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"会社員"と"フリーランス"では、どちらが優れているのか?

「フリーランスvs会社員どっちがいいの?」論争について書きます。

IT業界では、「フリーランスエンジニア」という働き方があります。自由に時間と場所と仕事を選べる個人事業主としての働き方です。素敵な働き方ですね。

私が運営するITスクールにも多くのフリーランス志望がいます。

しかし、フリーランスと会社員の違いを理解せず、盲目的に会社員への嫌気からフリーランスを選択する人が多い印象を受けています。そこで、しっかりとその違いをまとめようと思いました。

"会社員"と"フリーランス"では、どちらが優れているのか?

結論、この問いには答えがありません。
価値観次第で、この問いの答えは変わります。

ある人にとっては、"会社員が正解"であり、ある人にとっては"フリーランスが正解"なのです。「答えになってないではないか!」と言う声が聞こえてきますが、どのような思考課程を経てこの結論に至ったのか説明します。

非常に長くなってしまいましたがお付き合い下さい。特に、フリーランスを目指したいと思っている方には、この記事は一つの判断材料になるかと思います。

ここからの主張は、あくまで個人の意見です。この記事を絶対無二の正解とするのではなく、あなたの判断材料の1つにして頂けると幸いです。転職や独立は、人生を大きく左右する決断になります。人の意見に惑わされず、自分にとって何が一番大事なのかを考えることをどうか放棄しないで下さい。

筆者より

では始める前に、偉そうに語る私の経歴を紹介します。
私は、これまで個人事業主・会社員・起業、一通り経験してきました。
順番は「大学卒業→個人事業主→起業→会社員→起業」です。(少し変わってる人です)会社員とフリーランスの両方を経験した身として、普通の人よりは俯瞰してこの論争についてコメントできると思います。それでは行きましょう。

はじめに

私がTwitterのタイムラインを見ていると以下のようなことを発言している人がいます。

#フリーランス派
「フリーランスの方が働きやすいし、ストレスがないから楽だ!」
「フリーランスは、節税ができてお得だ!」
#会社員派
「会社員は安定しているからフリーランスなんて不安定で危険だ!」
「フリーランスは会社員の頃の2倍の給料を稼ぐ力が必要だから大変だ!」

Twitterより

こういう意見ばかり見ると以下のように思う方がいるでしょう。

「フリーランスの方がいいのではないか?」
「このまま会社員でいいのかな?」
「サラリーマンの年収の2倍なんて稼げない。。」
「フリーランスなの?会社員なの?ほんとはどっち??」

まずは、色々な意見に対する私の見解を述べます。
両者の言っていること自体は両者ともだいたい正しいです。

「どういうこと?」と思うかもしれませんが、フリーランス推奨派と会社員推奨派の意見はそれぞれ的を得ているのです。つまり、両方が正しい意見を言っていてそれが矛盾していない状態なのです。だからこそ、多くの人は結局どっちが優れているの?とわからなくなってしまいます。

ということで、多くの主張をこれから3つの評価軸で比較してみようと思います。私が勝手に作った評価軸は「金銭・保証・業務」という3つです。勝手に作ったので、六法全書に書いてあるわけでもありませんし、RFCにも書いてません。(エンジニアの例えですみません)

金銭的な評価軸

まず、はじめに金銭的なことをお話しします。
フリーランスと会社員の給料を純粋に比べるのは少々無理なところがあるというのが私の主張です。会社員には、給料には反映されていないお金が多々存在します。額面だけでは比較できないのです。

例えば、会社員は交通費が支給され、保険料を会社が払い、iDecoなどの積み立ても会社が一部負担してくれます。もっと言えば、出社するオフィスの家賃、水を飲む際のウォーターサーバー、出張費、PCなどなど本来無料で使うことのできないものを会社が購入しているのです。この部分は会社員の給料には書いていません。(会社の備品使用代=3万円、みたいに書いてあったら比較可能だったかもしれません。)

それに比べて、フリーランスはどうでしょうか?

