ツールドフランス2024 第5ステージ(Saint Jean de Maurienne - Saint Vulbas) 考察
いやー、とうとう伝説が生まれましたね!前人未到の記録の達成を目の当たりにして感無量です。思わず自分も両手を上げてしまいました😅 また気持ちでフィジカルをブーストできるんだ!ということが見えるようなステージでした。
ツール・ド・フランス2024第5ステージは2回目のフラットステージ。プロトンはリアルスタートをしてから動きがなく、リラックスムードで進みました。理由としては、前日の山岳ステージで皆疲労していることと、今年はスプリントで勝負したいチームが多く、逃げたいチームが少ないからです。
各チームの状況を見てみると、
VISMA|Lease a Bike 総合狙い
UAE Team Emirates 総合狙い
Team Jayco ALUla フローネヴェーヘン選手
Ineos Grenadiers 総合狙い
Lidl-Trek ペデルセン選手
Decathlon-AG2R La Mondiale ベネット選手
Bahrain-Victorious バウハウス選手
Soudal-QuickStep 総合狙い
Red Bull-BORA-hansgrohe 総合狙い
Groupama FDJ 総合狙い
Alpecin-Deceuninck フィリップセン選手
EF Education-Easy Post ヴァンデンベルグ選手
Lotto Dstny ドゥリー選手
Israel Premier Tech アッケルマン選手
Cofidis コカール選手
Movister ガヴィリア選手
Arkea-B&B Hotel デマール選手
Intermarché-Wanty ギルマイ選手
Team DSM-firmernich PostNL ヤコブセン選手
Astana Qazaqstan カヴェンディッシュ選手
UNO-X Mobility クリストフ選手
TOTAL Energie ステージ狙い(チュルジス選手?)
総合狙い6チーム、スプリンターチームが15チームと、このようになっています。スタートリストを見て、この中で逃げに興味があるのは総合を失ってしまったGroupma FDJとおそらく最初からステージ狙いのTOTAL Energieくらいかなと思いましたが、案の定その2チームが逃げグループを形成しました。
近年だとエース級の選手が山岳で遅れてしまい、総合を狙えなくなったチームがステージ狙いに切り替えて逃げ重視になるのが多かったので、リーダーチームが牽引している時間が多かったですが、今年は始めからこれだけスプリンターチームがいるので、リーダーチームがプロトンを牽引しなくていいのは今後のレースにも影響がありそうですね。しかし近年こんなにスプリンターがいるツールドフランスはなかったと思うので、スプリント位置取りマニアの自分としてはうれしい悲鳴です。
逃げた2名は3分差くらいで淡々と逃げ続けましたが、雨が降ってきたので集団が早めにペースアップを始めたため、早い段階で捕まってしまいました。あとからインタビューを見たら、向かい風が強かったので逃げはかなりきつかったみたいです。でも楽しめたと。逃げたルッソ選手とヴェルシェール選手は地元が近く、しかもこの日はルッソ選手の母の誕生日だったということで、ルッソ選手は敢闘賞の花束を母親にプレゼントしたそうです。ツール・ド・フランスのポディウムと花束なんて、ルッソ選手の母親はかなりのびっくりしたでしょう!
で、残り36km地点で逃げが捕まってから各チームのスプリントに向けての位置取りが始まったわけですが、カヴェンディッシュ選手を擁するアスタナがその時点でもう前に集結していて、雨だからリスクを避けるために出てきたのかもしれませんが、この日のやる気を感じました。アスタナはずっと先頭のいい位置を取り続けカヴェンディッシュ選手をサポートします。
そのままフィニッシュまでほぼ埋もれることなく先頭をキープ。ラスト1kmを切ってアシストとは離れてしまいましたが、残り約700mでフィリップセン選手の後ろに入ります。その後フィリップセン選手の横に隙間が入るとその前にいたアッケルマン選手の後ろにスイッチ。その時点でLidl-Trekのギボンズ選手がリードアウトをしていて、右はクリストフ選手とフィリップセン選手の順番、後ろはアッケルマン選手とカヴェンディッシュ選手、左はヴァンデルベルグ選手とコカール選手という並び。
その後にギボンズ選手が右にラインを移してから左に外れてリードアウトをやめたことで右のクリストフ選手とフィリップセン選手のラインが潰れて、ヴァンデルベルグ選手とコカール選手のラインも潰れて、アッケルマン選手が意気揚々とスプリントを開始したところで、その勢いを使って左側に向かってスプリントを開始するカヴェンディッシュ選手。
その段階でフィリップセン選手はカヴェンディッシュ選手の後ろに入っていたのですが、左にスプリントされたことで横に並んでいる選手を抜くために少し出足が遅くなったことで、少し失速した状態でスプリントを開始することに。そうしてカヴェンディッシュ選手を捲れる選手はおらずステージ優勝になりました。
と長々と書いてきましたが文字だと本当にわかりにくいので、ずっと上空からの動画がインスタにあがっていたので、下記のリンクを参考にしてください。(動きの検証は何回でも見れます。)
こう見ているとスプリント中に位置を取られそうになった時の位置のキープの仕方や、理想の位置に入っていく方法がとてもスムーズに見えます。でもバンチスプリントって普段練習したくてもできないことで、道も違えば、メンバーも違い、位置や集団の流れなどの状況も違うので、そんな状況はレースでしかないし、レースでしか経験できない。なのでスプリンターは何回もトライアンドエラーを繰り返して、いかに勝ってきたかというのが自信になり、非常に大切なことだと感じます。
だからカヴェンディッシュ選手がレース後のインタビューで「フィジカルが劣っている時は、頭を使うことが絶対に役に立つ」と言っていますが、経験がないと頭を使うこともできないので、39歳という年齢でも、第1ステージの最初の丘で遅れても、ツールドフランスに15回出場して、すでに34勝していた選手だからこそできた偉業だと思います。勝ちパターンがわかっている選手は、経験から状況をそのパターンに近づけることができるので何回も勝てるわけです。
またインタビューではできる限り挑戦するよと発言をしていたので、今後のステージでもアスタナトレインとカヴェンディッシュ選手に注目ですね。
個人的には残り27.8kmで落車したクリストフ選手がステージ3位だったり、残り24.1kmで落車したラポルト選手がプロトンに戻って先頭を引いていたの印象的でした。またフィニッシュの4km〜5kmの救済ルールがあると、個人総合系のチームがスプリントで前に位置取る必要がなくなるので、純粋にスプリンターだけの戦いになってかなりリスクを減らせていると感じます。昔の救済は1kmだったから今でもPTSDだよ、とアームストロング選手が語っているくらいなので、総合系のチームのストレスはかなり軽減されたんではないでしょうか。
一方でフィリップセン選手をはじめ他のスプリンターにも火がついていると思うので、残り5ステージのフラットステージでの熱いバトルを一緒に追いかけましょう。
あと、最後に落車したペデルセン選手を飛び越して安全を確保したCofidisのジングル選手のジャンプが鮮やかでした。あの段階で180cmの巨体が横たわっていたら誰でもビビりますよね。。。
今回も読んでいただきありがとうございました!今後の記事の励みになりますので、記事を気に入ってくれた方は「スキ」や「記事をサポート」していただけると嬉しいです。他にもこのnoteに走りに関することやサイクリングに関することを書いているので、参考にして楽しんでいただけると幸いです。
それでは第6ステージの考察で!