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勝ちマッスル

小学校2年生の頃から阪神ファンをやっているものだから、今年ももちろんタイガース贔屓でやらせてもらっている。「去年は高橋手帳だったけど今年はほぼ日手帳で行こう」みたいなノリで「2024年は広島カープでやらせてもらおう」とはならない。案内なしの自動更新である。

基本的に僕は箱推しだ。生え抜き、移籍組、外国人問わず、タイガースのユニフォームを着ている(着たことがある)人間は応援する。
誰か1人選べ!と、過激派タイガースファンからナイフを突きつけられたら、僕は石井大智をピックアップする。
先日までやっていた就職活動では、もちろん面接中に趣味の話題が挙がる。僕は阪神タイガースが好きです、と答える。
「どの選手が好きなの?」
「石井大智です」
「しぶっ!」
当時の面接官も阪神ファンだったということもあり、こいつは信頼のおけるやつだとなったのだろう。そういうふうにして決まったのが今の会社である。

彼のストレートは一級品だ。上背こそないが、低いところから伸びるあの球のキレは藤川球児を彷彿とさせる。
高専卒としては初めてのプロ野球選手として入団当時は話題になったが、今や阪神の中継ぎ投手としては欠かせない存在だ。

ただ困ったことに人気がない。本当にない。結婚しているから女性ファンが離れていったとかではなく、男性ファンもいない。石井大智が好きと公言している人を見たことがない。こんなにも実力と人気が不釣り合いな選手、他に知らない。

中途半端な、あまり熱心ではない阪神ファンに至ってはそもそも石井大智を知らない。大ピンチを抑えてチームを窮地から救ったとしても、試合後には誰もそのことを覚えていない。

あまりにも不憫だ。石井大智の凄さ、ストレートの美しさをもっと多くの人に知ってほしい。しかし僕にできることはこうしてnoteの記事にすることだけだ。

先日、6月21日の試合で石井大智は勝利投手となり、プロ2度目のヒーローインタビューに呼ばれた。おいおい、ちゃんと話せるのかイシダイくんよ。親が子を見守るような気持ちで見ていた。よしよし、普通に話せている。偉いぞ大智。
ヒーローインタビューは締めの段階に入り、マイクを渡されたのはサヨナラ打を放った小幡ではなく、我らが石井。え、そっちなの!?と驚いたのも束の間、太い声で何やら始めそうな石井大智。

「僕はトレーニングが大好きで、チーム1のマッチョだと思っているんですけど」

え、なになに。どうした。

「僕が『勝ち』って言ったら『勝ちマッスル』って言ってもらっていいですか?」

言うよ!当たり前やんか!

「じゃあお願いします。明日も、勝ち?」

「マッスル!」

沸く甲子園。すごいじゃないか石井大智。これでもう人気選手の仲間入りだな。オールスターにも選ばれるんじゃないか。ここまでしてなおも人気が出ないならそれはもうそういう人生だったということだ。僕が一生応援してやる。

サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。