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赤いハナ

大きな木が無数の赤い花を纏っている。
柘榴だった。
神社の脇の奥まった所に聳え立つその木の、背後には古い二階家がある。
右の方から二階の窓の一部が見えてはいるが、建物のほとんどは木に隠れている。

その窓は、いつだって開いていた。
そんなはずはないのだが、僕が通る際には、いつでも開いていたのだ。
開いた窓には、いつだって女性がいた。
そんなはずはないのだが、僕が見る際には、いつでも佇んでいた。

若い静かな暗い女性だ。
ハナという名だと、ある人が教えてくれた。
ハナはいつでも、赤い服を着ていた。

今、その窓にハナはいない。
多分、その家のどこにもいないのだろう。

秋になると、大きな木は赤い実を纏う。
木は随分と奥まった所にあるので、花なのか実なのか一見、区別がつかない。
実の方がしかし、花よりも赤いような気がした。

冬になると、木は木だけになる。
窓が一番よく見える季節だ。

そしてまた木は、葉を纏い、赤い花を纏う。

そんなサイクルが何度も繰り返されたが、僕がそこを通ると、いつだって窓辺にハナがいたのだ。
今は、いないのだけれども。

ある人が言った。
ハナは海辺で泣いていたよ。
赤い涙を流しながら。

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