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アメリカと日本のスポーツビジネスの違いとは? スポーツビジネスを学ぶ おすすめ図書紹介【2020年4月】

お世話になっております。酒井です。
来月でスポーツビジネスの世界に飛び込んで半年が経過します。
修行の一環でスポーツビジネス書籍を読み進めており、4月のおすすめ図書を紹介いたします。
スポーツ関係者は特にコロナで歯がゆい時期が続きますが、空いた時間のインプットの参考になればと思います。

※4月にもう一冊追加予定です。

本書は、著者がMLBのスプリングキャンプへ参加された内容をベースにアメリカのスポーツビジネス(スポンサーシップ/マーケティング/ツーリズム)を学ぶことができます。
読了後に以下でtweetしましたが、noteでは各項目においてブレイクダウンして紹介できればと思います。

1、米スポーツドリームジョブたる理由

ヴィッセル神戸の売上が100憶円一歩手前までと、JリーグもDaznとの契約により成長を続けていますが、アメリカ4大スポーツ(NFL:アメフト、MLB:メジャーリーグ、NBA:バスケ、NHL:アイスホッケー)に比べればまだまだ上には上がいると現実を突きつけられます。以下はスポーツ界における年間売上ランキングです。NFLとMLBなんといっても1兆越え。スケールが違う。

1位、NFL:1兆5540億円
2位、MLB:1兆1433億円 
→日本のプロ野球の約6倍の規模です。
3位、NBA:8214億円
4位、サッカープレミアリーグ:6745億5600万円
5位、NHLアイスホッケー:4917億3000万円
※参考
--J1リーグ:734億7900万円
--MLS(メジャーリーグサッカー) :714億8000万

アメリカ4大リーグの売上規模は桁違いです。基本的な収益源は日本と大きくは変わりませんが、
①スポンサーシップ:日本のメディアバイイングとは異なる経営課題ソリューションを提供(スタジアムネーミングライツ、奇抜なスポンサーアクティベーション)
②チケット収入:試合の質担保/VIPルームにより高単価を維持
③放映権:スーパーボウルからもわかる通り1試合当たりの価値が高い=高レベルな試合を提供できる環境整備(格差是正)。
④マーチャンダイジング:全世界のファンがチーム関連商品を購入、1試合の消費単価(大人2名、子供2名掲載ん)はチケット代込み(平均単価で計算)で2~5万円。(MLB約2万円、NBA:3万円、NFL:5万円)
と各々から日本のスポーツビジネスとの差が見られます。

2、MLBが街を巻き込んだマーケティング&スポーツツーリズム

以下のプレイヤーと大会を参考に見ていきましょう。
球団:サンフランシスコ・ジャイアンツ
行政:スコッツデール市(同市のスコッツデールスタジアムはジャイアンツのスプリングキャンプ時のホームグラウンド)
大会:スプリングトレーニングキャンプでのカクタス・リーグ
※日本でいうところのオープン戦。

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ジャイアンツ・スコッツデール市におけるカクタスリーグのビジネスモデルです。ジャイアンツとスコッツデール市はベースボールファシリティ契約を結んでいます。この契約によりスコッツデールスタジアムの利用権をジャイアンツは得ております。またスタジアム内収益も全てジャイアンツ収入。
スコッツデール市はスタジアム内収益を当てにしておらず、キャンプで訪れる平均世帯年収1,200万円を超える観光客(リーグトップクラス)の滞在費(ホテル・レンタカー代)/外食費の税金で収益拡大を実現しております。
またこの観光客の割合は約5割以上が州外からの来場です。
カクタスリーグが短期間で約30試合実施することも人を集める理由ではありますが、各チームの施策も欠かせません。
この座組が成り立つのもジャイアンツが抱える老若男女のファン層&アクティブ施策が魅力的なおかげ。具体的に見ていきましょう。

3、ジャイアンツが提供するファン向けコンテンツの太っ腹感

①ジャイアンツバケーションズ
→週末を含めた3泊4日で3~4試合観戦できるツアー。その中身は、
・開門1時間前の入場。選手のフリーバッティングや練習風景を間近で見ることができ、ホームランボールやサインを貰えたりする。
・試合後のバーベキューイベント。会場隣接のサブグランドでバーベキューを実施。選手や監督がトークショーや写真撮影に訪れる。

