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どんなスパンで人生をみるか

どんなスパンで人生をみるか

【小さな自給・小さな暮らし】
何が起こっても生きていける、安心で、自由な暮らし。お金がなくても、場所がなくても、小さくはじめられることから。日記のようなフォトエッセイ。

中学生の頃から、その地に住むと決めて、花園をつくると決めていた少年がいた。その少年はいま80歳を超える老人となった。その庭園はその人一人で60年以上の歳月をかけてつくった花園。今では、毎年全国からリピーターが訪れる知る人ぞ知る観光ガーデンとなっている。

僕たちにしてみたら信じられない年月だけれども、「あれは40年前に植えた紅葉だよ」「あれは、60年前に植えた松だ・・・」と、あまりにも単位が違いすぎる。数年であれば、まだ理解はできるが、もう何十年となるともう想像ができない。それこそ、僕の生きている年数よりも前に植えられたものもある。

そして、今の歳になって「ようやく地獄の釜からちょっと這い上がってきたところだ」と楽しそうに言う。これからようやくプラスになっていくのだと。もちろん、それは謙遜であるのだろうけれども、でも、そのガーデンはまだまだ進化していく。毎日毎日、5年、10年のスパンで考えているので、まだまだこれからさらに良くなっていくことは間違いないのだ。もうその仕掛けは既に終わっているのだから。今は、さらに5年先、10年先の仕事に取り組んでいるのだ。

だから、毎年毎年、毎日毎日もちろん庭園の整備はしているけれども、でも、価値が下がっていくことはなくて、毎年毎年段々と価値は上がっていく。「今が一番いい」それを繰り返していることが本当にすごいな、と思った。話している姿もとても楽しそう。だって、これからが一番いいのだから。

毎年どうなるだろうか? と不安を抱えながら何かに取り組むこと、そういう仕事が多い中で、毎年毎年価値が上がっていく、楽しくなっていく、そんな人生を送れたら最高だな、ってその人を見ていて感じた。

もちろん、庭園をやるということは、その土地で生きていくという覚悟を決める必要があった。そういったことはなかなか真似できるものではないし、彼の子ども頃の環境がそうさせたのかもしれない。でも、中学生の時にそれを決めたから、他の人には真似できない、歴史を作ることができたし、何十年という時間をかけることができた。そして、いつでも、5年先、10年先の未来を見ながら仕事ができる。

そういう生き方もいい。素敵だ。そして、すべては「自然から学んだ」と言っていた。学歴もないし、誰も後ろ盾、教えてくれる人もいない中で、すべては自然から自分で学んだのだと。

ようやく4年くらい経って、僕も家の裏庭のハーブガーデン(そう呼んでいるだけで、小さな小さな一画)が理想の形になってきた。基本は多年草だけなので、もうこれからはある程度勝手に育っていくだろう。これからはようやくプラスになっていく。

これまでは、芽が出なかったり、寒さや雪にやられてしまって、思うようには育たなかった。それが今年になってようやく成長してくるものもあり、ようやく育って欲しいものが育つようになったのだ。それでも4年近くかかった。長かったのか、それとも短かったのか。

多くの人が目の前の利益、結果にこだわる時に、そうやって長いスパンでの利益、結果を考えながら生きていくというのはきっと難しいことだろう。その男性は他の人とあまり会う機会、比較する機会がなかったというのもよかった、という話をしていた。

競争社会は短期決戦が多い。でも、自然はもっと長いスパンで進んでいく。どちらがいい悪いではなく、どちらもそれぞれ生き方がある。でも、人の人生が100年の時代になった時に、もっと長いスパンで人生を考えてみること、長い時間をかけて何かを創造すること。そういうのも楽しいのではないか、と思う。

4年かければ、素人でも、気にいるガーデンができるのだ。だったら、もっともっと時間をかけたらもっともっと素敵なガーデンができるかもしれない。そして、それを既に現実にやっている人がいて、そこがめちゃくちゃ素敵な庭園となっている。とても勇気をもらうことができる。ちゃんと時間をかければきっとこんなにも素敵なものを人間は創造することができるのだと。

その男性ももう80歳、まだ80歳? いつまでその庭園が続くかわからないけれども、でも、これからが見ごろで、さらに来年はもっと綺麗になっていて、10年後が楽しみで仕方がない。そんな風な生き方に憧れるのは僕だけではないだろう。

どんなスパンで人生をみるのか。もう一度考えてみたいと思う。自分が一生かけて、これからの残りの人生をかけてでもやりたいことはなんだろうか、と。

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