真の愛情 No.2536
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先生が熊本県の県境の分校に勤めていた頃、運動場で馬乗りになって相手を殴ろうといていた少年がいました。
徳永先生が慌てて止めに入り、引き離したその少年は、皆から“炭焼きの子”と揶揄された柴藤(しばとう)清次君でした。
柴藤君の家は貧しく、家計を支えるために隣の宮崎県まで木炭を馬に積んで運搬しているため、ろくに学校に来ることが出来ませんでした。
そのため成績が悪く、皆から馬鹿にされ、仲間はずれにされていたので、日頃の鬱屈が爆発して喧嘩に至ったのです。
徳永先生は泣きじゃくる柴藤君をなだめて言いました。
「おい、清次君。今度宿直室に来い。親代わりに俺が抱いて寝よう」
それまで担任からも無視され続けてきた柴藤君は、徳永先生が自分を「君」をつけて一人前の人間として扱い、慈愛の心で包み込んでくれたことに驚きました。
それ以来、柴藤君はすっかり明るくなって成績もあがり、皆に溶け込めるようになりました。
神渡 良平(作家)
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致知2021年5月号からのご紹介です。
昨日ご紹介した徳永先生の具体的な生徒との関わりのお話です。
その後、柴藤君は戦争に召集され、終戦後はシベリア抑留の憂き目に遭います。
しかし、絶望していた戦友たちを懸命に励まし、世話に走り回り、無事に生き延びました。
復員後、就職して仕事と家庭を築きます。
さらには警察からも見放された不良少年たちを自宅に引き取って面倒を見るまでになったそうです。
これも徳永先生が柴藤君に掛けてくれた愛情が、次の世代に引き継がれていった「積善余慶」のようなお話ですね。
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