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【Vol3.2年目】売上・利益も全公開!デザイン会社の僕らがストリートバー"LOBBY"を始めたらこうなった

こんにちは。井澤卓です。

2019年10月、1月に書いた、デザイン会社である僕達が経営するバーLOBBYの収支全公開記事の第三弾です。

昼はデザインの仕事をし、夜は自分達でバーに立つというスタイルで営業しています。

前回の公開記事から約1年が経過し、お店としてもオープンから1年7ヶ月が経ちました。
この間緊急事態宣言があり4月-6月を休業するなど予想外の状況に直面しましたが、周りの助けのおかげで無事お店を継続できています。

お店としても、厳しい状況を経て進化することができました。
今回は第三弾として、この1年のLOBBYを改めて振り返りつつ、2年目の経営はここまでどうだったのかをまとめてみたいと思います。

1. 営業方法の変化

まず初めに、2年目に差し当たり、お店の運用面で変えた事を振り返ります。

①営業時間の変更

営業時間を19時-2時から、19時−1時へ。
月曜の営業を開始し、週5営業から週6営業へ。

コロナにより遅くまで飲むニーズが減るだろうと考え、休業明けの7時から営業時間を1時間早めました。
時短にしても売上が以前より上がっていることもあり、現在もこのまま維持しています。

飲食店仲間に聞いても、人々の深夜活動は減ったという声が多いです。
何より、2時3時まで営業するとスタッフの体力がかなり削られるので、健康面でも短縮して成功でした。
(2時まで営業すると、閉め作業をして家に帰り寝るのが3時半頃になるので、翌日の昼の仕事が大変でした。1時間早めるだけでもかなり楽になります。)

また、以前は定休日だった月曜日の営業を始め、週6営業としました。
オープンから1年が経過し現場を任せられるメンバーが増えたため、しっかり社員の休みを維持つつ営業日を増やすことに。

月曜日の営業を開始すると同時に、客足が伸びない週初めの起爆剤として、月に二回月曜日にイベントを開催しています。(イベントの詳細に関しては数字公開のパートで後述します。)

加えて、10月から金土はCHECK IN LOBBYと称したカフェ営業を開始。
カフェはまだ道半ばですが、昼夜と1日使って貰える場所を目指し、新しいことへ取り組んでいます。


②カクテルの強化・お酒のバリエーション増加

営業再開のタイミングでメニューを刷新し、カクテルのグレードを上げました。
使うお酒や工程が複雑で、作る側にもスキルを要するカクテルを追加し、よりお酒が好きな人の満足度を上げられるようなメニューへアップグレード。

また、クラシックカクテルへの対応や、クラフトジン、ウイスキーやメスカルのバリエーション増加など、幅広くお酒を楽しめるよう日々ラインナップを増やしています。

僕達は初心者から始め引き続きお酒を勉強している身ですが、だからこそお酒に詳しくないお客様と同じ目線で会話し、自分達が好きなお酒や驚きがあった一杯を提案できるよう、日々サービスのレベルアップを目指しています。

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▲お酒の種類もかなり増えました!

原価が上がった分、メニュー単価も上げました。結果として客単価が1年目の約2,000円から約2,400円ヘと上がり、売上の伸びを牽引してくれています。

「LOBBYをきっかけに多種多様なお酒に触れて、今まで知らなかったお酒の魅力に気づいてもらう」

これは最初からずっと目指していることですが、1年経って少しずつ実現ができていると手応えを感じています。

③グッズ販売の強化

休業中にECサイトをShopifyで刷新し、公式HPとECサイトを一つにまとめました。
(コロナ中の取り組みはこちらにまとめています)

合わせてグッズ販売を強化し、ソックスやTシャツの種類を増加。
社内外のアーティストやクリエイターとコラボし、定期的に新デザインのアパレルプロダクトを追加しています。

飲んだ帰りにグッズを買ってくれるお客様も多く、売上の底上げに繋がっています。

④instagramのマイクロメディア化

instagramは、デザインチームがいるからこそできることを考え、投稿の内容をマイクロメディア寄りに変更しました。

単純にLOBBYの事を一方的に伝えていくのでなく、見ている人が楽しんでもらえる様なコンテンツを投稿しています。

「AT LOBBY」は、LOBBYのスタッフやお客さん、LOBBYを彩る植物やインテリア、アーティストなどを紹介するコーナー。LOBBYのことだけじゃなく、各人々がよく行くショップや気になることもインタビューしています。

投稿のパフォーマンスを分析し、色々な施策を行ってきたinstagramですが、フォロワーはようやく6,000に到達したところ。
1年7ヶ月での結果なので、本当は1万人を目標にしていたのですが、なかなか思うようには行きません...。今後も試行錯誤していくポイントです。

2. 全て公開!LOBBYのリアルな経営状況

それでは、これより恒例の数字公開です。

これまでの記事を読んでいない方もいらっしゃると思うので、以下前提条件を再掲します。

▼前提条件
坪数:16(54㎡)
家賃:¥330,000 (坪単価:¥20,250)
席数:25
営業時間:月曜日−土曜日 19時−翌1時
 −日:6時間
 −月:144時間
店舗立地:池尻大橋駅徒歩3分
スタッフ2人〜3人体制