もちろん、交通費は自費です。(クライアントが負担してくれる場合もあります。)オフィスは、家 or ワークスペースを契約し、水、PCなどの備品も自費で揃える必要があります。保険料も自分で納めなければいけませんし、退職金がない分、NISAなど自分で稼いだお金をなんとか資産運用しておく必要があります。

その結果、「フリーランスの給料は会社員の給料の〇〇倍ほど必要である。」といった主張がよく出てくるのです。

この〇〇倍については、いろんな議論があると思いますが、個人的な感覚としては、年収500万のサラリーマンと年収700-800万のフリーランスが同じくらいの生活水準になるかと思っています。ざっと、1.5-2.0倍くらいあれば同じくらいの生活ができるかと思います。ということで、1.5-2.0倍稼げる自信がある方は、独立する選択肢を考える価値はありそうです。

では次に、節税効果についてお話しします。
(※私は税理士ではありませんので、細かなところは間違っているかもしれませんが、お許しください。普通の人よりは知識があるので話します。)

基本的に、会社からの給料だけしかもらっていない方は、自分で確定申告をしません。会社が個人に変わって確定申告をしているのです。そのため、「経費」という概念が実質的に会社員にはありません。せいぜい、ふるさと納税をするくらいかと思います。

一方、個人事業主は、多くのものを経費にできます。例えば、事業関係の人との食事代や、PC購入代を経費で落とせるのです。自宅をオフィスにしている方は、家賃の何%かを経費として計上することも可能です。結果として、年間の課税所得を下げることができ、会社員よりも所得税や住民税の節約をすることが可能になります。

以上より、「節税効果ができるのでフリーランス!」ということではありません。実は、会社員も節税対策を取ることが可能です。

副業がOKである会社員の方は、継続的な事業収入があれば個人事業主として認められますので、開業届を出し、フリーランス同様に経費計上し、自分で確定申告をすればそれなりの節税効果は期待できます。

ただし、副業OKでない企業に勤めている方はこの対策は取れませんし、節税できたとしてもお金が数百万も返ってくるわけではないでしょう。せいぜい数万から数十万だと思います。

つまり、節税の有無の話はフリーランスor会社員を決める時の比較事項としては適さないと思います。

次に、収入の増減の話をします。ここは大事です。
当たり前ですが、会社員の給料は基本的に一定です。1年に1回ほど上がるのが普通であり、いきなり年収が2-3倍になるということは多くはないでしょう。(営業の方によくあるインセンティブ等の話は一旦置いておきましょう。)しかし、年収が去年の半分になるということも少ないでしょう。

このように、会社員のメリットは安定にあると私は考えています。

一方、フリーランスは自分の事業が伸びれば収入は2-3倍に上がる可能性も大いにあります。逆に、事業の調子が悪くなったら、去年の半分になる可能性も大いに秘めています。もしかしたら、赤字になる可能性だってあるのです。このようにフリーランスは不安定だが、一発当たる可能性も大いにあるということです。

フリーランスのメリットは、不安定の中にあるからこそ可能になる収入の爆発力だと私は考えています。

以上、金銭的な評価軸から話しました。
ここまで聞くと、「自分には能力があるし、稼げる自信もあるからフリーランスになる!」と思う方が多いと思いますが、もう少し待ってください。ここまでの議論では、重要な観点が抜けています。それが「保証」という概念です。

保証的な評価軸

安定、不安定という話とかぶるところもあるのですが、フリーランスに圧倒的に欠けているものは「保証」です。

一般的に会社員は以下のようなことを保証されています。

・怪我への保証
・給料の保証
・事業への保証
・将来への保証(終身雇用性がなくなったならばここはカット)
・家族への保証

上にあげたものは、福利厚生でカバーされるものがほとんどです。

会社員は病気になったら会社を休むことができますし、自分がミスをしたからといって首になることもありません。ミスをしたら明日から仕事がなくなるということもありません。せいぜい、注意勧告を受けて終了です。他には、優良企業だと結婚や子供が生まれた際に補助を出してくれるところもあります。

