やさしくなりたい

 働きすぎ、そんなに頑張らなくて良い。周りからそう言われることが多かった私は、周りの役に立たないと意味がない、価値がないと思いながら黙々と仕事をしていた。周りの声を聞き入れたのは、精神が病んで休職してからだった。
 歳を重ねるにつれて、融通が効かなくなり、以前のように頑張ることはできなくなった。今は、周りと妥協点を決め、作業を後輩たちに依頼して、平和的に仕事を片付けている。狭い視野で作業に集中していた頃に比べ、全体としてうまくいけば良いと思えるようになったことは成長かもしれない。
 休みの日は、後回しにしていた自分のケアに時間を割くようになった。身体の調子が良くない日は、身体を温めて、栄養価の高いものを食べる。サウナやマッサージで身体を軽くして、韓国料理屋で参鶏湯をいただいて、身体を整えることが多かった。

 ある日のこと、マッサージ屋の店員さんが慌てていた。店員さんたちがいつもより長く中国語で話していた。店員さんの説明によると、コロナワクチンの副反応で店員さんの1人が来れなくなったとのことだった。時間通りにお客をまわすことができず、店員さんは予約客に対して説明と謝罪を行い、目の前の客の施術に集中していった。
 韓国料理屋は、臨時休業だった。張り紙によると、店員さんのコロナワクチン接種のために2、3日お休みをいただくという内容であった。ワクチン接種が進むことは望ましいけれど、経済や人々の活動が静かに止まっていくことを感じた。
 他にも参鶏湯を提供するお店はあるが、たまには変わったものを食べたいという気持ちになり、タイ料理屋に入った。知り合いから勧められていたお店だ。お店に入ると、タイの家族連れのお客と店員さんが話している。注文を終えて料理を待つ間、彼らの話を聞いていた。家族連れのお客も日本でお店を開いているらしく、お互いに休業に伴う協力金の申請で苦労したようであった。日本人でも難しい申請内容のため、やはり海外の方やお年寄りには厳しいようだ。とある補助金の申請の最後には、申請後の経済活動への気持ちを書く欄があるらしく、気持ちを逆撫でされて申請をやめた人がいるそうだ。どうしてこんなにやさしくない国になってしまったのだろう。説明不足、不満、納得できないことはたくさんありますが、身の回りのことに対して少しでも多くの納得を生み出せるように行動したい。無理はできないけど、もう少し頑張ってみよう。やさしくなりたい。

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