▼創出利益目標
※LOBBYの初期投資(1700万円)の回収目標を3年に設定
−年間最低利益:1,700万円÷3=566万円
−月間最低利益:566万円÷12=47.2万円
−日時最低利益:47.2万円÷24営業日=1.96万円

▼7月−11月の売上

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まずは売上のレビューです。

月の平均売上は¥2,771,070と、前年同月平均の¥2,157,014と比較し約61.5万円増加!客数平均は38名→42名、客単価は¥2,268→¥2,438と堅調に伸びました。

一日の平均売上が10万円を突破し、月の売上は300万円を超える月もありました。始めた当初は200万円が目標だったのを考えると、1年で順調に成長していて感慨深いです。

300万円という数字は他の飲食店に比べて高いわけではありませんが、スタッフの稼働時間を考えるとかなり効率が良い数字だと思います。
(LOBBYは仕込みと締め作業を含んでも18時−2時の稼働なので、飲食の中では稼働時間がかなり短いと言えます。)

コロナでの営業休止時は先が見えない不安がありましたが、4−6月の営業休止から再開後、8月〜10月は毎月過去最高売上を更新することができました。
前述のメニューアップデートや定期イベントの開催など、新たに始めた施策がしっかりと機能してくれたおかげです。

▼全期間(2019年5月−2020年11月) の売上の推移
オープン時からの売上の変遷です。

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このグラフを見ると、一年半で大きく月次売上を伸ばすことができている事がわかります。

特筆すべきは売上の中身の変化。
コロナ前はギャラリー貸しでの売上(上図オレンジ色)がある程度占めていましたが、コロナ後はゼロに。
密に人が集まるイベントは難しいだろうと考えていたので、ギャラリー貸しがなくなることは想定内。その中で売上を伸ばすことができた要因が、定期的に開催したフードイベントです。

イベントと言っても、人が密に集まるものではなく、ソーシャルディスタンスを維持でき、ゆっくり食事を楽しめるフードイベントをメインに企画しました。

フードはコラボするパートナーが提供し、お酒はLOBBYが提供するという形。
元々2軒目利用がメインで閑散とするディナータイムや、集客が難しい週初めといった課題時間にイベントを企画することで、売上の底上げを目指しています。

といってもイベントは自分達が楽しいことが最優先。
コラボするパートナーは、普段から仲良くしてもらっている飲食業の先輩達に声をかけています。
今見返しても錚々たるメンバーでありがたい限りです。

8月:
−10日:バーガーマニア
−24日:CHEESE STAND
9月:
−15日:ダンカレー
−28日:Chippers
−30日:美菜屋
10月:
−5〜10日:The Rising Sun Coffee
−13日:ダンカレー
−25日:AELU×Neki×LANTERNE
11月:
−9日:車田篤 from The Great Burger
−17日:Chippers

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イベント時は通常営業の2〜3倍に売上が伸び、大きなインパクトに。

月二回のイベントを毎月企画するのはなかなかタフですが、コラボするパートナーのおかげで普段LOBBYへ来ない人々と出会えるきっかけにもなり、とても重要な機会。
何よりやっている僕達が最高に楽しいので、今後も続けていく予定です。


▼全期間(2019年5月−2020年11月) の利益の推移
以下が営業利益の推移です。

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利益は融資返済のための目標数値47万円を毎月超えることができており、堅調に推移。

利益額が100万円に近づく月もありますが、この数値の中にはデザインチームの社員の人件費は含んでいないので、実質はもっとコストが掛かっていることになります。
(昼も夜も働いているメンバーは、昼のデザイン事業の売上から給与を支給しています。)

この利益額が他のお店と比較してどうなのかはわかりませんが、オープン前の想定を超えて利益創出ができるようになってきたのは確か。

休業時は閉店も覚悟していたので、ここまで成長させることができ安堵するとともに、支援してくれた仲間やお客様には本当に感謝しています。
今後も目の前のやるべきことに向き合い続けて伸ばしていければと思っています。

3. LOBBYの経営で生まれた副次効果

LOBBYを経営することで、飲食事業の売上以上に効果が出てきています。

第一章でも書いた通り、僕達は元々デザイン会社です。
「将来的に空間を含めたトータルプロデュース業を主軸にしたい」という目標のため、自社での実績にするべくLOBBYを作りました。
といっても形だけオーナーとして関わるわけではなく、僕達自身が日々お店に立ち、お酒を作り、サービスしています。

「利益率が高くない飲食事業に自ら時間を投じるのは時間の不効率だ」という見方もあると思います。でも、店に立つからこそ、沢山の素敵な出会いに巡り合うことができました。

