5年半会社を続け、やっとわかったマネジメントの重要性。
最近、マネジメントの勉強を始めた。
時間ある限り本を読み、Eラーニングや外部の研修に参加したりと、自分の時間を最優先に投じている。
会社を始めて5年半。社員数は20名を超えた。自分がこんなに多くの社員を抱えることになるなんて、独立当初は全く想定していなかった。
社員数が増えたからと言って、事業が順風満帆だということではない。むしろ、この半年間は大きな過渡期だった。
これから何をすべきか、自分の頭の整理を兼ねてnoteに記してみる。
年齢とともに、役割は変わっていく
マネジメントの勉強を始めた理由は、このままでは組織の成長が止まる、という大きな危機感に直面したからだ。ちょっと遅すぎたかもしれないが。
僕達の会社、& Supplyは、元々僕が一人で立ち上げ、その後飲食業を始めるタイミングで旧友達が参加し、昔からの仲間で経営していた。
そこに友達を介してお店の常連になった凄腕のグラフィックデザイナーが加わり、同じ価値観で年も近い、阿吽の呼吸で連携できる男4人のデザインチームが出来上がった。
まさに部活の様な雰囲気だったし、オフィスも部室みたいな感じ。
子供を持つメンバーもまだいなかったこともあり、仕事と遊びの境界線は全く無く、ずっと友達と遊んでる感覚で日々を過ごしていた。
30代前半、メンバー各人の油も乗っており、全員がプレイヤーとしてクライアントワークで価値を発揮できた。旧知の仲なので心理的安全性は極めて高い。何でも言い合えるし、仕事の歯車は常にスムーズに回った。今ももちろん楽しいが、あの時の楽しさはなんとも言えない、青春時代のような感覚だった。
だけどそんな時間は意外にも長くは続かない。
仕事が順調ということは、業務も増えて、人手が必要になる。事業も多角化し、会社には新しいメンバーが増えていく。
新しいメンバーが組織に入るということは、経験のあるメンバーの役割が変わることを意味する。プレイヤーとして突っ走るだけでは成り立たない。
年齢、性別はもちろん、価値観が異なるメンバーを受け入れるために、部室的な会社の雰囲気も変えなければならなかったが、僕達はそのまま友達会社を続けた。今思うと、初期のチームにジョインした若い女性メンバーはやりづらかっただろうなと思うし、実際にそう言っていた。
同時に、初期メンバーも年齢を重ね、子供が出来、ライフスタイルが変わっていった。コロナで働き方も一気に多様化した分、向かう人生の方向性も多様化する。それは僕達のチームでも起こった。
「組織の成長に合わせて役割を変え、自身も変わる努力をしなければならない。」
本で読む字面では理解できるのだけど、実際に予測して、直面して、対応することは簡単ではない。現に僕達は上手く対応出来てなかったと思う。というか、恥ずかしながらその必要性をあまり感じていなかった。
社内の雰囲気は変えず、僕自身自制をすることなく、節度を考えず過ごしていた。友達と過ごす延長で社員の前で振る舞っていたので、若いメンバーからすると嫌だなと思うことが多かったはずだ。(今もあると思う。)
そして、ライフスタイルが変わり、優先順位や方向性が変わるメンバーに対して、変わってしまった部分を寂しく、悲しく思っていた。「俺達同じ夢を見てたんじゃねーのかよ!」みたいな感じだ。「年齢を重ねて家族ができればそりゃ変わるよな」と、今では受け入れられるが、自分がその感覚を体験していないのでわからなかった。
変わる状況を見越して、変化に冷静に対処し、優先すべき事項へリソースを集中化する。それが本来の経営者の仕事なのだが、「変わりたくない」気持ちが先行してしまったと思う。
組織作りを放置して生まれてきたほころび
そんなこんなで、今までの5年半は、特にマネジメントをしたり、組織開発をしたりということをせずに、なんとなく会社を経営してきた。
もちろん途中からその必要性は感じていたが、自分もプレイヤーとして案件を抱えているし、全事業を見て意思決定に参加しているなんてことを言い訳に、優先度を上げてこなかった。
