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クレカ鎖国でガラパゴス化が進む日本

藤本 真也

コロナもようやく落ち着き、3年ぶりに日本へ帰国する海外在住日本人も最近増えています。それに加えて円安も手伝って、「日本でお土産爆買いだ!」と意気込んでネット通販サイトに行くとクレジットカードがなぜか使えない。こんな経験されている海外在住日本人の方が2022年になって急増しています。

海外発行カードが使えないニッポン

海外発行のクレジットカードで日本のECサイトで買い物ができないことは以前からありましたが、とうとう2022年8月頃からSuicaやPasmoの補充さえもできなくなってきました。

色々調べたところ、原因は3Dセキュアというオンライン決済時の不正を防止するために使われているシステムのバージョンに起因しているようです。

3Dセキュアとは?

元々のシステム(バージョン1.0)では、ECサイトで決済情報を入れた後にポップアップ画面が出てきて、事前に登録していた秘密の質問の答えを入れることで本人確認を行っていました。数年前にリリースされたバージョン2.0ではワンタイムパスワードや生体認証などより強固なセキュリティ対策が行われるのと同時に、消費者の手間も省けるということで近年欧米では急速に起き替わりが進んでいました。

さらに追い討ちをかけているのは、欧米のカード発行会社が不正発生時に販売店へ売上を補償することを、バージョン1.0を使っている事業者には2022年で終了すると発表しているという背景もあります。

期限が迫るライアビリティシフト

クレジットカード事業の世界では、ある個人のカードが不正利用された場合、その人には決済を行った販売店から返金され、販売店はカード発行会社から補償を受けれるというライアビリティシフトと呼ばれる制度が存在します。このカード発行会社から販売店への補償を今後は3Dセキュアの2.0を使った場合のみ行うと宣言されているのです。

そうなると販売店は3Dセキュア2.0の対応に追われると思われがちですが、現実的には販売店がクレジットカードの処理を依頼している事業者が対応することなので、販売店自身ができることは事業者を変更するぐらいに限られています。アメリカだと、例えば消費者が入力した住所があってたけど郵便番号が間違っている、というのを不正とみなすかどうかは販売店がオンラインで設定を変えることはできるのですが、日本の販売店がそこまで細かく設定を管理しているとは思えません。なので結局カードの処理を仲介しているアクアイア(事業者)がそのさじ加減を調整しているものと想像します。

海外カードが使えない理由

話を戻します。3Dセキュア2.0に移行していない場合、不正があった場合補償が行われないため販売店が損失を被ってしまいます。本来であれば事業者がとっとと2.0に移行すれば良いのですが、あれよあれよという間に多くの海外のカード発行会社が移行猶予として設定した期日を迎え、いよいよ補償がされなくなるというのに未だに移行ができていない事業者が多数存在するようです。「するようです」と書いたのは、冒頭に書いたように海外発行のカードが日本のECサイトでどんどん使えなくなってきている現象が多発しているためです。

つまり日本の事業者の中の会話はこんな感じなのかなと。

  1. 3Dセキュア2.0に移行しないと不正補償が受けられないらしいよ

  2. 移行するのにまだまだ時間あると思ってたのにもう間に合わない!

  3. このままだと不正が起きた時に販売店が補償を受けられなくてうちにクレームが殺到する!!

  4. じゃあ不正補償してくれないカード発行会社はとりあえず全部使えなくしちゃえ

まぁこのような会話がなされているかは分かりませんが、仮に2.0に移行はできていたとしても、事業者が海外発行のカードに対する設定を厳しくしていれば同じ結果になります。ただその場合、今までもっと緩い1.0ではokだったのに、本人確認できる情報が多い2.0の方が信用ならない、というのはおかしいように思えます。

急増する不正利用に対する対策

一つ事業者側の言い分を考えるとすると、paypayを始め日本でもキャッシュレス決済が急に浸透したため不正が急激に増えたということが挙げられるかもしれません。例えば2018年には年末のECサイトでの平均カード利用回数が、その年の他の月平均と比べて1859%増となっています(*2)。このことから、不正に流出したカード情報がダークウェブに流れているということは明らかで、その結果海外発行カードというものに慎重にならざるを得ないと。

ただ別にカードの不正は世界中どこでも起きているわけだし、その中でいかに不正を防ぐかという目的で3D secureなどの技術が発展してきているわけで、「何かあったら不安だからとりあえず除外する」という日本でよく見かける対応が日本のガラパゴス化を象徴しているように思えてなりません。

オモテナシからガラパゴスへ

コロナもやっと落ち着いて、海外から観光客がやっと戻ってきてこれからというタイミングなのに、外国人はsmart ex使って新幹線の予約やお財布ケータイでSuicaのチャージができないから、みどりの窓口に並べと。念願のスーパーマリオワールドに行けるのを楽しみにしている家族連れが、出発前に海外からUSJのチケットを予約することもできない。

これのどこがオ・モ・テ・ナ・シなのか、もうこうなったら政府も絡んでデジタル庁から事業者へ働きかけて一刻も早く修正してもらわないとガラパゴスが加速して手遅れになるかも。こういうのにいち早く気付いて総務省、経産省をDXで横串にするのがデジタル庁ですよね、河野さん


参考リンク

  1. 【22年9月更新】カード決済の「3Dセキュア2.0」とは?不正利用やセキュリティ強化、チャージバック売上補償継続に向けた対応スケジュール

  2. Japanese Payment Card Fraud Contrasts with Regional Patterns

  3. 3D Secure for regulation compliance

  4. Understanding 3D credit card security and how it could affect your trips to other countries


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