まずは採用面です。

2020年は、二人の超優秀なデザイナーがチームにジョインしました。
LOBBYのグラフィックの多くは彼らが作ってくれています。


二人共、元はLOBBYのお客さん。
デザイナー・イラストレーターの三平悠太くんは、知人の紹介でLOBBYに遊びに来た時に意気投合し、度々来てくれる常連さんに。LOBBYメンバーと一緒に遊ぶほど仲良くなり、お互いの方向性が合致したタイミングでスムーズにジョインしてくれました。


インテリアデザインもグラフィックもこなすアンジーは、以前LOBBYに来てくれた時にデザインの話をしたことがあり、デザイナーを募集したタイミングで応募してきてくれました。

二人共LOBBYを通してチームの考え方を知ってくれていたため、入社後のミスマッチもなく、すぐに大活躍してくれています。

もう一つは、デザインの仕事のオファー。

「LOBBYを通してデザインの仕事を獲得する」というのは当初からの戦略でしたが、2年めにしてようやく花開いてきました。

今年は、LOBBY経由で空間ディレクション・設計の案件が4件、グラフィックのトータルデザインの案件は複数件舞い込み、その全てがLOBBYに一度は来たことがあるお客さんから。
LOBBYが僕達のデザインのショーケースとして機能してくれています。

LOBBYという僕達の空間を見た上でオファー頂く仕事は、デザインのミスマッチが無くスムーズになるので、不必要なやり取りもなくありがたいです。

お店は社会との接点。
お店のデザイン、スタッフのサービス、提供するお酒、食べ物から、作り手の思想が滲み出るもの。

お店があるからこそ、「僕達チームが作れるもの、考え方」が伝わり、合致するオファーが舞い込んでいます。

これは僕達が現場に立っているからこそ実現できていることでもあるので、昼夜稼働するのは簡単ではないですが、しばらくはこの体制を継続していこうと考えています。

4. 今後に向けた課題

数字面は堅調なLOBBYですが、店は生き物。課題はいつでも山積みです。

一番はやはりスタッフ面。
10月末にLOBBYの立ち上げからずっとお店をマスターとして守っていてくれていたメンバーが卒業してしまいました。現在はお店専任の社員がいない状態なので、僕を含むデザインチームのメンバーの夜稼働を増やしています。社員募集を行うも、なかなか条件に合致し社員を希望する人には巡り会えず。

LOBBYで働きたい!というメンバーはありがたいことに沢山いるものの、「今の仕事をしながらアルバイトで」という声が多く、社員としてコミットしたい意思を持つ人はなかなか見つからない現状です。

LOBBYのスタッフを始め、周りの飲食店を見回しても、色々な仕事を掛け持ちしている人が多い。

僕達自身が、将来の独立開業を目指す人々へ、「LOBBYで飲食経営をしっかり学べる」と考えてもらえるくらいレベルアップしないといけないということだと思います。

コアメンバーとしてLOBBYを盛り上げたいという方は、こちらにて募集しておりますので、是非お声がけください!

終わりに:飲食店は、これまで以上に「わざわざ行く理由」が大事になる。

2020年はコロナがあり、飲食店の提供価値や、今後のあり方を考えさせられる年でした。

コロナを期に急速に環境が変わり、新たなサービス形態が普及しましたね。
配達サービスが台頭し、料理を始める人、またその人々を支援するサービスが増え、自宅でも美味しい料理が食べられる環境が整いました。
夜出歩くことが減ったという方も多いと思います。

そんな外出自体がリスクになった世の中で、飲食店は、これまで以上に「わざわざ行く理由」が問われています。

「わざわざ行く理由」には、飲食店としての味のクオリティだったり、人間味溢れるスタッフだったり、居心地の良い空間だったり、色々な要素があります。

一つを磨き上げることも、全てをバランスよく整えることも、お店ごとに戦略は異なります。

個人的にはフックは多い方が良いと思っていて、複数要素の掛け合わせが「わざわざ行く理由」作りを促進すると考えています。

たまには美味しいお酒が飲みたいし、あの人もいるから行こうかな。
たまには非日常な空間で飲みたい。今日はあの人もいるし、行こうかな。

こんな感じです。
日常的に行く店って、情緒的な理由も多いですよね。

だからこそチーム内では、お酒の勉強と共に、人間力を高めようという話を繰り返しています。

「人間力」というとちょっと大げさですが、本を読んだりニュースを見て世の中で起きていることを理解したり、自分が好きなことを語れるように突き詰めようという感じです。

「面白い人」って、色んなことを知っていたり、何かを頑張っていて刺激をもらえる人だと思うので、そこもサボらず各自が磨いていこうと日々話しています。


12月現在、再度外出自粛が叫ばれ始め、コロナ関連の報道が増えてきました。
これから先どうなるかは全くわかりませんが、とにかく環境変化に対応するしか無いので、足を止めずに考え続け、長くお店を続けて行きたいと思います。

読んでくださる皆様が気になることがあればそれも書いてみたいと思っているので、フィードバックあれば是非教えて下さい!
僕も週に3回はお店に立っているので、直接会いに来て頂けたら泣いて喜びます。

2021年はLOBBYとして新たな動きを計画しています。
また改めて報告しますので、是非LOBBYアカウントもフォローしてくれると嬉しいです!


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