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【物語る映画ポスター】アメリカン・ビューティー


平凡なアメリカのとある家庭が
崩壊する様を鮮やかに描いた傑作です。

「アメリカン・ビューティー」とは
バラの品種のひとつ。

本作では、この赤いバラが
とてもうまく象徴的に使われています。

ケビン・スペイシーが演じる
42歳の中年男性が高校生の
娘の友人に恋をしてしまう。

↑このポスターは、
彼の脳内映像として
作中で見事に美しく描かれるシーンの一部。

おっさんにとっての「バラ」は
官能の象徴です。

まさにこんな具合に、
目がバラで花畑になってしまうほど。

退屈な日常の繰り返し、
家庭では嫌われ肩身がせまい、
年下の上司に嫌味を言われるお父さん。

恋のバラが咲いてから
人生が再び花ひらくのです。

叶わない恋の理由は、
年齢の差だけでしょうか?
抜群の表情で私たちを引き込みます。

いい表情だったのでもう一枚。

右下にある小さな白いものは、

白いビニール袋。

この拙いゴミの一部が
ある人物に、ある決心を抱かせます。

そのビニール袋すらも
彼にとってはバラになる。

背景は黒いゴミ袋で
よく見ると、さらにその後ろには
テレビ台とビデオの映る画面。
印象に残っている部屋の一部です。
事件もここで起きる。

意味がうまく集約されてる
素晴らしいデザイン。

ビニール袋と連動して
キーになるアイテムです。

こいつのせいで、
あらゆる崩壊が起こっていく。

でも、彼の夢の一部にもなる。

夫婦の仲を引き破って現れたのは、
目隠しした微笑の女性でした。

「アメリカン・ビューティー」というタイトルは
すごく皮肉が効いています。

というのは、美しさを確認できるのは、
ここまで示したほんの一部であって

あとは、アメリカの中流家庭が抱える
問題、闇、病、みたいなものを
痛烈に炙り出しているのです。

ビューティーとか言ってる場合じゃない。

そのあたりの皮肉を
うまく表しています。

本作では、↑のポスターの通り
赤、青、白、の色が意識的に使われてます。

「僕だってまだ”血”が通っている」というセリフ。
大事な場面で来ている青のスーツ。
卵の殻、ソファーの模様・・・

そんなメタファーを
巧みに織り交ぜながら
ユーモアも上手に挟みつつ
アメリカ社会そのものの批判にまで及ぶ。

エロあり、笑いあり、感動あり、
風刺あり、痛さあり、
カラフルで重複的な楽しみを味わえます。

まったく退屈するところがなく
個人的に大好きな映画の一つです。


ご覧頂きありがとうございました、

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