親子丼の味
親子丼を久しぶりにお店で食べた。
優しい味がして、とても心が満たされたような気分になりました。
あれは確か小学6年生の頃。
家庭科の調理実習で親子丼を作らされました。
僕は当時家で料理をすることもほとんどなかったので、(今もですが)
見よう見まねでなんか適当に教科書に書いてあるままに作ったように記憶しています。
教科書に載っている材料を、載っているままに作って乗せて食べたんです。
言われた通りにやったもんだから、何も考えずに食材たちを口に運ぶことになり、僕はその時生まれて初めて口に入れた三つ葉の味に衝撃を受けました。
あの独特な風味が口の中いっぱいに広がって、一応頑張って作った親子丼の味は今やひとつも覚えていません。
三つ葉を食べて「これは本当に人間の食べるべきものなんですか!!??」と思った記憶だけが確かに残っています。
あとその夜に、家族に調理実習どうだった?と聞かれて「四つ葉が不味すぎてぇー!」とか言って「四つ葉じゃなくて三つ葉ね」と訂正された記憶も残っています。
親子丼を見るたびに思い出すのはその2つです。
(というかほとんど三つ葉の思い出といえるかもしれません)
それ以来僕は三つ葉恐怖症になり、三つ葉が入っている食べ物を注文して席に届いても、まずは三つ葉を避けることから始める人間に成り下がってしまいました。
悲しいことです。
そして今回久しぶりに親子丼をお店で食べました。
親子丼をお店で食べるのはいつぶりかわからないほどの記憶のなさだし、セブンイレブンの親子丼は割と最近食べたけれど、あれには三つ葉が入っていなかったなーとか思いながらも何があっても完食するぞと恐れ意気込みつつ食べてみました。
一口目からとても美味しくてほろほろと幸せを感じていたところ、四口目くらいで中腹にそれはいました。
久しぶりに再会して「あー、なるほどな、これは案外美味しいかもしれない。」そう感じました。
人の味覚は変わる。
それが成長なのか、退化なのかは分からないけど、小学生の時あまりにも耐えがたかったあの味が今なら全く苦にならず、むしろ味のアクセントとして食べられるようになったことに感動すら覚えました。
考えてみればネギとか大根おろしとか薬味の類は結構好きなのでそういう耐性はいつのまにかついていたのかもしれません。
三つ葉が食べられなかったあの頃の自分に「よかったね」って言ってあげたい気分です。
よかったよかった。
でも絶対に、どんなに時間を経ようともパクチーだけは一生食べられないと思う。
なんだあの草は!絶対に許さない。
でもそうやって許さないと思っていたこともすっかり忘れて許してしまう、それが人間なのかもしれません。
それならそれでいいけれど、パクチーを食べられない人生でも全然いいな、それこそが自分の人生だとも思うのでした。
おいしいと思えるものをたくさん食べたいですね。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?