行きたかった埼玉県研修会
2024.8.25 「令和6年度埼玉県バレーボールスポーツ指導者義務研修会
兼2024年度都道府県別バレーボール指導者研修会」に講師として参加予定でしたが、直前に体調を崩し欠席してしまいました。(写真は埼玉県バレーボールスポーツ指導者協議会のFB記事からいただきました)
研修会の方は、共同講師の杉山哲平先生@札幌市立北白石中学校 に全てお任せして穴を空けずに済みましたが、「私が提供する予定だったこと」をnoteに書けば受講者の方々もは少しは得した気分になるかも?と勧められたので、記事にしてみようと思います。
予定していたのは
1.動作を身につけるのは試行錯誤しかない
2.小中高生女子のブロック指導
の2つでしたが、1.の方は先日noteに書いたことです。
なので、ここでは「2.小中高生女子のブロック指導」について書こうと思います。
小中高生女子のブロック指導
要は、
①小さかったら高く跳べ、体力がないなら持ってる体力を精一杯発揮しよう
②相手の一番強くて得意なスパイクコースを塞ぐことでレシーブが生きる
③ブロックの一番大事な感覚はネットから手が出なくても習得できる
④ブロックはコミュニケーション:ディガーからのフィードバックが鍵
⑤初心者のスパイクジャンプ習得は「スイングブロック」の練習から
ということです。
①小さかったら高く跳べ、体力がないなら持ってる体力を精一杯発揮しよう
奇しくも研修会の時間は、ちょうど「2024女子U17世界選手権」の決勝「日本対中国」が行われているその時間でした。平均身長が10cm位低い日本が中国と戦う中でブロックを頑張るのは、身長もなく体力的にも劣る選手がやるべきことと通じるものがあります。
日本のミドルブロッカーは「スイングブロックを使って早く・高く・遠く跳び、空中で揃える」を徹底し、どんな攻撃にも複数枚のブロックを用意することができていました。そのことについては、参加したすべてのチームの中で一番だったと思います。準決勝のイタリア戦では得点の数を見ると5-15と圧倒的にイタリア優位ですが、あれはどうしようもない状況でそのまま打ってしまったのがほとんどで、むしろ日本の方がほとんどの攻撃に2枚跳んでおり、イタリアのアタッカーがブロックを嫌がってミスを連発する場面が何度もありました。
以下のサイトからリプレイが見れますので、是非ご覧ください。
スタッフと交流があったため、このチームの活動は細かく追いかけていました。中国には及びませんでしたが、チームの素晴らしい戦いを記事に書いていますので、こちらもよろしければどうぞ。
話を戻して、なぜスイングブロックを使うと「早く・高く・遠く」跳べるのか、シンプルに言えば「スパイクジャンプのように助走すれば速く移動でき、腕を振ってジャンプすれば高く跳ぶことができ、空中移動を使えば早く遠くまで辿り着く」ということですが、詳しくはこちらをご覧ください。
例としてU17日本代表、世界を代表するイランのMBを取り上げましたが、これは決して身体能力が高いから出来る事ではありません。むしろ、低いからこそ「使えるものはフルに使う」ことを考えるべきなのです。
②相手の一番強くて得意なスパイクコースを塞ぐことでレシーブが生きる
ブロックの目的は、決して「シャットすること」だけではありません。相手のスパイクで一番強くてレシーブしづらいボールは「床に向けてたたき落としてくるボール」でしょうから、そういうボールは高く跳べなくてもネットからの距離を調節できればどこかで必ず触ることができます(ネットの高さまで手が届かなければブロックとして認められずレシーブになってしまいますが)。それでブロックを2枚揃えられれば、「一番得意なところへは打てない」という状況を確実に作ることができ、レシーブ優位に持ち込めるでしょう。高さがないからといって、決して役に立たないことはないのです。
③ブロックの一番大事な感覚はネットから手が出なくても習得できる
ここで、一番重要なのは「相手のスパイクの軌道を予測し、それに自分のジャンプの位置とタイミングを合わせる」ということで、それを全力の助走と踏み切りから実現できるようにしたいわけです。そうすることによって初めて「最大限に有効なブロック」ができることになります。これはなかなか簡単ではありませんが、だからこそ感覚的に早い時期からつかんでもらいたいわけです。
「感覚をつかむ練習」ですので、ネットから手が出ない、なんならジャンプが全くできない人でもできる練習を紹介いたします。
この図のように
・ネット越しに、ネットの少し上から(台上とかで)、一定のトス(打ち手が自分で手上げ)で、一定の目標に向かって打つ
・列になって一人ずつトライ[1]、前の人のトライをネット際で見て、位置とタイミングをイメージする[2]
・その順番が来るまではレシーバーの視点も体験できる[4]
