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#HALFTIMEアカデミー フローニンゲンのスポンサーシップ

皆さまこんにちは。琢磨です。
タイトル講義に参加し、その備忘録と考えをまとめます。

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講演者は、オランダ「FCフローニンゲン」パートナーシップマネージャーのバスティアン・フェルマンさん。なんと27歳の若さ!(凄い!と思う反面悔しい…w)今回は、フローニンゲンのスポンサーシップについて。

※目次をチェックいただき、気になるところだけでもチェックください。特に後半の方はスポンサーシップに関して内容モリモリです。


経営における4つの柱

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リーグ最年少の経営陣。社長は36歳の若さ。(全員若くてご立派…)
以下4つの柱で5年間の中期計画を立てております。
・フットボール:ヨーロッパレベルでどう強くなっていくか。
・イベント:開催試合でのカスタマーエクスペリエンスを強化(試合がある90分だけでなく、試合のある1日をデザイン)
・エコノミック:北オランダの経済基盤を大きくしていきたい。クラブをハブにブランド同士のビジネスを繋ぐ橋渡しになれる存在。
・コミュニティ:北オランダ肥満問題→社会問題をサッカーで解決できないか。



スポンサーシップの進化

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従来のスポンサーシップはスタジアムやユニフォームにブランドロゴを掲載するモデル。過去はブランドの露出効果の測定があまりできておらず、また、スポンサーからも疑問が出ててこなかった。
「Payt」はベンチャー企業で短期的な成長を目指すために、胸スポンサー契約。結果的にブランド名が国際的に市民権を得て、国際的にビジネスを発展するまでに成長した。国際的な露出力=スポンサーシップの価値という考え方が従来のモデル。

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スポンサーシップの新しい考え方として、試合の90分間以外の時間もフローニンゲンとブランドやファンが繋がっているということ。
試合ないオフの時でもクラブの会話が行われている。90分のその先に何を提供し付加価値を醸成していくかが重要。
色々な広告手法があるが、サッカーはヴィークル(ブランドとファンを結ぶ)と考えている。実行したことをしっかり測定する。何人が見たのか、プリファレンス(好意度)は上がったのか、など様々なツールを駆使して効果検証を行う。

露出(スタジアム看板やユニフォームへのロゴ入れ等の)だけでないスポンサーシップという形は日本でもコロナにより急速に加速。新シーズン以降も様々な形で展開されることが予想されます。特にSNSを交えた情報配信であれば数字が可視化されるため、露出効果を正確にフィードバックすることも可能です。ずいぶん減ってきたとは思いますが、効果検証やKPI設定がなされていないスポンサーシップがあるのも事実なので、従来のマインドを変えていく必要があると考えます。


スポンサーシップのキービジネスファクター
(成功要素)

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スポンサーシップの効果を可視化しないと契約には至らない。ブランドがフローニンゲンに求めるものを定義し、合意する必要がある。
フローニンゲンではスポンサーメニューは存在しない。なぜなら、メニューを出すことでパートナーの目的が達成できるとは限らないから。(※MLSでもメニューは存在しない。)
長期的なパートナーシップを結んだ後、途中で目的の方向性が変わることがよくある。その都度「パートナーが今何を求めているか」を特定し、方向性を修正していく動きが求められる。(必要に応じて契約内容を見直すことも)
皆が、アメリカ式のやりかたを懐疑的に思ったが、この手法を取り入れることで、パートナーも「この進め方が必要だったんだ」と気づいてくれた。

Jリーグのクラブでもスポンサーメニュー開示しているクラブとそうでないクラブが存在します。メニューがあればセールス部隊の負担は幾分か減るでしょう。しかし、メニュー内容が必ずしもスポンサー企業の目的にマッチするとは限りません。

フローニンゲンはブランドがフローニンゲンを活用して何を成し遂げたいか、目的の定義づけに入念なヒアリングを行います。そのヒアリングを通してスポンサーシップをカスタマイズし提案する。様々な企画(how)の提案ではなく、なぜ、何のためにフローニンゲンと契約するのか。この視点がスポンサーシップ成功要因を左右する重要な要素と考えます。


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電力会社を例にアクティベーションをひとつご紹介。ブランドの目的は「他の企業と繋がり、ビジネスを広げる」こと。そこで、ただコーヒーを飲むのではビジネス寄りになってしまうこともあるので、バブルサッカーを通してブランド同士を繋げるビジネス交流を実施。スポンサーシップがメニュー化されていない背景が良くわかります。

スポンサーシップの課題

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いくつか課題がある。
B2Bのスポンサーシップ環境に、ファンに対してポジティブにエンゲージできているかというと必ずしもそうでない。そのため、アクティベーションのアクティビティを考えていく必要がある。
また人材確保も課題。コンテンツ制作(アクティベーション)と効果測定を実行できる分析部隊が社員として必要。

スポンサーアクティベーションにおいて企業間だけでなく、ファンに対してもポジティブな影響を与える、という視点はとても重要と思いました。ファンをも熱狂させるアクティベーションアイディアは日本ではあまり例がなく、これからスポンサーアクティベーションプランナーという役割もよりフューチャーされる時代になると想像します。

また上記に伴い自社内で効果測定が実現できるアナリストもニーズがあると思います。データによる効果検証はJリーグではFMCGブランドと比較すると未成熟であり、分析技術に長け、データドリブンで戦略を設計できるマーケターは喉から手が出るほど欲しい人材だと思います。
(にしてもスアレス若いですね…)

