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遠隔授業に向けた研修にて

3月の休校期間は今まで使ってきたシステムで対応できてしまいました。

校内SNSのTalknoteでの連絡ややり取り。ロイロノートやMetaMojiを使っての教材の配信や課題の回収。Google Suitesも使えるので,データのやり取りも簡単。新たに何かを導入しなくてもほとんどのことは出来てしまった感じです。

4月も休校が延長され,いよいよ本格的に遠隔授業を実施しようということで研修を行いました。各校でもちろん環境は違うのですが,うちではこんなことをしましたよということで参考になれば。っていうか,もっと早く出すべきだったか。

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まずは前提。

「通常授業と同じ質にはできません」

どれだけ頑張ったとしても教室に先生も生徒もいてという通常の授業と同じことはできないということは納得していただきたい。遠隔で出来ちゃうのであれば,そもそも学校に生徒が通ってこなくてもいいってことになってしまう。(そういう授業だったら私たちの存在意義って何?)あくまで緊急時の対応としてできるだけのことをやりましょう。

「リアルタイム配信(zoom)は限界あり」

新しいテクノロジーに過度な期待をしないことも大事です。「海外ではすべての授業がzoomで可能らしい」「○○学園はzoomで6時間授業やるらしい」なんて話を耳にするかもしれません。でもこれからやってみるとわかるけれど,遠隔授業は先生にも生徒にもなかなかストレスのかかるものです。いつも通りと言う訳にはいきません。限界はあります。

「動画と各種サービスの使いどころを考えよう」

リアルタイムの遠隔授業は,学校とご家庭の通信環境的にも,授業運営としてもかなり難しい。だから既存の動画や新規で自分で撮影する動画を用意する。それで足りないところはリアルタイム配信や今まで使ってきたサービスを組み合わせてみる。先生も生徒も無理をしすぎないような授業設計を考えようと伝えました。

正直,個人的には4月だけ乗り切ればまた通常授業が再開するとは思えません。さらに延長するような事態も考えられますし,休校が終わっても時差通学や短縮時間割などの対応が求められるでしょう。そうなると遠隔授業が日常的に継続できるようにしないと辛い。

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では動画の配信どうしましょうか? 大きく4つのパターンがあると思います。講義を収録しての配信がたぶん一番簡単で,話題のzoomを使ったリアルタイム配信が一番難しい。それぞれメリット・デメリット,やり方は後ほど説明しますが,リアルタイムで全部やろうなんて言うのはあまりオススメできません。

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いろんなスタイルあってもいいと思いますが,基本的な考え方としてこんな組み合わせではじめてみてはどうでしょう? 3〜15分の説明動画,これは既存のものでもいいし,自分で撮ってもいい。そしてロイロやメタモジで課題を配布。これはTalknote使ってもいい。これであれば決められた時間に全員ネットワークに接続できなくても大丈夫。課題に取り組む時間はだいたい決めておいて,指定された日時までにやった課題を提出。何時何分から50分が〜の授業のようなしっかりした枠ではなくて,どちらかと言うと,何曜日の午前中はこの教科の勉強しましょうという設定で取り組めるような設計がいいのかな。

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なんでそんな緩い設定を考えるのか? 全員が同時に受講することが難しいからです。まず,全世界的にネットワークへの負担が高く繋がりにくいという現状。さらにzoom等のシステムも現在利用率が高くてダウンすることもあります。またそれぞれのご家庭によりネットワークの環境が異なるので,指定した時間に必ず接続できるのかもわかりません。リアルタイムの50分配信での授業を毎日毎時間続けるのは非現実的です。

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だからやはり現実的には,リアルタイムでなくても見られる動画の配信と今まで使ってきたツールやサービスを使っての授業作りを前提にまずは考えましょう。

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では,最も取り掛かりやすそうな①から。

①講義収録を配信

教室でふだんの授業で行うような講義を撮影します。机にiPadやiPhoneなどを設置する。ビデオカメラをわざわざ用意しなくてもかまいません。撮ったのは前後の余計なところだけトリミング(削除)して,そのままGoogleDriveやYouTubeに保存。リンクを生徒に配信して視聴してもらいます。

