンペですね。私も「もし負けたらどうしよう」と夜も眠れない経験を何度もしてきました。ましてや、今まで何年間も自社とお取引をして頂いていた顧客でのコンペで、負けるようなことがあれば、、損失は膨大ですし、会社で何を言われるか分かりませんので、よりプレッシャーがかかります。
・競合とのスペックや提案内容が気になったり
・何社と競合しているかを顧客からヒアリングしたり
・競合他社のホームページとにらめっこしたり
・過去のコンペの実績を調べたり
・何度も提案書を作り直したり
 逆に「競合他社」という眼前の敵を倒すことこそ営業の醍醐味とする営業パーソンも多いです。どちらにしても営業でいる限り「競合他社」との関係は、永遠に続きます。
 ただ、できる営業パーソンは、「競合他社」よりも脅威に感じる対象がいます。タイトルの「あれ」のことです。それは何でしょうか。

顧客の「現状維持」が最も怖い
 結論、「あれ」とは「現状維持」です。「現状維持」とは、そのままにすること。営業の世界では、顧客が自社も競合も採用せずに、そのままの状態を選ぶことです。これがなぜ脅威なのでしょうか。
 それは、「競合他社」よりも「現状維持」の方がちゃんと確認しないと認識できず、そして営業自体の難易度が上がるからです。というもの競合とのコンペだと「勝ち」と「負け」がはっきりします。それは営業担当本人だけでなく、営業担当以外の人間にもはっきり認識されます。だから「競合他社」を比較対象とするのは簡単です。1年目の新人でも簡単に認識できます。
 しかし、「現状維持」は簡単に認識できません。営業の世界で、顧客の「現状維持」に負けたという言い方をする人はいません。「勝ち」か「負け」かではなく、顧客が「採用した」か「採用しなかった」かで語られます。だからあまり意識されません。そして顧客側も「採用しません」と言いづらいというのもあります。時間を割いて商談をしてもらったり、話を聞いてもらったのに「何もしない」というのは言いづらいものです。だから「検討します」とお茶を濁してしまう。そしてこれを普通の営業マンは「失注」と認識できません。

「現状維持」は最大の競合相手
 なぜできる営業パーソンは顧客の「現状維持」を脅威と感じるのでしょうか。それは、「現状維持」は「競合他社」よりも攻略が難しい相手だからです。
 この2つを比較すると答えが分かります。
 対「競合他社」 顧客の購入意思がすでに確定、もしくは高い
 対「現状維持」 顧客の購入意思がまだない、もしくは低い
 もし「自社が採用されない=負け」と考えます。その場合、どの状態が一番「負け」の確率が高いでしょうか。言うまでもなく、自社と競合を天秤にかけられるより、顧客が「現状維持」を選ぶ状態です。なぜなら、まだ買わない可能性が高いからです。裏を返すと競合とコンペ自体は、顧客の購買動機が高いもしくは、すでに何かしらを買うことが決まっていることを意味しています。顧客のニーズは、mustニーズということです。最終的にどこから買うかの段階です。
 よく「競合がいないので今回は楽勝です」という若手の営業報告を聴きます。しかし競合がいないというのは、そこまで顧客が本気ではない、もしくは買うことすら決まっていないという証拠でもあります。

「現状維持」の場合、営業を変える
 つまり「競合他社」がいない商談は、購買意欲が低い状態の商談です。そのため、やることも変わります。そもそも購買意欲を上げる、法人営業の場合は予算を採ってもらうことから始める必要があります。経験上、競合コンペよりも難易度が上がります。もちろん受注にいたる確率も低ければ、時間もかかります。だからできる営業パーソンは、「競合他社」は脅威ではなく、ただ比較して勝てばよいという感覚で挑みます。一方、「競合他社」がいない場合、「現状維持」=「買わない意思」と戦わないといけないため、営業パーソンによって大きな脅威となります。
 まとめます。
・現状維持  → 顧客の購入意欲を高める
・競合他社  → 単純にどちらがよいか比較する
 競合他社がいないから、比較しないでよいわかではないのです。それよりも見えない敵である「現状維持」につながる「顧客の購買意欲の低さ」を相手にしないといけないので、ちゃんと比較対象を確認しましょう。

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