わかりやすく何かを変えようと思ったのは、この体制に明確なほころびが見られたからだ。
ここで言うほころびとは、事業の停滞に他ならない。
デザイン業の後退
まず、ここ1年間で、デザイン案件の数が大きく減少した。
元々僕達はデザイン会社として名を馳せていこうと考えていたので、自分達のリソースを最優先に投じる先はデザイン事業として考えていた。
だからこそこのマイナス成長は、根本的に何かを変えなければならないという強い危機感を与えた。
僕達はデザイン会社と名乗りつつも、自社事業として飲食店を3店舗とホームグッズブランドを運営している。
事業を複数持っていると、自然と経営陣の動きの矛先は、毎日現場が動く自社事業への重点が高まってくる。僕は特にそうなったので、デザイン業をしていること自体の周りからの認知が薄れてしまった。
それに伴い、デザイン業のリードをデザイナーのメンバーへ任せたが、彼はそもそも「案件を獲得して数字を作る」「チームをリードする」ということが向いているタイプではなかった。
自由な表現領域を確保された上で強みを発揮するファンタジスタタイプのクリエイターなのに、得意でない部分に向き合う時間を増やしてしまい、歯車が上手く回らなかった。
優先順位付けの失敗、人員配置の失敗がじわじわと響き、デザイン業の売上は下がっていった。
今思うと、そもそも経営陣が現場に介入せねば事業成長が出来ない状態だったことが、マネジメントを放棄していることの証拠だった。
複数のメンバーの離脱
もう一つ、この半年間に複数のメンバーが組織からの離脱を表明したことも、危機感を覚える大きなきっかけになった。在籍期間が長いメンバーも短いメンバーも含まれるが、思いもよらない形での離脱が続き、組織をかえりみる必要性を痛感した。
まだまだ未熟な社長の僕にとって、社員の離脱宣言はやはりダメージを受ける。様々な理由があるのはもちろんにせよ、少なからず組織、そして、社長である僕自身に改善点があったことを直視しなければならない事実だからだ。
そこで振り返って気づいた課題は、「社員メンバー一人一人への向き合い方に明確な方針を持てていなかった」ことと、「組織風土の改善を怠っていた」ことの2点だった。
当たり前だが、メンバーはそれぞれ経験もスキルも、人間性も異なる。マネージャーは、その一人ひとりに最適なサポートを与える必要がある。
僕達のような小さなベンチャー企業にとって特に重要なのが、メンバー個々の曖昧さ耐性の把握と、それに伴った仕事の任せ方だ。
生まれて間もない、組織が整っていない会社では、ルールや明確なやることが決まっていない領域ばかり。階層に関わらず、社長含めた全員がプレイヤーでもあるので、メンバーへの指示に適切な時間を掛けられず、内容が曖昧だったり、そもそもなかったりする。
そのため、個々人が自分の頭で考えて、やるべきこととその優先順位付けを判断して動く必要がある。とはいえ、曖昧な状況で自分で意思決定して動くことができる人もいれば、何をしたら良いかわからない人もいる。
(これは持って生まれた能力というより、前職での仕事経験によるものが大きいと考えている。)
だからこそ、個々のメンバーの状況を把握して、適切なロードマップを引いてマネジメントへ向き合う必要があった。よく言われる、「コーチングとティーチングの見極めのポイント」もこの部分だと思う。もちろん僕達は、こんな丁寧な運用は全くやってこず、「はい、どうぞ。やってみて?」でここまで来ていたからほころびが生まれたのだ。
社長含む全員がプレイヤーである組織の初期段階では、「曖昧さ耐性が低い人」に時間をかける余裕が無いので、「曖昧さ耐性が高い人=自主的に動ける人」だけが残っていく。
▼曖昧さ耐性に関しては以下の記事が参考になる
だが、事業を拡大し、組織を大きくすると決めたのであれば、「フェーズが異なるメンバーの一人ひとりが再現性を伴って活躍できる環境」を作ることから目を背けてはならない。
