『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』—たった1日でCVRが5倍に伸びた実話
買って良かったマーケティング本をリストしていくnote、その19冊目。
著者栗原氏の『虎の巻』との出会い
突然混乱させるような話をしてしまい恐縮ですが、今回ここでご紹介する本とは別に、著者栗原康太氏が2020年の春にKindleで出版された、『BtoBマーケティング虎の巻』という電子書籍があります。
数ヶ月前のこと、私は、この電子書籍に書かれていたあるシンプルなアドバイスを、担当するクラウドサインのオウンドメディア「サインのリ・デザイン」で実行しました。
すると、それまでの2年間横ばいで伸びなかったオウンドメディアからの資料請求CVRが、他の施策とは関係なく実行した翌日から前月比5倍以上になるという、驚くべき効果が実際に出たのです。
いまもなお、それは下がっていません。
CVポイントからの逆算と階段設計
そんな有益なアドバイスを惜しみなく公開してくださっている栗原氏が新たにリリースされた書籍ということで、本書も迷うことなく購入。
読む前の予想では、その『虎の巻』を底本にブラッシュアップした本なんだろうとばかり思っていたものの、良い意味で、構成からしてそれとはまったく違う書き下ろし本でした。
本書では、タイトルに“事例で学ぶ”とあるように、
「リード数や商談数は増えているが、受注につながらない」
「MAツールを導入したが、活用できていない」
「競合の参入でCPAが高騰し、受注率も低下」
このような相談事例に対し、栗原氏が企業にアドバイスをしていく構成で、各章を分けて編まれています。
列挙された11のケーススタディを俯瞰すると、ベンチャーっぽい悩みから大企業ならではのあるある話まで、企業の成長フェーズそれぞれでマーケティング担当組織が抱えるであろう典型的課題が網羅されていることがわかります。
それでいて、事例集が陥りがちなバラバラのノウハウの単なる寄せ集めになっていないのは、前書『虎の巻』から一貫して栗原氏が述べている、
・CVポイントの重要性を意識し、そこから逆算して戦略と施策を考える
・階段をなめらかに設計する
ことが、紹介されているすべてのケースで大切にされているためです。
事実、私の運営するメディアのCVRが一夜にして5倍に伸びたのも、この階段設計の基本に立ち返ったからこそ得られた結果でした。
マーケティング施策の優先順位をどうつけるか
ちなみに、本書11のケーススタディの中でいまいまの私に刺さったのは、9番目の「コンテンツマーケティングに投資したいが、どこから手をつければいいか分からない」でした。
多くのマーケティング本では、コンテンツマーケティングへのアドバイスと言えば、「継続は力なり」のひとことで片付けられてしまうのが常です。
私の場合は未経験とは少し立場が違い、3年以上メディア・ホワイトペーパー・セミナー等々のコンテンツをリリースし続けてきて、「継続は力なり」は当然にできているという前提で、その上でさらに何ができるかのヒントを探していました。
そうした目線で本書を読んでみると、
(1)取りうる施策のバリエーションを増やすこと
(2)顧客の検討段階にふさわしい施策を当てはめること
この2つの関係・紐付けを整理したうえで、特に(2)を意識した実行すべき施策の優先順位付けがうまくできていなかったことに気づかされました。下手な鉄砲も数打ちゃ当たる、になっていた気がします。
特に、SaaS事業のマーケ担当であるにも関わらず、継続率に影響するコンテンツへの自身の関わりが足りていないことを改めて自覚。本書はこの点についてもより詳細な事例を示してくれていて、早速明日からのマーケティング活動のイメージが持てます。
ここではご紹介できませんでしたが、事例パートの前に置かれている
・BtoBマーケティングの特徴(BtoCマーケとの違い)
・マーケの強さを左右するビジネス領域の定め方
・LTVの高め方、そのためのプロダクトへの関わり方
についての解説も、少ない文字量でズバッと本質を突いていて、隠れた本書の見所だと思います。
鮮やかな色使い・見やすく豊富な図表のおかげもあって、どなたでも2時間ぐらいでさらっと読み終えることができてしまうでしょう。そして一度二度読み通した後も、マーケティング担当者として成長して次のステージに到達するごとにまた読み直すことで違う事例が自分ごとのように刺さり、書かれていることの理解がさらに深まることでしょう。
サポートをご検討くださるなんて、神様のような方ですね…。