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向いてる仕事の見つけ方

世の中にはいろんな仕事がある。多い。マジでかなりある、数が。

世にあるすべての仕事に共通する事実があるとしたら「ガマン」だろう。どんな憧れの職業だって、高給だって、ガマンや大変さを兼ね備えているのだ。

これはもう薬と同じだ。効き目ベネフィットがあれば副作用リスクがある。光があれば影があるし、表があれば裏がある。

個人によって感じ方はそれぞれだが、仕事というやつは気持ちいい瞬間とキツイ部分で構成されているし、どちらもゼロにはならない。その二つを額に入れてウンウンと眺め、労働の対価を得る。

僕の歴史もウンウンだった。

これまで「こりゃあラクだ!」というようなバイトもあるにはあったが、あの「ラクすぎる」という退屈は副作用リスクそのものだった。2010年ごろ、22時から朝10時まで渋谷のオフィスでまだ流行り始める前のワンパンマンを読み続けるだけの仕事だった。

ワンパンマンは面白かったが、12時間はつらい。飽きたら寝てていいのだが、そんなに眠れるものでもなかった。耐え難いヒマさと「このまま俺はどうなるのか……一生ワンパンマンを読み続けるのだろうか」という不安に耐えきれずあっさり辞めてしまった。

「世の中にはラクな仕事なんてない!」という言葉がある。もはや伝説の域に達している。しかし親や先生の言っていたあの言葉は真理だったのだ。

「ロックバンドで稼ぐ」なんて馬鹿げた仕事すらラクなものでもない。

「気分の乗らない日に歌を歌う」という奇行をあなたの身に置き換えてみてほしい。地獄中の地獄だ。

いくら音楽が好きでも、曲を書いたり歌うことで生計を立てたいと願っていたとしても現実には毎日歌いたいことなどない。ライブならまだしもリハーサルやプリプロ、ゲネなんかが苦しい。

メンバーとの関係値も毎日良いわけでもない。これは「仲良し」や「仲悪い」とかではなく、日々一緒にいたら「なんか今日あんまし仲良くない」という日はクラスメイトやチームメイト、家族でもあるだろう。アレだ。それでもイントロが始めれば歌わないといけない。

目指した仕事に触れたことで僕も「ラクな仕事はない」という伝説を信じるようになった。

あの日あのとき、AV男優になりたがっていた同級生は「仕事」を舐めていたのだ。たぶんAV男優にはAV男優の苦しいことがあるはずだ。昨日しみけんさんを見たがあれほどの人物でも大変なことがあるのだろう。

きっとロスチャイルドやロックフェラーなどの「華麗なる一族」という「仕事」もラクだけではない。もちろん大リーガーやアイドルだって大変なことがある。

みんなの憧れのような仕事から、僕がやっていたピンクチラシを一人暮らし用マンションに投函する仕事まで共通なのだ。

「仕事の向き不向き」という言葉がある。

これはもう能力や才能なんかではない。むしろそんなもの誤差だ。優秀なひとも普通のひともザラっとならせば大きくは変わらないものだ。

能力値よりも『その仕事特有の大変なこと』に耐性があるかだ。

キツさに麻痺できるかどうかで、僕たちの今日やあしたは変わってくる。「パワハラに耐えろ!」とか「労基違反に耐えろ!」とか「心身ブッ壊してでも稼げ!」とかいう話でもない。「まぁいろいろあるけど耐えられる。ていうかそこまでつらくない」というひとがその仕事に向いているのだ。

「他人の暴露をして稼ぐことに心が痛みました」というひとは暴露系ユーチューバーにはなれないし、「暴け!それがお前の仕事だ!」と言えばパワハラになる。

「打者も投手もやるなんて無理っす。一人二役とかめちゃくちゃじゃないっすか」という考え方なら大谷翔平にはなれない。「やれや!ひと足りんねん!」と怒鳴ればこれもパワハラだ。

でも彼らはそれを苦しいとは思っていないし、「耐えなきゃいけないこと」とも受け止めていないだろう。麻痺しているのだ。麻痺しているからこそ、そこにいる。綺麗事を言わなければ「仕事のダメージに関して不感になる能力」というのは武器になるのだ。

そう思うと人生を救ってくれたあの歌も本も映画もきっと麻酔だったのだ。

今日はまたロックバンドのボーカルが面接にやってくる。面接というか価値観が合うかどうかの話ではあるのだが。

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