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生き急ぐ男たち

「何をそんなにあせっているのか、何をそんなに生き急いでいるのか?」

そう言われることが多かった。バンドを組み立ての頃は本当によく言われていた。
実際、僕は生き急ぎまくっていた。急ぐという言葉では足りないほど、大至急生きていた。それこそ「あと一年で死ぬ」と思って音楽をやっていた。精神論とかではなく、そう信じていた。

年齢が二十二、三ぐらいになって自分が天才じゃないと、気付き始めたからだ。そんな自分が怪物だらけの音楽業界に、五年も六年も居られるはずがないと覚悟していた。そしてその先の人生は想像もできなかった。まさしく死後の世界だった。

ただこの「おしまいを意識する」というのは悪いことだけでもないらしい。人生の道が延々と伸び続けていると思うと、すべてのことに鈍重になる。「やりたいときにやる」だけではグズな自分は微動だにできなかった。

ちなみに「いつまでも続けたい」などというスタンスで音楽と向き合ってきたわけではない。どちらかと言うと、僕はかなりの刹那主義者であり、継続至上主義要素を微量足りとも持ち合わせていない。

三年前はバンドも二度とやることはないと思っていた。ひょんなことから今もまだやれている。だけどこれは「いつまでやれるか分からない」の集積によってもたらされている環境な気がする。

もちろん今も「いつまでやれるか分からない」の中にいる。

とりあえず、あしたは神戸でライブができる。あさっては大阪でライブができる。でも半年先、一年先の確約は無い。続けるのが目標ではないけれど、続いていることに感謝するぐらいのデリカシーはある。

表参道でこれを書いている。この町はオシャレすぎて、余裕がありすぎて、余裕のない心情をカウンターで書いてしまった。



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