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(翻訳)コワーキングスペースが契機となり、小売店の変革が起きているという話

前書き
今年のSXSWでWeWorkの共同創業者兼CCO Miguel McKelveyのスピーチを聞く機会があったのですが、彼は「家族」と「同僚」と「友人」と「恋人」を区別せず皆が同じ空間で過ごし、ストレスなく仕事と生活を送るのが理想、だからWeWorkで働く人が家族のように、時には友人になるような関係になることを目指している、と言っていました。
その時は「壮大な計画やな~。どのくらいの人が共感するんだろうか。」と思ってましたが、このトレンドは確かに存在しており、仕事環境が生活に近づくことで、公私の差が無くなる社会は近くまで来ているようです。

このような話を聞くにつれ、若手時代に同期や年齢の近い社員で、休日にキャンプや旅行に出掛けた頃を思い出します。同じ志を持つ、環境の近いメンバーで思いっきり遊びつつ、時には真剣に未来の話をしたあの時間はとても貴重で、当時も「このメンバーで一緒に働けたら最高やな!」という話をしていました。技術と環境が変化すれば、「最高のパフォーマンスを出せるよう、公私ともに分かり合える最高のメンバーとコラボして働くべし!」というのがサラリーマンのスタンダードになるのでしょうか。それは素敵なことかもしれません。

今回の翻訳記事は、そんな未来の少し前の話。店舗とオフィス空間の新たな関係について論じています。コワーキングスペースの増加と、小売店の役割の変化。この2つの意外なつながりについて、紹介しています。

翻訳元:One Big Potential Beneficiary Of The Coworking Space Trend: Brick-And-Mortar Retailers

最近のトイザらスの全米店舗閉鎖を発端とした、小売店舗の閉鎖と苦境に関する一連の報道は連日、ニュースの見出しを支配し続けています。業績不振に嘆く小売店の閉鎖はまだまだ続くと思われますが、対面販売出来るリアルな店舗は今もなお多くの魅力を残しており、まだまだ見直される余地を持っているのではないでしょうか。住宅業界が何とかして住宅を売りたいと思っているミレニアル世代が、自らこぞってコワーキングスペースに入居したがっている様子を見ていると、そのように思えてなりません。

商業不動産リサーチ&サービスのJLL社が先日発表した調査で、ショッピングモールや商業施設にテナントとして入居するコワーキングスペースは2023年まで年間25%ずつ増加し、約340万平方フィート(※約36万平方メートル)に達すると予測しています。これがどれくらい重要な数字かというのは、2010年から2017年における小売店舗面積の年間成長率はわずか0.9%であったということからも分かります。

同社は今回初めて全米の75か所・合計100万平方フィートにも及ぶ大規模調査を実施した上で、「コワーキングスペースは、ショッピングモールの空きスペースを埋め、昼間の往来を保証しながら利用者数を増やすことが出来、空き店舗問題を解決するソリューションとなっています。増加した往来は、施設の活性化と新しいテナントの誘致にも役立ちます。」と述べました。

(出典:Spaciousより カフェ・モール・路面店など、あらゆる場所にコワーキングスペースは入り込みつつある)

何故このようなことが起こっているのでしょう。UberやAirbnbなど、ミレニアル世代を中心に成長を続けるシェアリングエコノミーをベースに考えると、コワーキングスペースの継続的な成長は相応であると思います。JLL社は、2030年までに米国の会社員の約43%がリモートで、少なくとも一部の業務を行うようになるため、それに伴いオフィス資産の30%ほどが「Flexible space」になるとも予測しています。

2010年以降、Flexible spaceは毎年平均23%増加し、全米オフィス資産市場の年間平均占有率の1%を超えました。それらのコワーキングスペースの半径3マイル以内にある世帯年収は約10万ドルにのぼり、また8割のコワーキングスペースはアクセスも非常に良く、車を所有したがらないミレニアル世代のニーズをうまくくみ取れています。

ミレニアル世代が徐々に家族を持ち、都市の外で家を購入すると、小売店舗を兼ねたコワーキングスペースが郊外に増えるでしょう、事実、コワーキングスペースの55%がすでに郊外にあるとJLL社は述べています。

同記事より転載、最も多いコワーキングスペースの入居場所はショッピングモールの中!

