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インナーマッスルの出力に影響する9つの身体機能

今回も引き続き、テーマ肩のインナーマッスル(腱板)です。

前回は肩のインナーマッスルの個々の筋肉における機能低下に至る要因について述べました。そして、今回はインナーマッスルの出力に影響する身体機能について整理していきたいと思います。

肩の治療においてインナーマッスルの強化は重要かと思います。ただ単純に強化していくだけでも筋の出力は向上していくかと思いますが、インナーとアウターがどのような出力バランスで発揮されているかを捉えられていなければ、真の治療には結びつかないかと思います。また、バランスが崩れた中で、ずっと肩を使い続ける事により、肩にストレスが蓄積して肩関節周囲炎になっていくかと思います。

今回はインナーマッスルの機能低下がどこから影響しているのか、身体機能との関係について述べたいと思います。

今回のテーマ

今回は出力に影響する身体機能について

1)土台の機能低下とインナーマッスルの出力の関係

2)肩実質の機能低下とインナーマッスルの出力の関係

3)他の関節によるインナーマッスルの出力への影響

以上の3つに分けて、解説していきたいと思います。

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1)土台の機能低下とインナーマッスルの出力の関係

<腹圧機能(胸骨下角)とインナーマッスルの関係>

静的な胸骨下角は70~90度と言われており、胸骨下角のアライメント不良は腹部の筋の長さ張力曲線の関係より、腹圧機能の低下を招き、体幹部分の土台が不安定な状態になってしまいます。そのため、土台の安定性を欠く事で、肩甲骨の安定性も失われ、インナーマッスルの出力は低下します。

胸骨下角の徒手誘導によってもインナーマッスルの出力は変化するため、静的な位置取りも重要となります。

さらに、その位置を保とうとする安静時の筋緊張により、動的に胸骨下角のコントロールが出来ていれば、腹斜筋―前鋸筋などの筋連結により肩甲骨の安定性が向上して、インナーマッスルが働きやすくなります。

また、胸骨下角が拡大して、肋骨が外旋傾向の場合、肩関節外旋時などの際に本来、主に働くべき肩関節の動く割合が低下し、肩甲骨の内転や肩甲骨の外旋の動作の比率が高まる傾向となり、前述した筋の機能低下に加え、肩関節の使用率が低下しやすい傾向となり、機能低下が加速すると考えています。

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(※動画は全般的に音声が小さいかと思います。ご了承ください。)

<肩甲骨の位置とインナーマッスルの関係>

肩甲骨の位置について、下がっているとか挙がっているとか評価される事があるかと思いますが、しっかり基準点に基づいて評価すべきかと思います。ただ右側が下がっているから右肩下がりではなく、基準点に位置していれば右が正常で、左肩が挙がっていると評価すべきです。基準点に対する肩甲骨のズレ幅がインナーマッスルの働きに大きく影響しており、しっかり捉えることが重要となります。

〜肩甲骨の高さとインナーマッスルについて〜

肩甲骨の上角は一般的に第一棘突起と第二棘突起の間に存在すると言われていますが、そこに位置しているかを評価する事が非常に重要です。今回、着目しているインナーマッスルもその位置に大きく影響を受けており、その位置に誘導して出力を確認すると出力が高くなることを確かめる事が出来るかと思います。

そのため、インナーマッスルの強化を行う時はしっかり肩甲骨の高さを整えた上でエクササイズを実施することが重要と考えております。その位置でエクササイズする事により、インナーマッスルの強化に加え、肩甲骨をその位置で保持するための肩甲骨保持筋の賦活にも繋がります。

肩甲骨の位置を修正すると最初は自分の今までの位置に対して違和感を感じる事があるかと思いますが、それは認知面の問題であり、運動を繰り返し行い、学習することによって修正されていくかと思います。ぜひ継続して取り組んでみてください。また、肩甲骨の位置を修正しても他者から見て、そんなに違和感を感じない場合は単純に肩甲骨の位置の修正だけでいいのですが、見た目的にも肩甲骨が凄く高い位置にあると感じるケースがあるかと思います。前者であれば、そのまま修正した位置で運動学習していけば改善されていくのですが、後者の場合は肩甲骨の位置の修正に加え、肋骨の後方回旋の拡大を図り、肩甲骨と肋骨、両方とも上方に修正していく必要があると考えております。

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https://youtu.be/LeIJQhbIBQQ

~肩甲骨の回旋位置とインナーマッスルについて~

肩甲骨の高さに加え、肩甲骨の回旋具合もインナーマッスルの機能に大きな影響を与えます。鎖骨と肩甲棘が成す角を棘鎖角と言いますが、それぞれ前額面に対して30度ずつ角度を成しており、合計60度で棘鎖角を成しています。インナーマッスルの機能はその棘鎖角の成す角度に影響を受けます。肩の1stポジションにおいて、棘鎖角が60度の場合、筋出力は高いかと思います。

チューブなどでインナーマッスルのエクササイズを実施する時に肩甲骨の回旋の位置を正して行う事が非常に重要となります。肩甲骨が前方突出傾向な方に対しては肩甲骨の位置を修正させた状態でエクササイズを指導する事があるかと思いますが、過剰に内転・外旋させている状態ではアウターとインナーマッスルの出力の不均衡が起きるため注意が必要です。程度の問題があるため、その時は肩甲棘が30度の角度の位置になる程度に留めておくようにすると良いかと思います。案外、寄せない方がいいんだな、、、と感じる事でしょう。

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https://youtu.be/jPzeGDf3txY

2)肩実質の機能低下とインナーマッスルの出力の関係

<骨頭の位置とインナーマッスルの関係>

基本的な事になりますが、関節窩に対して上腕骨頭がどの位置にいるのかによってインナーマッスルの出力は大きく異なります

元々、定位置でありながら、筋の伸張性の低下によりobligate translationするようなケースでは初期は出力は良いが最終域に近付くと出力が低下するのが特徴かと思います。一方、定位置の時点でその位置が不良な場合は中間位の時点で出力が低下しています。そのため、出力を評価する場合は中間位での出力と最終域近くでの出力と少なくとも、2つは見るべきかと思います。

定位置がずれているかどうかの確認は前方に偏位させての出力と後方に偏位させての出力をチェックしてみると評価しやすいかと思います。多くの症例の場合は前方に偏位しているため、動画のように肩甲棘を押さえて、骨頭を押し込んだ状態で出力をチェックすると向上することが確認出来るかと思います。また、その押し込み具合に関しても、どの程度まで押し込むとより良い出力になるのか確認する事で治療するべ移動の幅も確認出来るため、方向に加え、その移動量も意識して介入する事をお勧めします。

また、腱板断裂を呈しているような患者さんの場合は肩峰と骨頭の距離が低下している場合が多く、レントゲン上でAHIが低下している場合は骨頭の下方に牽引した位置に誘導する方が出力は向上しやすいかと思います。

 一方、肩が構造的に緩く、骨頭が下方偏位しているようなケースの場合は逆に上方に誘導した方が出力が向上しやすいなど状態によって異なるため、的確に捉えられるように日々意識して診るようにしてみてください。

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https://youtu.be/KIEZThr26C4

<筋・腱の滑走不全とインナーマッスルの関係>

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