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桜と後ろ髪

最後の直線

可愛がっているそれを抱え

こちらに手を振るきみ

ぼくも負けじと手を振る

ある程度歩き進めたところで

もう一度きみを見た

まだこちらを見ている

目が悪いぼくは

のっぺらぼうのきみに

大きく手を振る

これが最後だと実感がない

駅にたどり着いたぼくは仕事場へ

いまごろきみは何をしているのか

思い返す間もない

どこか押し殺していた気持ち

相撲のように張り手を喰らう

あと一歩のところで踏み止まる

結局その日は負けなかった

その日の夜

心を逃避行させた

正気に戻る前に呑みに出かけた

何もかも忘れたい

鉄板焼きのイカのように

白が白とわからないものを選び

考えることを遮断し

強い酒で頭を溶かす

絡まった糸を無視しつづけ

千鳥足で壁沿いを歩く

自分とはなんぞや

とんちを解くが如く居座る

ゆきずりの人と沼のように抱き合い

消せぬ想いを抱えてたばこを蒸す

ふと見上げると夜桜が舞い

ひとかけらのピンクが頬をつたう

それは輪郭を伝い

首まできた時に気づいた

己の押し込めていたモノだと

その瞬間に夜は一変し

視界が曇り

常闇へと姿を変えた


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『Kindle出版の経緯と挨拶』

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押し殺した気持ちは開かれる

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