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近所の蕎麦屋

 近所の蕎麦屋に行った。昔ながらの蕎麦屋。暖簾はかかっていなかったが、戸を引くと店の中には四人席が四つ、奥には座敷スペースがあった。隅にはテレビがあり、お昼のニュースが流れていた。お客さんは一人。お店の人は店の奥で作業しているようだった。空いている席に座り、献立表と書かれたお品書きに手を伸ばした。漢数字が並んでいる簡素な記載。子供の頃、祖母がよく出前を頼んでいたとんかつ屋のお品書きに似ていた。  蕎麦、うどんなどの一品物は一千円弱、天麩羅や丼ものがセットになると一千円を超える

    • 周りの変化

       月末の締め作業を済ませて、一息入れる。他の会社さんでは、若手の管理職の方が配下メンバーの勤怠表をまとめている。私もそういった管理作業をしなければならない年次ではあるが、ずっと上司に頼りきりである。いつかその上司もいなくなる時が来る。その際に全ての作業を受け止めることができるのだろうか。  4月は心がザワザワする。周りの変化によって、自分も変化しなければならない恐怖を感じる。4月だけこの世からいなくなりたい。毎年そんなことを想う。今日は、新年度からの組織体制変更に関する情報が

      • えんぴつ

         父は字を書かない。口で言うだけでそれ以上の行動はしない。メールもしない。用事がある時は電話をかけてくる。分刻みで残る着信履歴と留守番電話メッセージ。それだけで伝わる嫌な予感。いつも躊躇って、かけ直すのが遅くなる。  そんな父が字を書くのは、他人にお金を借りるときだ。母にお金を借りるときだってそう。A4用紙に鉛筆書き。先が尖ってない鉛筆のせいか、いつも文字は太い。「YYYYMMDD 私○○は××にお金を△△円借りました」的な文章から始まり、返済期限までを5、6行で書いていた。

        • やさしくなりたい

           働きすぎ、そんなに頑張らなくて良い。周りからそう言われることが多かった私は、周りの役に立たないと意味がない、価値がないと思いながら黙々と仕事をしていた。周りの声を聞き入れたのは、精神が病んで休職してからだった。  歳を重ねるにつれて、融通が効かなくなり、以前のように頑張ることはできなくなった。今は、周りと妥協点を決め、作業を後輩たちに依頼して、平和的に仕事を片付けている。狭い視野で作業に集中していた頃に比べ、全体としてうまくいけば良いと思えるようになったことは成長かもしれな

        近所の蕎麦屋

          社内報

           自社の社内報を破っている。30ページ程度の中綴じ冊子で定期的に家に届く。冊子を開くと、上役のお言葉から社員の子供の写真まで載っている。自分には縁遠い世界の出来事のように感じられる。そして、いつも社内報の処分に困っている。ホッチキスの芯を外して、一枚一枚バラしていく。知らない社員の子供の顔、誰かの嬉しいニュース。ハサミを入れて裁断していく。他の社員はどのように処分しているのだろうか。  「年次が上がり、立場も変わっていくのだから、顧客の対応だけでなく、社内の活動にも力を入れ

          社内報