体毛、濃し
二夜連続で子どもの頃を回願することになるが、中学生の頃は自分の濃いすね毛がコンプレックスであった。中学入学時には身長が止まり、背丈はどんどん抜かされていくのに毛は日に日に濃くなっていくので、毛というよりも容姿自体にコンプレックスを抱えていたのだと思う。何なら小学校6年生くらいから乳輪にもしっかり目の毛が生えてきていたので、プールの授業前日はちゃんと抜いてから臨んでいた。乳輪の毛は当然今もしっかりしたものが生えていて、時々Tシャツの線維を突き破ってしまい、Tシャツから毛が生えているように見えるときがある。
当時からテレビによく出ていたクロちゃんの胸毛とか背毛を見て、僕も近い将来こうなるのだと思っていた。しかし胸と背中には結局生えなかった。これから生えてくるのかもしれないけど。
少しでも毛の範囲を隠せるように靴下は長めに履くのがマストだ。見た目はかなり不恰好だが、毛を覆い隠せるのならなんてことはない。脱色クリームを試したこともあったが、剛毛の白人が完成しただけで意味をなさなかった。そして何より生え替わりのターンも速いのですぐに黒に戻ってしまった。
だから秋から冬にかけてのこの時期は脚を露出させる必要がなく「合法的に」長ズボンが履けるので僕にとっては安定期であった。冬は夏に比べて何事にも強気だった気がするし、冬の方が体育の成績は良かったはずだ(プールが苦手だったというのが一番だけど、そもそもプールができなかったのは自分の恥ずかしい身体を曝け出すことで弱気になっていたからかもしれない)。
今は、機会があれば脱毛したいなくらいに思っていて、さすがに悩むことはない。が、先日妻が僕のすね毛を神妙に見つめ「将来息子がこうなったら嫌だな」とこぼした。僕もそう思う。悩む時間は決して無駄ではないと思うが、当時クヨクヨ悩んだり、ネットで調べたりした時間は、他にもっと有益なことに使えたんじゃないかと思うことがある。
当の息子はというと、一緒に湯船に浸かるとなぜかぷかぷか揺れる僕のすね毛を食い入るように見つめてくる。おもちゃ的な何かと思っているのか、それとも敵だと思っているのか。分からないが、抱っこした状態で湯船に浸かるやいなや、くるっと反転し僕のすね毛を見つめる。未来の自分を危惧しているのだろうか。大丈夫、君の脚にびっしり生え揃える頃には日本の美容は進化して、脱色クリーム的な何かが助けてくれる。