一方、フリーランスは違います。

仕事を休むことは基本的に何があってもNGです。筆者は、個人事業主時代に企業のエンジニア研修をよくしていましたが、風邪であろうと熱があろうと絶対に勤務をしていました。勤務できないと規約違反で罰金を取られる可能性も大いにあります。(昔、無断欠勤して訴訟になりかけていた知人を見て怖いなぁと思いました。)

そして、ミスが許される世界ではありません。ミスしたら二度と仕事は回ってきません。会社員からするとびっくりするかもしれませんが、10お願いされた仕事を10で納品してもあまり満足してくれないのです。10でお願いされた仕事を12で納品することがよく求められました。

決定的なのは、フリーランスは来年同じ仕事があるかわかりません。個人事業主の場合、基本的に業務委託契約ですから、いとも簡単に首にできるのです。ここはすごく怖いところです。

独立を考えている方の平均年齢が30歳だと仮定した時に、今後あなたは30年以上、健康体のまま毎回の仕事をパーフェクトにこなす自信がありますか?そして、今後30年間、仕事を取り続ける自信がありますか?

この質問の答えを「YES」と思い切って言えない方は少し考えてみましょう。自分のスキル・コミュニケーション能力・人脈・貯金は、万が一、何かしらの不運な出来事、仕事のミスがあった際でも自分の生活を保証するだけの力があるのかどうか考えてみましょう。

さて、金銭的・保証的という観点でお話ししましたが、まだ考えることはあります。(長いですね。もう少しお付き合い下さい。)

それが、業務的な評価軸です。

業務的な評価軸

「好きなことで生きていく」という話をYoutuberがよくしていますが、フリーランスになれば好きなことを仕事にすることができます。動画クリエーター、デザイナー、美容師、エンジニアなどなど自分の好きなことを仕事にできるのです。

一方、会社員は、そうではないでしょう。不必要な会議、謎の報告書、やりたくもない雑務など色々あると思います。自分のやりたい仕事を毎日こなせている人のほうが少ないのかなと思っています。

しかし、「じゃあ、やっぱフリーランスだよね!」という訳ではありません。

先ほども言いましたが、フリーランスは税務や投資、保険のことを自分で管理する必要があります。

投資や税務の勉強が好きな方はいいかもしれませんが、そうではない方には心苦しい作業になることは間違いないでしょう。ファイナンシャルプランナーや税理を雇うのも一つの選択肢ですが、彼らの値段はそう安くはありません。年間で少なくとも10万円以上はかかるかと思います。

しかし、個人的には税務も投資も1回ある程度勉強すればなんとかなると思っているので、ここは大して重要ではありません。最大の障壁は、「営業」だと私は考えています。

すでに、色々な人脈があり、多くのクライアントを持っているならば問題ないかと思いますが、フリーランスの一番大変な点は「仕事を探すこと」だと私は考えています。営業は、随時発生する業務だと思うのでここに自信がない方はフリーランスをお勧めしません。

フリーランスは、自分の好きなことだけを仕事にしていると思っている方が多いと思いますが、意外とそうではないということを知っておいて下さい。

次に、業務時間の話をします。

私自身、友人から「フリーランスだと土日とか関係なくていいよね」と言われたことが何回もありますが、そんなことありません。土日関係なく働くことの方が多いです。むしろ土日は絶対に働かなくていいという状況を羨ましく思うほどでした。

確かに、毎朝早く起きて満員電車に乗ることは少なくなりますし、会社員が抱える通勤や勤務のストレス的なものはほとんどなくなります。しかし、深夜に作業をすることは多々ありましたし、平日や土日など本当に関係なく仕事がありますので、ここに関しては一長一短なのかと思います。隣の芝生は青いものです。

