どうして日本ではこんなに大学進学にお金がかかる? 〜立ち止まってもう一度考えたい大学入試制度
こんにちは。
元大手進学塾トップクラス担当講師で、
現在はニュージーランド在住の受験&国際教育コンサルタントのTakuです。
ネットでニュースを見ていたら、
こんな記事を見つけてつい読んでしまいました。
この記事を読んでいてつくづく思ったのが、
日本の教育には本当にお金がかかるなという点です。
そうつくづく考えるのは、
今私自身が日本とは全く異なる教育制度を持つ、
ニュージーランドで子育てをしているからです。
そこで今回はニュージーランドの大学進学の仕組みを、
簡単にご紹介しながら、
日本の大学入試について考えてみたいと思います。
ニュージーランドには大学入試がない
私の下の子供は今年高校3年生で、
来年に大学進学を控えています。
大学への出願は全て終了し、
今は年度末に控えている全国統一試験に向けて、
最後の準備をしている…というわけでもありません。
ちょうど今こちらでは春休みにあたっていることもあり、
もちろん試験対策の勉強はして入るものの、
受験生にはとても見えないのんびりぶり。
何故そうなのかといえばニュージーランドには、
大学入試というものが存在しないから。
日本の一般入試のような学力テストはもちろん、
推薦入試のような書類審査や小論文、
あるいは面接といった試験も存在しません。
きっとそんな素朴な疑問が湧くと思いますので、
ニュージーランドの最高学府オークランド大学の、
理学部に進学したい場合を例に挙げて説明します。
ニュージーランドで大学に進学する際は、
原則高校3年生の成績のみで決まります。
そう聞くと最高学府の理学部進学なら、
成績はほぼオール5でなければダメだろうと思うかもしれませんが、
現実は評定平均3.2程度で十分です。
基本的にこの評定さえ取れていれば、
まず不合格になることもありません。
こんなに甘いならさぞ高校の勉強が、
大変なんだろうと思うかもしれませんが、
実はそんなこともないのです。
そもそもニュージーランドの高校3年生は、
5科目しか学校で選択しませんし、
その全てが選択科目です。
この理学部進学のケースで言えば、
文系科目(英語含む)は選択の必要がなく、
自分の得意科目だけ試験を受けられます。
それも受けた試験のうち、
上位80%程度の科目の成績のみが、
評定計算の対象になるのです。
因みにオークランド大学は世界ランキングでは、
毎年150位以内にランクインしており、
日本では東大・京大・東北大に次ぐランク。
このレベルの大学にこの程度の学習で、
入学できてしまうのがニュージーランドの教育です。
入試がないメリット ① お金がかからない
ニュージーランドで入試がない1番のメリットは、
やはりお金がかからないということです。
学校の勉強だけ人並みに頑張って評定平均3強取れば、
最高学府の大学に無試験で進学できる。
だから塾も家庭教師も必要ありませんので、
教育費が十分に用意できない家庭でも、
大学進学をさせてあげることが可能です。
さらにそれに加えて出願料も無料ですし、
入学金も存在しないので、
家庭には本当にありがたいシステムです。
年間の学費も医学部などの特別な学部を除けば、
70万円から90万円程度で済みますし、
経済的に厳しい家庭には給付型奨学金もあります。
(最大年間60-70万円程度が国から支給)
入試もなく入学金もない上に、
必要なら学費を補えるレベルの給付金もある。
だからニュージーランドでは原則、
お金がないから大学に進学できないという事態は、
滅多に起こらないのだと思います。
入試がないメリット ② 自分の好きな学習に集中できる
日本の入試学習の最大の問題点は、
「受験のためだけ」の学習を強いられる点にあります。
入試問題で問われている知識の多くは、
受験が終わった後では教養程度の役にしか、
立たないものが多い事は多くの方が経験済みでしょう。
入試さえなければ覚える必要もないものを、
入試があるから膨大な時間をかけて学習するしかない。
でももしそんな学習をしなくて済むなら、
もっと自分が好きな学習や大学進学後に、
本当に必要なことを学ぶことができるはずです。
ニュージーランドの高校生を見ていると、
その時間がたっぷり与えられていることが分かり、
自分の高校自体と比べて嫉妬してしまうこともあります。
また受験勉強から解放されたなら、
高校時代に課外活動にもっと時間を割けますし、
自分の好きなことをじっくり考えることもできます。
日本の高校生を指導していて一番心が痛むことは、
彼らが自分が学びたい事すら分からないまま、
受験する大学を選んでいるという事です。
大学名と偏差値と就職実績。
その3つだけをチェックして一番潰しがきき、
コスパの良い進学先を選んでいく。
そんな生徒が今だに少なくないのは、
残念ながら受験がもたらす弊害なのでしょう。
今こそ考え直したい受験教育
もちろん受験の全てが悪いと、
私も思っているわけではありません。
しかしメリットとデメリットを総合的に勘案すると、
残念ながら±ではナイナスの方が多い気がします。
資本主義社会ではどうあっても、
格差は必ず生まれ、それは拡大する傾向にあります。
そしてその格差の中で残念ながら下位に追い込まれた、
経済的に困窮している家庭の子供達にとって、
受験の負担は計り知れないでしょう。
実際に日本の最高学府である東大に通う学生は、
その70%以上が収入750万円の家庭出身で、
半数以上は年収950万円以上の高収入家庭の出です。
これが今の日本の受験教育の実情であり、
受験はフェアだという論調が虚しく聞こえるのは、
私だけではないのではないでしょうか。
そして何よりもこの受験教育について、
Z世代の多くの学生が低い評価を下している点も、
決して見過ごしてはならないでしょう。
明治時代にその端緒を持つ日本の受験制度は、
これまで長い間日本の発展に貢献してきたことは、
私も心から認めるところです。
しかし時代の変遷を経てそのシステムには、
様々な弊害が生まれ、機能不全に陥っています。
VUCAの時代と言われる今こそ、
今まで当たり前だと思っていた受験制度について、
改めて見直してみる時期になったのではないか。
私は今そんな気がしてなりません。
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