今回の調査を通して、小売業とコワーキングスペースの関係は相互に有益であることが分かりました。コワーキングスペースのホストは、小売店舗をメンバーのための特典として活用する事例が増えています。また、小売のスタートアップやオンラインブランドが、ユーザーである入居者に簡単にアクセスすることが出来るため、従来のような長期的な賃貸契約に煩わされることなく、プロトタイプの実証実験をテストできるようになるため「リテールインキュベーター」としての役割も果たしていると言えます。

「小売店を取り込んだコワーキングスペースは、仕事と遊びをうまく統合出来ていると言え、メーカー・オフィス従業員・ユーザーの全てを上手く集結出来ています。小売店舗に新しい可能性と体験をもたらしました。 これらのハイブリッドスペースが更に成長することを期待しています。

今回の調査を裏付けする例が沢山あります。たとえばシカゴのWater Tower Placeという大手ショッピングモールは、スタートアップのCowork社と協力して、閉店した大型スポーツ用品店がかつて入居していた15,000平方フィートもの場所にコワーキングスペースを開設しています。

Cowork at the mallの紹介。1400㎡もの巨大なコワーキングスペース内で、次々と新しいイベントを打ち上げているようです。

当社は小売スペースの一部として、スタートアップが商品を売ることが出来るポップアップショップやディスプレイを提供しています。」その取組が毎年何百万人もの買い物客を動員しており、Coworkは自社のLinkedInページにて、 「イベントスペースでは、『生産者に会おう』といった趣旨のイベントから、商品ローンチのためのランウェイイベントまで、何でも提供しています。」と発信しています。

もう1つの例では、ショッピングモールを経営するMacerich社は先日、Hyatt、Pandora、Pinterestなどの有名な顧客のコワーキングスペースをデザインしている、コワーキングスペース管理会社のIndustrious社とパートナーシップ提携したと発表しました。コワーキングスペースの最初のお披露目は2019年1月で、アリゾナ州にある「Scottsdale Fashion Square」というモールの中にオープンする見込みです。

Scottsdale Fashion Squareの様子。ショッピングモールの中にありながら、WeWorkさながらの美しいオフィス空間になるそうです。

終業後、コワーキングペースから帰ろうとする人の体験を想像してみると、きっと彼らはオンラインのモール掲示板にある店舗リストに基づいて、SephoraからBurberryまでモールの様々なお店を見て回ったり、シェイクシャックでハンバーガーを食べたりといったことが出来るようになるでしょう。

コワーキングスペースの代表選手であるWeWorkは6月、ニューヨークのダウンタウンに、メンバーが作ったスナック、ヨーグルト、アパレルなどを販売する小売コンセプト、WeMRKTをオープンしました。 WeWorkは今後、全国にWeMRKTを拡大すると語っています。

現在はSOHOにあるWeWorkにてコワーキングスペース内店舗、WeMRKTをオープン。入居店舗も募集しているそうです。

WeWorkはまた、J. CrewとLinkedInとパートナーシップを結び、J. Crewが行うサンプルセールにてWeWorkメンバーが割引を受けとれるようになります。また、NYに旗艦店をもつLord&Taylorは年内の閉店を予定しており、来年早くにもWeWorkが空いた建物に入居することになっています。

「オフィス空間のデジタル化」によって、インクカートリッジやプリンタの需要が減速したことに危機感を感じていた伝統的な大型小売店のStaples社は、本社のあるマサチューセッツ州の店舗でWorkbar型のコワーキングスペースを開設しました。

対面販売型の店舗はまだまだ息絶えてはいません。現在のスタイルからその役割を広げ、買い物も仕事も、それ以外のあらゆることも同時に出来るような場所に変貌を遂げようとしているに過ぎないのです。

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このオフィス→買い物→住処といった役割の拡大は、いたるところで増えているように感じるし、その尖峰としてWeWorkがWeMRKTやWeLIVEといったコンセプトを拡大していることがニュースとしても大きく注目されているように思います。あらゆる人がプロジェクトベースで働き、組織を超えてコラボレーションしていく社会になれば、コワーキングスペースが増えるのも当然と言えるし、何よりお互いに尊敬し、協力し合える人と共に働きたいと思うようになるのは当然といえるかもしれません。

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