【今月の映画(2021年11月)】ビル・カニンガム&ニューヨーク
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この映画を観てから僕は「本当に幸福な人生とは何なのだろうか?」と、真剣に考えるようになった。
本作は、ニューヨークで50年以上ファッションのストリートスナップを撮り続けたカメラマン、ビル・カニンガムの私生活や人生を追ったドキュメンタリー映画である。
スナップカメラマンとして伝説となっている彼は、ニューヨークのファッショニスタ達から「ビルに撮られる事がステータスだ」と言われている。そんなビル・カニンガムのプライベートは全くの謎に包まれていたが、この作品で明らかにされた。
観ていただければわかるが、ビル・カニンガムの頭の中にはファッションの事しかない。
他人のファッションに興味があるくせに、自分の普段着はいつも同じ青の作業着。雨の日のポンチョは破れたところをテープで補修しながら使い続けている。「コーヒーは安ければ安いほど美味い」と言い、50年以上住んでいるアパートの部屋はスナップネガで埋め尽くされており、簡易ベッドが置いてあるだけ。恋愛経験も無く、食にも興味が無い。
ただただ、自分の好きな「ファッション」だけを追い続けてきた人生だった(2016年に亡くなられている)のだ。
僕の中では、この人の人生ほど羨ましいと思った人はいない。
普通の人が思い浮かべるような欲望に一切悩まさられる事なく、自分の好きな事のみを追求した人生。
僕がこの映画を観たのは大学生の頃だ。当時の僕は、幸福とはいわゆる「金を稼ぎ」「良い女を抱いて」「良い服を着て」「良い家を持ち」「幸せな家庭を築いて」、というようなものしか思いつかなかった。
しかし、この映画を見て、「幸福とは、物質的なものでは無くて、内面に宿るものなのだな」と強く考えるようになり、今でもその感覚は忘れていない。
僕の人生観を変えた映画、と言っても過言ではない。
「幸せって何だろう?」と悩む人はこの映画にヒントがあるかもしれない。
何より、この映画を見れば誰もがビル・カニンガムという人を好きになる事間違いなしだ。
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