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【映画/感想】『正欲』

【正しい欲】

様々な欲望が垣間見える映画でした。
そして登場人物でも小児性愛者で性的暴行を加えていた矢田部以外は間違った倫理観で動いていないと感じました。
しかし誰一人として幸せになることなく終わる不思議な映画。
欲求を満たすことが果たして正しいのか。

気になったポイントごとに感想書いていきたいと思います。

①佐々木/桐生

学生時代に何となくお互いが同じ嗜好である事を感じ取っていたこともあり、大人になって再会してから秘密を打ち明け、共存する事になる。

欲を曝け出すとこの世界では生きていけなくなる。だから夫婦っぽくして、仕事して普通っぽく生きる。そんな彼らがお互いを信頼し始めたタイミングでSNSのやり取りを通して同じ嗜好の人がいる事を知り、佐々木が外の世界と繋がりを求め始めます。

そんな矢先の誤認逮捕。(正確には事情聴取?)
きっとここで佐々木も桐生もこの世へ絶望したのだと思います。

僕はここで2人に「死」への欲求が再び芽生えたと感じました。
ホテルでのシーンで佐々木の購入品をみて桐生が「そのガムテープでは無理だよ」的な事を言っており、やり取りから2人とも死への願望をどこかで抱いていたのだと思います。そんな2人がお互いを曝け出し、この世界で生きる意味を見つけ出しつつあった矢先に結局世の中から淘汰されてしまう。

こんな世の中で生きても意味がない。
聴取のシーンから僕はそんな雰囲気を感じ取りました。

②寺井

決めつけがかなり酷い人物だが概ね言っている事に正しく感じます。
職業上「異常」な人間を散々見てきたから「普通」を求める。

検察官として、父親として普通でありたいと願っているだけなのに。
一番共感を生むキャラクターのはずなのになぜか共感はできない。
正しい事しか言っていないはずなのに終始孤独な感じがしました。

「学校に行って学べることもあるのでは」
「他人がずけずけと家に上がりこんでくるのはどうなんだ」
「動画配信サイトで子供をターゲットにした犯罪が起きそうだから
 これを機にやめてはどうだ」

家族を守るための行動や言動だったのに孤立していく。
挙句の果てには息子からの「お母さんをいじめるな」という言葉と蔑んだような視線。ああ、この家族終わったんだな。と悲しくなったシーンでした。

ラストの聴取のシーン。
寺井は佐々木・桐生から死の匂いを感じ取ったのではないのでしょうか。散々異常者や犯罪者を見てきたからこそ、この後の行動も何となく察する事が出来る気がします。普通を押し付ける事で多くの人の人生を奪ってしまった。

そんな後悔の念がラストの扉が閉まるシーンに投影されていたのではないでしょうか。

③由美/泰希

個人的に一番モヤモヤしたのがここの人物描写でした。
少し飛躍した話になるかもしれませんがご容赦ください。

寺井家の一連の流れは由美の傲慢さが目立って仕方なかったです。
もちろん不登校である泰希をなんとか元気にしたいという親心には共感は出来ます。しかし、いくつも腑に落ちない点がある。

まず、自分で動かない点です。
子供たちのYoutube投稿を半ば強引に進めるがルールを把握しようともしていない。全てNPO団体のスタッフである右近に任せきり。
その後、チャンネルが停止された際も詳しい理由は啓喜に言われるまで知らない。

この姿勢が果たして応援している事になるのか僕には疑問でした。
意地悪な見方をすれば啓喜と離れるためのきっかけにしたかっただけでは?
とも感じました。


【最後に】

一生自分を曝け出せずに生きていく事になるなら、その心労は計り知れないものなのだろうなと思いました。同時に同情する行為も必ずしも正しい訳ではないかもしと思うと本当に難しい問題だと感じました。

感想書いていてもまとまらないくらい、難しいテーマでした。
多分一生明確な答えは出ないと思います。
その時々で対話していくしかないのだと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
ゆるーく更新していきますので今後ともよろしくお願いいたします。

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