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(ファンダイクの原点がここに!)
フローニンゲンでは、ナショナルブランド(大企業)と契約するために、ブランドの目的を理解し合意した上で売り込む必要があると考えており、セールスのリードタイムが長くなることも。契約期間も長期契約が多い事から、同業種内では1社独占でパートナシップを結ぶことが主流のようです。Jリーグクラブだと小口含め競合あまり関係ない部分が異なる点でしょうか。

スポンサーシップ担当に求められること

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ブランドがフローニンゲンを使って何をしたいか?一方でブランドもチームに還元してもらう必要がある。ファンにとっても面白いものであることに注力する。
オランダでは、ブランドはファンからも受け入れられなければならない。ファンはいらないブランドをスポンサーから降ろそうとする。
※オランダは特殊なマーケット
パートナーシップを消極的に行ってはいけない。クラブのアセットを使ってアクティベーションを使い込む必要がある。提案時に「アクティベーション予算を残す必要がある」と明確に伝える。スポンサー契約だけで予算を使い切ってはならない。

スポンサーメニューの無いフローニンゲンではブランドの目的を正確にヒアリングし、フローニンゲンのアセットを活用してソリューションをカスタマイズできる、いわゆるコンサルティング型の手法がスポンサーシップ担当に求められると思いました。

ここで重要なポイントは面白い企画に飛びつくのではなく、フローニンゲンにスポンサーシップをする目的の定義に重きを置いている点です。
いくら面白い企画を実行しても、企業の目的が達成し得なければ、本質的な課題解決にはなりません。良い例が「バスる企画やってよ!」という無能マーケターのオリエンです。(最近は減りましたが…)
いくらSNS上で拡散されても、企業の目的を達成しなければ何の意味もありません。

そのため、フローニンゲンではhowから入るのではなく「なぜ、なんのために、何を」をブランドと合意することが最重要項目。
つまりヒアリング力/ブランドと合意した目的設定力(イシュー発見)が求められます。

またブランド側の期待値コントロールもスポンサー担当に求められるスキルです。
例えば、ブランド側が「売上を伸ばしたい!」と目的に設定しようとします。ただフローニンゲンは「パートナーシップを結ぶことで売上を必ずしも上げることはできない=リスキーなので、売上に寄与するKPIを設定しましょう」と提案します。
「売上を上げるためにどれくらいのお客さんとのトランザクション(取引)が必要か?売上は約束できないけど、イベント、ブランド紹介の機会を提供することができる。そのためKPIを”ブランド紹介数”と定めましょう」と。

「コンバージョンに関してフローニンゲンでは約束できない。手助けはできるけど、売上にコミットすることは難しい。」と断言しブランドと合意するコミュニケーションスキルが必要です。


最後に

以下の質問をしました。
「スポンサー契約をする際に、”アクティ―ション費用を残してほしい”とブランドに伝えるとお話がありましたが、実際どの程度の割合なのでしょうか?また提示する場合、アクティベーションプランをいくつか用意し、それぞれの価格を提示した上で提案するのでしょうか?」

標準な割合はない。パートナーによって必要なアクティベーションは変わる。露出目的なら割合が少なくても良いが、他の手法であればプラスアルファで実施する必要がある。
スポーツマーケティングは実行が難しい。どのブランドもアクティベーションに長けているブランドはない。我々は誰よりも考えているため、少なくともアクティベーションがどのように効果が上げられるかを提示することができる。なので契約を結ぶ前に、ブランドサイドにアクティベーション費用の必要性を投げかけることが重要。

Jリーグクラブがスポンサー面で海外と大きく差があるとは思いません。
一方で、数百社のスポンサーを抱える状態でアクティベーションにどれだけ注力できるリソースがあるでしょうか。
また「なぜあそこだけ特別扱い?」と言われないために、スポンサー企業のバランスも気にする必要があるため、アクティベーション実行難に陥るクラブが少なくないと想像します。

一方でクラブサイドだけのせいではなく、スポンサー側も「クラブのアセットを活用してアクティベーションしていく」という考え方をもっと根付かせる必要があると思います。
契約したらしっぱなしであとはクラブ任せ、ではそれこそhow中心の企画実行に陥りかねません。このマインドセットを変えていけるスポンサーシップ営業がスポーツ界に求められていると思いました。


フローニンゲンが実行しているスポンサーシップ営業はとても高いスキルが要求されると思いました。
ブランドにヒアリング、といっても、ヒアリングの準備が必要です。ブランドを徹底的に調べつくし、なぜフローニンゲンにスポンサードするのか。
その仮説を営業サイドで立てた上で、ヒアリングを行い、目的の解像度を上げていく。

目的が言語化でき、合意した後には、あらゆるアクティベーション手法を検討し、値付けを行った上で(実行する際のイベント費用、制作費、フィー等頭に入っていないとです)提案する。で減額交渉は一切受けない。

更にさらに、実行のプロジェクトマネジメントや、実行後の効果検証の段取り、紙に落としたフィードバックと様々な複合スキルが求められるのが想像できるでしょう。

とてもやりがいのある仕事ですが、求められるスキルは高いです。
よく「スポーツ界に入るために何を学べば良いですか?」という質問を受けます。非常に難儀な質問です。

ただ、ひとつ言えるのは「何を目指しているのか?」「何ができるのか?」という質問に自信をもって回答できること。
このスキルは何でもよいと思います。スキルを会得した上で、ある一定の運があればスポーツ界に入ることはそこまで難しくありません。
(HALF TIMEでも多くの募集が出てますし)

入り方を悩むより、できることを身につける。これに尽きます。


次回は、MLSシカゴファイアのコミュニケーション&メディアについて

過去の講義録は以下よりご参照ください!


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