②バッティングプラクティス
→ワインを飲みながらジャイアンツのコーチより直々にバッティング指導を受けられる。

③シーズンチケットホルダーイベント
→ビール5杯、チーム専門ショップディスカウント、選手との交流。

④スコッツデールジャイアントレース
→キッズでも参加できる家族参加型のライニングイベント。終了後にはビールも振舞われ賑わいを見せる。

この他にも現地では様々なイベントが実施されているとのことで雰囲気はまさにお祭り気分。野球ファンでなくても行ってみたくなる企画ばかりです。

4、アメリカと日本のスポーツビジネスの違い

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一言でいうと「広告代理店が入っているか否か」です。
アメリカはライツホルダー(スポーツ組織)と企業が向かい合う形でお互いがwin-winの関係値となれる土台が確立されています。アメリカでも数年前は日本と同様に看板掲載等のいわゆる露出!がスポンサー掲載の基本手法でしたが、ライツを活かした様々なアクティビティを絡めたスポンサーシップ商品が展開されております。
ライツホルダー(スポーツ組織)のマーケティング担当も中長期のビジネス視点でマーケティン戦略を練り、ターゲットを10代に据え置いてスポンサーシップのあるべき姿を日々ブラッシュアップしているそうです。
私が常日頃から愛読している以下メディアにも海外事例のスポンサーシップ事例が多く掲載され、とても勉強になります。

▽参考 企業の経営課題とスポンサーシップメリット

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5、日本のスポーツビジネスの課題

本書では広告代理店(ほぼ電通)の介在、つまりメディアバイイング気質のスポンサーシップを課題と捉えております。
本来のスポンサーシップとは「経営課題を解決する手段となりえるもの」。ただ、日本のスポーツビジネスモデルでは、スポーツが広告代理店の金稼ぎの道具として扱われているのでは、と唱えます。

延期となってしまった東京オリンピック2020を例に見てみましょう。
最高位であるトップパートナー企業の一覧を見ると、排他的独占権をもって1業種1社となっております。
が、以降のカテゴリを見ると非排他的に企業が並んでおり、クライアントメリットを希薄化した単なる「お金集め」ではと。
電通買い切りによって各企業にばらまかれたスポンサーシップは、アクティベーション施策実施時にも電通の懐にチャリンチャリンとお金が巡ってくるので、著者はスポーツを金稼ぎの道具と扱っている!と異議を唱えていらっしゃるのです。

6、私が思う昨今のスポンサーシップの状況

本書は2017年に発行されましたが、昨今のライツホルダー(スポーツ組織)がチャレンジしている方向性は「スポンサーシップ」ではなく、企業と二人三脚の「パートナーシップ」モデルを目指しているように思います。
(広告代理店の介在有無は良くわかりません)
以前、横浜DeNAベイスターズの営業部長と話をする機会をいただいた際、「ただの看板売りではない、企業にカスタマイズされたソリューション提供型のスポンサーシップビジネスが求められる」とおっしゃっておりました。パッケージとして「胸ロゴいくら、看板いくら」等の値付けはあるものの、セールス時には「チームの目指すビジョンや価値に賛同いただけるか、その上でクライアントカスタマイズされた企画に価値を感じていただけるか」を営業戦略では都度必死に考えていらっしゃるそうです。

ここに私はアメリカのスポーツビジネスの姿を見ました。企業と二人三脚で歩む理想型のスポンサーシップの形。その功績もあってか、ベイスターズの観客動員率は95%を超えます。
名古屋グランパスも企業の様々な取り組みをスタジアムで展開し、来場者数をぐっと伸ばしております。
▽グランパススタジアム施策

今様々なプロスポーツ団体が副業でスポンサー営業を募集しております。
チームの目指すビジョンと、企業の経営課題を結びつける唯一無二のソリューションを提案する。ハードな思考力が試されますが、とてもやりがいのある仕事だと思います。何よりスキルを習得したら他とは替えが効かない「思考の胆力」が身につくと思います。将来スポーツ界でマーケティングをやりたいのであれば絶対にスポンサー営業を経験しておくことをお勧めします。
お客様が求めるものと向きあい、思考の訓練を現場で体感できるのは営業の特権。むしろこのスキルがない状態でマーケティングに行っても使い物にならないですし、雇ってもらえません。


少々長くなりましたが、本書からは以下が得られます。
①アメリカのスポーツビジネスを具体事例を通して学ぶことができる
②日本のスポーツビジネスとの違いがわかる
③日本のスポーツビジネスに求められるヒントがある

③に関してはコロナウイルスの影響もあり、既存のスポーツビジネスモデルから全く違った新たなモデルを考える必然性を感じます。
スポーツビジネス×企業マーケティングを引き続きインプットし、スポーツ界の新たなポートフォリオとなる種を考えていきたいと思います。

4月はあと一冊、以下を読破しアップ予定です。乞うご期待。

twitterにてスポーツ&マーケティングに関して発信しております。
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