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【92】運命の時…

色々と限界が近づいてきていた当時の僕…

そんな僕はA子さんに対し、常にキツくあたってしまったり邪険に扱ったり…

気付けばA子さんがやる事なす事全てに対しNOと否定しまっている自分がいました。


そんな状況に、僕はA子さんの後ろ姿を見てはこの人は一体僕に何を伝えにきたのだろう…

何故こんなにも僕を苦しませるのだろうか…

とても感謝しているのに…と日々思っていました!


そんなある日のことでした。

急に空から降ってきたというか…

ふと、ある重大なことに気付いてしまったのです。

『な、なんだって……まさか…そんな…』

僕はそのことに気付いた時、あまりにもの衝撃に言葉を失ってしまいました。

そして、思わずその場に崩れ落ちてしまったのです。


そう…実はこの時僕が気付いてしまったこと…


それは…


僕がA子さんにとってしまっていた態度が、昔母親が僕にとっていた態度と同じだったのです…

『な、なんだって…』

『まさか、自分が大嫌いだった母親と同じことをしていたなんて…』

あまりのことに呆然としてまう僕…

と、その時でした!ふとある記憶が甦ってきたのです。

そう言えば…

遠い遠い昔、僕がまだ4、5歳の頃…あの頃の僕は母親に嫌われ、そして告げ口によって毎日父親に殴られていました。

そんな日々が当たり前だった中、1度だけ母親が心を入れ替えたというか…僕を別の部屋に連れていき抱っこしてくれたことを思い出したのです。

『これから毎日こうして抱っこしてあげる!』

まさかの母親からの言葉でした!

小さいながらに初めて感じた母親の温もり…僕は戸惑いながらも嬉しかったのを覚えています!


これは恐らくですが…

当時、母親は僕への態度や接し方を何とか改善出来ないかと悩んでいたのではないでしょうか?

僕に対し酷いことをしてしまっている自分…

それを何とか直せないものかと…

僕を抱っこしてくれたのはそんな母親の気持ちの表れだったのだと思います。


しかし…実際にその抱っこは3日程で終わってしまいました。

そしてまた元の母親に戻ってしまったのです。


そう…それは僕がA子さんと何とか上手くやっていきたい!一緒に楽しく仕事をしたい!

けれど、どんなに頑張っても出来ない自分…そして邪険に扱い全てをNOと言ってしまう自分と重なったのです。


僕は沢山悩んだし、何度も何度も試みました。

当時、自分なりに出来ることは全てやってきました…

それでも変えられない自分にずっとずっと苦しみ続けました…

そして…

『そうか…もしかしたらお母さんも苦しかったのかな…』

僕を可愛がって育ててあげたい!

兄や弟を育てるように僕も育ててあげたい…

でも出来ない自分がそこにはいたのではないでしょうか?


さらに僕が家を出て数年後、母親が僕に泣きながら謝ってきたことを考えると常に罪悪感を感じていたのではないでしょうか?

そして…

『そっか…お母さんも苦しかったんだね…』

まさに僕がこのように理解出来た瞬間でした!

僕の母親に対する全ての恨みや憎しみが完全に消えたのです。

この時実に37歳のことでした!


それから2ヶ月後…

A子さんが僕の前からそっと姿を消したのです。


“退職”


それはまるで、『私の役目はもう終わり。伝えたいことは伝えたからね!お母さんのこと許してあげてね!』と言わんばかりに…

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