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続【#最近の学び】知らなかったテラスハウスとタウンハウス

こちらの記事の続きです。

宅建士のみなさん、これらの違い、おわかりになりますか。

テラスハウス。
タウンハウス。


1.『タウンハウス』と『テラスハウス』

ここがミソとなりますので、連載ではこういう展開にしております。

「土地の権利はどうなっているのかしら」、とエルボー。
おー、うれしくなりますね。
そんな質問をされるとね。
もちろんそれは登記をみないとなんともいえないけど、ざっくりご説明させていただきますと(笑)。
敷地をみんなで共有しているパターンだと『タウンハウス』。
敷地の境界が明確になっていると『テラスハウス』。
法的な定義じゃないんだけど、そんなふうに言ってます。

宅建デートは突然に!

でね、壁を共有して連なっている建物。その建物ごとに区分所有権が成立するので区分所有建物となる。タウンハウスもテラスハウスも、いうなれば、平べったい分譲マンションという体にもなる。

で、前回の続きとして、建物と土地(敷地利用権)は分離処分することができるのであろうか。

区分所有法の第22条でしたね。

第22条(分離処分の禁止)
敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。

建物の区分所有等に関する法律

『タウンハウス』と『テラスハウス』の場合、分離処分はできるのでしょうか。

・・・と、実にマニアックな話をしておりまして、あはは(汗)。

念のため申し添えますが、このあたりの話が宅建試験で出題されるとは思いませんが、実務上、もしかしたらこの手の物件にどっかで出くわすかも。

2,「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合」と言っている

第22条をよく読んでみますと「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合」と言ってます。

ひらたくいと、「建物の所有者たちで敷地を共有しているんだったら」ということになります。

敷地を共有している場合は第22条により「分離処分の禁止」となる。

ということだから、これを『タウンハウス』と『テラスハウス』に当てはめてみると

『タウンハウス』→敷地を共有(持分)
『テラスハウス』→敷地をそれぞれが持つ(分有)

つまり、この第22条は『タウンハウス』だったら“適用”ということになる。

いちおう専門書からも引用しておきます。

(P.123)
敷地利用権を数人で有する場合に、その態様としては、区分所有者が敷地利用権を共有持分の形で有する場合と分有の形で有する場合がある。
(P.122)
土地が分有に属する場合は、本条(第22条)の一体性(分離処分の禁止)の制度は適用されない。

コンメンタールマンション区分所有法

ということだから、敷地をそれぞれが持つ、すなわち分有となる『テラスハウス』だったら、建物が建っている土地だけを売却することができる。

となると、とってもややこしくなって、自分の建物は隣の建物と壁でくっついているのに、その土地は他人が持っているということになる。

こんなイメージ。
分離処分は可能だが「敷地利用権を有しない区分所有者(A)」が発生する。

Aは分有している敷地をYに売った。分離処分。

3.Aの運命やいかに

区分所有法にこのような規定がある。

第10条(区分所有権売渡請求権)
敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

建物の区分所有等に関する法律

上記の例でいうと、敷地を分離処分してしまったAは「敷地利用権を有しない区分所有者」となる。
となると、えーと、「その専有部分の収去を請求する権利を有する者」に売渡請求権を行使されちゃう、と。
念のためだけど、法文上「売り渡すべきことを請求することができる」と書いてあるときは、「売り渡せ」といわれたほうは拒絶できないんですよね。
「売り渡すべきことを請求」された時点で売買成立となり、所有権を失う。権利がなくなったんだから、そこに居座ることはできない。
つまり立ち退きだ。

ちなみに、この場合での「その専有部分の収去を請求する権利を有する者」とは誰か。
そうです。
上記の例でいうとY。
理屈でいうと、「Yの土地の上にAが建物を持っている」といことになって、つまり権利者が違うわけで、このズレを解決するにはYを貸主とする借地契約などが必要だ。AがYに分離処分した際に、借地契約がされているんだったら敷地利用権あり(所有権ではないが借地権あり)で問題ないんだけど、なにもしていなかったら。
Yの土地の上に無権利でAが建物を持っているということだら、これが戸建ての場合だったらYが土地所有権に基づきAに対し建物の収去請求ということになる。

ところが、一棟の建物を区分所有している場合だと、その「区分所有している建物の部分(専有部分)だけ壊せ」は物理的に不可能に近い。
なので10条が用意されたわけだ。
専有部分の収去を請求する権利を有するYは、Aに対して、区分所有権(建物)を時価で売り渡すべきことを請求することができ、となると、結局、建物と土地の権利を有するYが新たなテラスハウスの住民となるわけだ。

・・・と、テラスハウスを取り扱うとなると、このようなことをお客さんに伝えなければならないかも(笑)。
きっと誰もわけわかんなくなりますよね。

でも誰かにいいたい。
あは〜\(^o^)/
だからここで、というわけでもないんですが、長々と書いてしまいましてすみません。ひさしぶりに区分所有法のマニアックな話をしてしまいました。

じつは、もうかなり前になりますが、宅建ダイナマイト合格スクールでの諸活動に加えて、某大手専門学校で「マンション管理士受験講座」を10年ほど担当しておりまして、そのときはなんせマンション管理士受験講座ですからね、上記のようなマニアックな授業もしていました。
なのでうっかり、つい懐かしくなりまして!!

えーと、実務に携わっている宅建ダイナマイターズのみなさん、かようなことと次第で、テラスハウスやタウンハウスは法的にもめんどくさく、さらにこれらを「建て替え」ともなると、もうひと騒動、さらに法的にややこしいことに巻き込まれます。
なので、結論としましては、取り扱わないのがいいんじゃないかなと(←身も蓋もないですが)。

あとそうだそうそう。
テラスハウスが登場したのは、いまから40年から50年前、ニッポン各地にいわゆる“ニュータウン”が誕生したころらしいです。
wikipediaのリンクを貼っておきますのでご参考まで。

ついでに。
同世代のみなさん、テラスハウス関連でいうと、懐かしいドラマがありましたね。
金曜日の妻たち
上記wikipediaから引用しますと

その後も多摩ニュータウンでは、1970年代以降住宅の"量から質へ"の転換が求められたことにより低層のテラスハウスが落合地区などに建設された。当時社会現象を起こしたドラマ『金曜日の妻たちへ』では主人公たちの住まいとして登場しそれまであまりなじみの少なかった住宅スタイルは大変な人気となった。しかし、家同士が繋がっているため改修などの費用がかさみ、戸数が少ないため修繕費も高額であるなど非効率な部分が多く、高層マンションの普及によってその後開発されたニュータウンでは建設されなくなった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/テラスハウス

落合地区についてはこちら。
テラスハウスという名称が、まだ地図上にありました。
google map

気が済みました(笑)。
最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。

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