作り手としての解像度を上げる(2)

デザインとは何か?

デザインといえば、たとえばグラフィックデザイン、プロダクトデザイン、ウェブデザイン、Ui/UXデザイン、コミュニティデザイン、コンセプトデザイン、アーキテクトデザインなどいわゆるサービスや製品をデザインするものもあれば、組織デザインやデザイン思考など経営や組織もデザインを使うことがあります。デザインにも見える形のものもあれば、見えない形のものもあるという訳です。
ではそもそも「デザイン」とは何か?
Designという言葉の語源はラテン語の「Designare」で、「骨組みを作る」とか「工夫する」といった意味であいで使われていたようです。翻訳をすると「計画を記号に表す」、図面に書き表すという意味であったといわれています。そこから「dessin」(目的や計画)と 「dessein」(絵)、つまりデザインとデッサンという意味に分かれたようです。現代の多くの辞書を見ると「デザイン」とは大きくは「設計」や「つくること」、「計画すること」という意味に集約出来るようです。
https://monstar-lab.com/dx/about/design-thinking/

「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」この一連のプロセス( 日本デザイン振興会)

デザインとは人を中心に考えること

デザインは手近な道具を自分が使いやすいように作るように、人類が発展する中で、自然に行ってきていることかもしれません。Wikipediaによると「デザインはヒトを中心に考える。すなわち人間にとっての快不快、それを生み出す心身や環境について熟慮しモノゴトを生み出す。これは人の体験すなわちユーザーエクスペリエンスを突き詰め工学的に利用する人間工学と共通している。」とありました。「デザイン」とは「作る」という行為をより人間を中心に考える行為だということです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/デザイン
人間を中心に考えるという点については、人間の脳の仕組みや体の構造、身体能力に依存した平均的なものもあれば、個々の嗜好や身体性、習慣から生まれるものもあると思います。
例えば
あらゆる商品の選択肢がある中でなぜそれを選んで部屋に飾るのか?
写真を選んで、どんなフィルターを使ってSNSで共有するのか?
どんな音楽を選んで気持ちを色付けるか?
人はあらゆる場面で選択していて、意識せずに自分の生活を「デザイン」していると言えます。

デザインが生み出す境界

デザインとは誰かを対象にして「課題を解決すること」といわれます。
目的を達成するために、要素を構造化し、意図的に配置し、情報を整理して要点が伝わるように「設計」し、「作り」ます。デザインには意図があります。何をどこまで伝えるのか、伝わった時にどうなるのか、どこまで影響を与えたいのか、目的を達成するためにターゲットに必要な”Sign”(しるし)を”Dessin”(絵にする)することにより誘導します。
もっと踏み込むと「対象となる人」と「対象にならない人」を分けること、「内側」と「外側」を分ける行為、モノやコトの関係性の「概念」や「境界線」を作ることが「デザイン」だとも言えます。

境界が生み出すもの

例えば言葉一つで境界をつくりだすことができます。だからコンセプトを作ることやコピーを作ることは「デザイン」であると言えます。人の共感ポイントを探り、認知してもらうことにより、人の嗜好や考えにバイアスを作って、感情を動かしたり、行動へつなげるものだからです。
言葉とは異なる境界を作るものとして、アートや音楽、ダンスなどがあります。宗教などはこれらを取り込むことにより、誰もが関わる余地を創り出して、その土地や国の文化として定着することができたと思います。
ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」では、現実には存在しない虚構(フィクション)を信じたり、語ることのできる能力が、弱い人間が生き残れた決定的な要因だとしています。つまり国や宗教、お金、科学など「虚構の力」を信じれる能力が人間を他の生物と比べてユニークな存在にしているというのです。
想像上の見えない、抽象的な概念や価値観を多くの人と共有する能力は、人間の知覚、思考、記憶、言語、意思決定、および学習などの様々な認知科学においてバイアスを作ります。文化や伝統、常識、社会、地域という境界線により認知はフレーミング(切り取って)されており、デザインというのはそれを意図して虚構のような境界線を再定義したり、再創造したりしていると言えます。

デザインとは本質的には「どう機能するか」

デザインを本質的に捉えていると思うのはSteve Jobsの考え方です。

見た目のことだと考えている人もいるが、もっと深く掘り下げてみると実は機能のことなんだ。Macのデザインとは「どう見えるか」ではない。 部分的にはそうとも言えるが、本質的には「どう機能するか」ってことなんだよ。本当に素晴らしいデザインをつくるにはこれがわかっていないとだめだ。心底から理解しなければならない。何かを徹底的に理解し、かみ砕くには情熱を傾ける必要がある。すぐ鵜呑みにするのとはわけが違うんだ。ほとんどの人がこういうことに時間をかけていない。(Steave Jobs)

Steave Jobsは、ただ素晴らしいデザインが形としてあるのではなく、あらゆる要素を考え抜いた先に「美しさ」や「素晴らしい」デザインがあるということではないか?と言っています。ただかっこいいデザインというのは時間の流れとともに古くなります。しかし、本質的な美しさは、時代が変わっても人に伝わるものだと思います。現代にも多くの音楽や美術などの作品が残るのは、人間の美しさに対する本質を追求しているからだと感じます。人の本質やコアの部分が共鳴するからこそ「美しい」と感じたり、価値を感じるのだと思います。

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