メリットは,ほぼふだん通りの講義をすればいいこと。(それが良いのか悪いのかは置いといて)。ただ,50分喋り倒すような授業を今時してる人はいないだろうけれど,動画であれば15分が限界だと思います。それ以上は見てられない。集中が続きません。こちらも目の前に生徒がいないので反応がわからないからやりづらいので,そもそも15分以上テンションが保てるのか。

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②画面収録を配信

iPadやパソコンの画面を使って説明しているところを収録。収録しながら喋った音声も録画できます。①の講義収録だと教室じゃないと難しいですが,これだと画面だけの録画になるので,職員室でも自宅でもどこでも(ある程度静かなら)作業できるのは良いですね。当然,板書中心の説明形式になり,自分の姿は映りません。それがメリットでもありデメリットでもあります。自分が映るとなるとそれなりに準備(?)が必要ですが,映らないとなると,頭ボサボサでも部屋着でも良いといえば良い。一方で,やはり先生が映らないと緊張感に欠けるので,より短い動画が求められるというのはデメリットでしょう。

<実際の研修ではここで画面収録の設定や方法のマニュアル動画を紹介>

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動画の長さを短くと拘っているように聞こえるかもしれません。その通りです。生徒の動画への関わり方って,「スキマ時間にスマホで視聴」が基本です。じっくり数十分,大きなモニタで見るなんてことはありません。なんなら倍速で,つまらなかったらどんどん早送りで,ということに慣れてしまった生徒に見てもらうとしたら,どう考えても短い動画にするしかありません。

ジングルとかBGMとか字幕とか色々工夫して長時間見てもらう努力をするのもいいかもしれませんが,それなら中身を工夫することをオススメします。努力が割に合いません。

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③は紹介しますがオススメしません。

生徒には授業で紹介して実際に合成動画を作っているので,生徒は実はみんなできます。思っているより簡単に出来ますが,それだけやっても見た目すごい感じがしますが,最初だけで,労力使ってもそれだけ生徒が「お〜」ってなるかというと・・・。ご興味あれば。

<ということで,授業で使ったマニュアルの電子書籍を紹介>

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さて,最後の④zoom授業。画面を通してとはなりますが,リアルタイムに生徒の反応も見ながら,質問なども対応しながらの授業が出来ます。とはいえ,30〜40名の生徒を対象とすると,教室でやるのとは全く勝手が異なるのでこちらもかなり習熟しておくことが求められます。接続できない生徒,音声が聞こえない生徒,動画が映らない生徒,そんな対応もしつつの授業となるので難易度高いです。

<ここからzoomのデモを行いました>

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では,まずは先生同士の会議などで使ってみましょう。先生側・生徒側,それぞれの立場で経験しておくことが大事だと思うので,立場を変えながらやってみるといいと思います。くれぐれもいきなりこれで50分フルに授業やろうとは考えないでください。

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最後に本日のまとめです。

今後,休校が解除されたとしても,今までと同じ時間を使って以前と同じ授業が出来ると思いますか? どう考えても,今までより少ない時間しか使えないはずです。では,その時間を使って,どうしても必要なこと,教えなくてはいけないことって何なのでしょうか? 実は実際の授業がなくても何とかなることもあるのかもしれません。

zoomは便利です。使いこなしている方もいますが,今の私たちはまだ初心者です。ネット上で40名集まって50分の授業を教室でやるように行うのはほぼ不可能です。どうしてもお互いに顔を合わせてやりたいことって何でしょうか? ここでも本当に必要なことはどんなことなの?ってことが求められています。

いつでも見られるような動画と今まで使ってきたツールやサービスの組み合わせでできることを考えてみましょう。無理に新しいものを導入しなくてもいいのではないでしょうか?

今回のコロナ騒動で学校のあり方,先生とは?,授業とは? そんなことが改めて考えられるようになりました。休校が解除されて,またみんなが学校に通えるようになって,その時に以前と全く同じ状態に戻るのでしょうか? 授業や先生や学校といったものが変わっているかもしれません。

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