重要なことは、その環境作りには膨大な時間を要するということ。
個々の曖昧さ耐性の度合いに合わせ、丁寧に情報を整えて、やるべきことを明確化し任せ、成功体験を積んで、ステップアップしてもらう。
それを全て自分一人でやりきることは出来ないので、組織を階層に分け、マネージャーの職務を明確化する。まさに組織開発だ。
これを実行するためには、自分はプレイヤーから卒業し、組織開発へ注力しなければならない。
プレイヤーから卒業するというのは、短期的には売上を下げることに直結する。だからこそ判断が難しく、今まで後回しにしてきてしまったのが事実。
そんな中で生まれたほころびだった。まだ組織の崩壊までは達していないが、その小さな予兆を感じた。
こんな話は、成功したベンチャー企業の自叙伝等で必ず出てくる。「そういうもんなんだなぁ」と実感なく読んでいた状況に、自分が置かれる日が来るなんて感慨深い。笑
だけど、会社が大きくなっていく過程で起こる問題は、大体どこも一緒だという事実には心が救われる。改善策は必ずあるということを、大きな会社を作り上げた人達が証明している。もちろん自分自身の成長が不可欠ではあるのだけど。
短期を捨て、中長期目線に切り替える
2024年は、組織開発への注力を決意するに伴い、中長期の成長に目を向け、一気に社員を増やすことにした。7月までに社員数が25名になる想定で採用活動を進めている。
今までは最少人数で運営し、経営陣の稼働で補うという考え方だったのを変えていく。経営陣の稼働で補えば人件費は削減できるが、その間に失うものも多い。
自分の時間は組織のもの。メンバーのものであると考えて、自分が稼働してなんとか売上を立てる、という短期的な目線から脱皮しなければならない。
今まで、夜お店にシフトインしていると、「社長なのに現場に出ていて偉いね。」と言われることもあったが、ただやりたくて現場に出ていたので、全然偉くない。むしろ、マネジメントへ集中するための人材投資を後回しにしている結果だったので、事業成長の足かせになっていたかもしれない。これからは減らしていく必要があると考えている。
とはいえ、人を増やしてすぐ売上が上がる訳では無いので、向こう半年〜1年間は投資期間になるだろう。先々の成長を見越して、短期利益を捨て人材投資を行うというのは、なかなかヒリヒリする意思決定だ。
会社もそういう規模になってきたということで、経営者として大きな成長が必要とされる。今の自分の能力値ではこなせないので、がんばらねば。
正直に言うと、社長としての自分の振る舞いの正解はまだ見えていない。
コーチングに徹したいと思いながら、すごい勢いで口を挟んでしまったりする。待つ、と決めたのに、すぐに介入してしまうことも多い。
僕自身も会社員時代にリーダーやマネージャーの職務を経験したことがなかったので、まだやり方がわかっていないし、自制が出来ない。とりあえず片っ端から本を読んで、先輩に聞いて勉強している。(おすすめの勉強方法があったら教えてほしいです。)
今まで自己成長に向けての本ばかり読んでいた自分が、組織とか他者に関する本を読むようになるなんて、人は変わるものだなとしみじみ実感している。
急激に情報を入れていることもあり、最近は社員メンバーとの距離感も、どの程度が最適なのか、よくわからなくなってきた。笑
色々な社長の提言を見ていると、距離が近い方が良いという人もいれば、距離を置いた方が良いという人もいる。
僕達の会社では何がベストなのか、自分に合うやり方を模索している最中だ。
それにしても、たくさんの社員を抱え、売上を伸ばしている経営者は本当にすごい。心から尊敬する。経営者は、圧倒的な徳を積んだ人じゃないと務まらないと日々実感している。
僕がそんな風になれるのか。とりあえず目指して努力はしていこうと思う。
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