といった感じで進めます([3][5]は待機。スパイクコース上の3本の横線は、高さによってブロック面の位置を選ぶということを意味しています)。
獲得したいのは「接点を予測して、そこに自分の体を持っていく能力」です。「ネットの中央から接点に向かって移動し、適切な位置を取る」経験は、たとえ移動速度が遅くても、スイングブロックやそれを利用したリードブロックにとても役立ち、適切な位置取りを自分で判断することは、すべてのブロックにおいて必要です。よって、[2]で「いつどこに、自分は手を出せばいいだろう?」と想像することが大事なのです。
④ブロックはコミュニケーション:ディガーからのフィードバックが鍵
また、[4]の位置からブロッカーにフィードバックすることをとても重要視しています。ブロックの位置が良かったのか、右にずれていたのか左にずれていたのか?これはボールが手に当たればまだ分かるのですが、なかなか分からないことが多いのです。位置が合っていても、タイミングが早すぎたり遅すぎたりでボールに触れないこともあります。さらに、打ったスパイクが高すぎたり、コースが予定と違っていたりと「試行錯誤としては正解に近づいていたのに、結果としては失敗」ということがよくあります。
上手くなるためには「試行錯誤が成立する」ことが必須なのに、外からのフィードバックがないとそれが難しいのがブロックだと考えています。後方から「右」とか「左」とか「早すぎた」とか「OK!」とか「今のはスパイクミス」とか短く声をかけられるようにします。それが「トータルディフェンス」の基礎ともなります。ディガーがブロッカーの行動を評価しようとすると、ブロックヒットの瞬間にどうなっているかを期待しながらディグの準備をすることになるので、急にディグが上がるようになることはよくあることです。
ブロックは「出来栄えの評価」がとても難しく、評価基準は「ここへは打たせないといったディガーの想定を裏切らないこと」が一番妥当だと考えています。ディガーから見て「これだけのことはできるはず」ということをちゃんとやってくれているかどうか、普通に評価される「ブロックポイント数」のような「成果」ではなく「やるべきことをさぼらず全力でやったか」という「行動」で評価するべきだと考えています。
⑤初心者のスパイクジャンプ習得は「スイングブロック」の練習から
これはもうこちらをご覧いただければ十分だと思いますが、「スイングブロックは難しいから、初心者には『正対して止まって真上に跳ぶ』しか求められない」なんて大嘘だと思います。ネットに正対したままサイドステップで移動して真上に跳ぶとか、よほど窮屈で難しい動作だと思います。説明する方としては簡単かもしれませんが。
こちらの動画を是非見ていただきたいのですが、初心者とおぼしき小学生も含めてとてもいい練習ができていると思います。実は、「スパイクジャンプ」と「スイングブロックのジャンプ」は踏切りまでの動きとしてはほとんど同じなんですが、「スパイクジャンプ」の方がいろいろ難しいんですよね。そしてそれを形として教えようとすると、ぎこちないわざとらしいフォームになることはよくあることだと思います。
ボールとの接点を見つけるために
・床の平面のどこで跳べばいいか(スパイクジャンプ):平面上、かつ「飛んでくるボール」が基準
・ネット際のどこで跳べばいいか(スイングブロック):直線上、かつ「動かないネット」という目標がある
この違いはかなり大きいです。目標にめがけて思い切り跳ぶことがジャンプの感覚をつかむのには重要だと思います。
これも、別の知り合いの方の動画で見たのですが、スパイク練習だとステップのリズムもフォームも無茶苦茶だったのが、スイングブロックの練習だとちゃんと踏み込みのリズムがあって様になっていました。また、ブロックで右方向に移動する時、右利きのプレイヤーにとってはいわゆる「逆足」の踏み切りになりますが、上の動画のようにステップを合わせて2人で跳ぶのを繰り返していると、「逆足踏み切り」を難なくできるようになるプレイヤーがほとんどです。つまり、「スパイクの逆足を治したい」と思ったら、「2人でスイングブロック」がいいのではないか?ということです。
後は「空中で、ブロックヒットの瞬間にネットに正対している」ことができればいいわけですが、やってみれば難しいことはありません。スパイクに比べてはるかに単純な動作です。
「スイングブロック」は「スパイクジャンプの踏み込み」を覚えるよりずっと簡単、むしろその導入として使うことオススメします。
以上、小さいからこそ、非力だからこそ、動作感覚を覚えるのが大事な時期だからこそ、「スイングブロック」をやっていただきたいというお話でした。
ご意見、ご質問をいただければ幸いです。
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