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化け物たちがうごめく洗湯へ行くにゃー【#吾輩は猫である読書感想文7】(毎日更新89日目)

細切れ感想文今日も発信。
やっと半分すぎたかなというところでございます。

いつも思索と人間観察と昼寝に明け暮れている吾輩。
運動習慣をはじめました。

ただの散歩じゃつまらないということで
蟷螂とあそんだり
蝉をとったり
松すべりしたり(松の木に思いっきり駆け上って、上から地面のほうに顔を向けて駆け下りるという芸当、かの義経公に見習ってやってみたらしい 笑)
家の周りを囲っている竹垣の上をぐるぐると何周もしてみたり、、、
いろいろやって楽しんでます。
無邪気なフツーの猫みたいでかわいいと思いきや、頭の中はガチの哲人みたいに難しいこと考えながらやってるから見た目とは違っておっさんって感じ
そこがまたかわいいのですけどね。

おもしろかったのが、猫がよくやる人間に体をこすりつける動作
あれは吾輩からしたら、かゆくて手も足も届かないから人間の体を利用して勝手に気持ちよくなってるだけであって
人間は猫が甘えてる、もしくは自分のことを好きなんだなと勘違いして、頭をなでてくれたりするのは可笑しいものだ
といった場面。
漱石の徹底的に猫の気持ちになりきって書く文章は本当に猫が書いているのではないかという気がしてくるくらい自然で見事なものだと感心します。
すごい漱石。

いっぱい運動して汗が蒸れてかゆいから、そういう時は人間にこすりつけるか、でこぼこの松の木の表面でこする、この二つの方法しかないのだけれど
松の木でやると松脂がついてひでえ目にあったことがあるから人間でやろうとする。

でも最近は吾輩の体にノミが繁殖してるので、やろうとすると首根っこつかまえて放り出されちゃう。
人間は自分の都合の良いときはヨシヨシするのに、
「手を翻せば雨、手を覆せば雲とはこのことだ」
おもしろい表現が出てきました。
手のひら返しの態度のことを言っているのですね。
この作品には、おもしろい表現がたくさんたくさん出てくるので勉強になるし吾輩が真面目な顔して言ってるので笑っちゃいます。

たかがノミの千匹や二千匹で吾輩に愛想をつかすとは人間ってやつは現金なものだというわけです。

つづいてこう続きます。

「人間世界を通じて行われる愛の法則の第一条にはこうあるそうだ」
「自己の利益になる間は、すべからく愛すべし。」

吾輩は人間との生活をとおして人間とはいかなる存在か?
それについての理解をどんどん深めていっているようです。

それはそれとして、松でこするわけにはいかない
人力もあてにできない
かゆい
さあどうしようと思案して

うちの顔色の悪い主人がたまに行っては
元気になって帰ってくる洗湯(=銭湯)なるものへ行ってみよう
と思い立つわけです。

そうして吾輩ひょっこり洗湯を訪れてみるのですが
なんたる奇観だと驚愕します。

人間は衣服を着てこそ獣と違う存在なのに
人間の歴史は衣服の歴史といっても過言ではないくらいに
衣服にこだわり、自分は他のやつとは違う人間だぞと
個性を強調してきた人間が
人間たるゆえんともいえる衣服を脱ぎ捨て
みんな裸ではないかと驚く吾輩。

読者も「親の死に目に会えなくてもいいから、この奇観だけは見ておくがいい」

というくらい。

そんな風に驚きながら吾輩は洗湯にいる人間たちを観察します。

まあでも洗湯の中はいろんなやつがひしめきあってて裸だし、もはや人間ではない、化け物さながらだというわけですね。

ここでは吾輩の目線をとおして、洗湯にきている様々な人物の描写がなされますが、見事です。
猫の目線はすなわち漱石の目線なわけですが、ほんとに一流の作家の人間観察というものは実に見事だなと感嘆してしまいます。
作家さんや小説家さんは暇さえあれば外へ出て街の人々の様子をじっくり見ているんでしょうか。
どうしたらこんなにも的確に文章だけで表現できるのかと
ぼくはこの観察力と表現力に驚き憧れてしまいます。


また話の筋にもどると
洗湯の中で大声で怒鳴りつけている人がいる
誰かと思えば、我が主人
体を洗ってるときに近くにいた学生がぺちゃくちゃ偉そうな講釈をたれているのが気に食わなかったみたいで、
さっきからこっちにお湯がかかってんだ馬鹿野郎って怒鳴ってるんですね。
ちなみに主人は怒るとき馬鹿野郎という言葉しかもっていない一辺倒な人です。

我が愛すべきご主人は頑固一徹だから、こんな感じで誰彼かまわず喧嘩することがよくあります。
そんな主人をよく知る吾輩はあたたかい目でその光景を見つめるのでした。

洗湯に入ろうと思ってやってきた吾輩だったけど
たくさんの人間がうごめくすさまじい光景にけっきょくそのまま我が家に帰っていくのでした。

第七幕はこういった具合でありました。


夏目漱石の人間観察のすごさ、表現力、いろんなものを例えるときの上手さ
すごいです。
しかも猫の目線で描くという当時にしては視点の自由さ
そういったところに改めて感動をおぼえたぼくであります。

吾輩の物語はまだまだつづく。

それでは今日はこのへんで

またあした。

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