最後に、職場の人間関係の話をします。

「上司のような人間関係がめんどくさいからフリーランスの方がいい」と思う方が一定数いらっしゃると思いますが、これも一長一短です。

私がフリーランスだった時は、確かにガミガミ言ってくる上司はいませんでしたが、仕事の愚痴を語るような同僚もいませんでした。もちろん、仕事仲間ができれば大丈夫だとは思いますが、やはり会社の同僚ほどの仲にもなれないと思います。私は、比較的社交的なタイプなのですが、1人で作業している日々を虚しく感じることも多々ありました。会社の同僚と飲み会をしている人たちを見て「いいなぁ」と思っていました。

以上で評価軸の話は終わりです。ここからまとめに入ります。

まとめ

巷によくある意見のほとんどは、今まで述べた3つの評価軸のどれか1つ、2つを取り立てて「〇〇が優れているからフリーランス(or 会社員)の方がいい」という意見ばかりな気がしています。もちろん、その意見自体が間違っている訳ではありません。「一理ある」と思います。

しかし、「一理ある」ということが、必ずしもあなたの判断基準になってはいけないということです。あくまで、一理ある「だけ」なのです。

人によって価値観は様々です。焼肉が好きという人もいれば、お肉は苦手という人もいますし、シンプルな格好が好きな人もいれば、派手なファッションが好きな人もいます。

つまり、「収入」を重視する人もいれば「保証」を重視する人もいるのです。このような中で、どっちが優れているかなんて言い争ったとしても何も生まれませんし、そもそも正解などない話をしているのだと思います。

例えば、上司からのパワハラがすごくて、薄給でスキルも対して身に付かないような会社であなたが働いているのであれば、「転職・独立」を視野にいれることは当然の成り行きだと思います。

しかし、今の職場に対して困ってもいない人、自分が重視するところ(給料なのか保証なのか、その他の何かなのか)が決まっていない人が、人の意見に惑わされて独立を決断してしまうことはあってはならないと思います。

会社員にもフリーランスにもそれぞれメリット・デメリットがあります。

そんな中で、自分の人生にとって、何が大切で、何が大切でないか?をしっかり見極めた上で、どちらか一方を選択することがあなたにとって一番の正解をもたらすことでしょう。

ここまでを改めて振り返ると全体的に「フリーランスの方がデメリットの方が大きい」かのような文章になっているかと思います。しかし、フリーランスを経験した身としては、普通の会社員に比べれば自由で豊かな生活ができたと感じています。

月の半分も働かずに会社員と同程度の給料をもらっている人が大勢いるのも事実です。そんな生活を見て憧れる人が多いのもわかりますし、私自身もそうでした。

でもそれは、フリーランスになったからというよりもフリーランスになるための勉強やスキルを一生懸命学んだ結果だと実感しています。華々しい生活をしている人がいる一方で、独立して、日の目を浴びなかった人たちも大勢いるのかと思います。

では、あなたにとって大事な価値観は何ですか?

私は、時間や給料という点では得をしていると思いますが、人との関わりをなくしてしまって悲しい思いをしたことが多々あります。何とも言えない孤独感に突然襲われることも多々ありました。チームで何かを達成する喜びを感じてみたいとも思っています。結局のところ、何かを得れば何かを失うものだと理解しています。

あなたの大事な価値観を考えた上で、フリーランスになることが本当にあなたの人生を幸せな方向に導いてくれるのでしょうか?

これが「YES」の方は独立をお勧めしますし、「NO or わからない」方はもっと自分の人生について考えることをお勧めします。重要な決断の前には、このように「思考すること」に一番の価値があると私は思います。

少し話がずれてしまいましたが、最後に改めて結論を言います。少し難し目に書きますがここまで読んだ方は理解できるはずです。皆さんの成功を祈っています。

フリーランスと会社員、結局どっちがいいの?

(答え)
フリーランスと会社員を機能的価値に分解して比較した場合は、結果は引き分けとなります。つまり、どちらかが優れているとは言えません。しかし、個人の価値観に寄り添った場合、メリット・デメリットへの荷重が変化する(何を大切にするかが人によって変わる)ため、優劣がつくのです。

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エンジニアを目指す人は、こういうのも書いてるから見てね。


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