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ツールドフランス2024 第8ステージ(Semur en Auxois - Colombey les deux Églises) 考察

先週の土曜日にスタートしたツールドフランスも1週間が経ちました。第8ステージは雨で気温16℃の中でのスタートでした。

ヨーロッパの選手は春先の寒い日のレースでも普通に半袖・半パンで走る選手が多いのですが、彼らでもベストやアームウォーマーを着用していたということは、かなり寒かったということです。確かにイタリアステージの時の気温と比べたら半分くらいになっているので、連日のレースの疲労とこの気温差で体調悪くなりそうですが、普通に走っている選手たちは一体どんな身体をしているのか。こういう身体の強さもツールドフランスを走るために必要な要素なのでしょう。

ちょっと天気の話をすると、この第8ステージのスタート地点のSemur en Auxoisとフィニッシュ地点のColombey les deux Églisesは北緯47〜48度くらいのところの位置しています。(ちなみにパリが北緯49度)北海道の稚内が北緯45度なので、フランスってだいぶ北にあるんです。この辺だと南樺太やモンゴルのウランバートルの北くらいの位置なので、この時期でも結構寒くなります。周りも森や畑ばかりですし、熱を発するものがあまりないということもあるでしょうか。それでも熱波が来るとしっかり暑くなります。実際めちゃくちゃ暑くなるのは1週間くらいですが、フランスではエアコンはかなりのレアアイテムで、扇風機も売っていますがメジャーではないので、暑さで亡くなる人が出るのもおかしくない状況ですね。

レースの話に戻ると、序盤にEFのビッセッガー選手とポウレス選手の2名と山岳リージャージャージのUNO-Xのアブラハムセン選手の3名の逃げが決まりました。3名が約2分差先行した状況で、最初のKOMでEFのベッティオール選手とヒーリー選手がアタック。その影響でプロトンのペースが上がりました。その後ベッティオール選手が役目を終えて、ヒーリー選手がペースを上げて抜け出しを計りました。そうなると脱落するスプリンターが出始めて、プロトンはちょっとしたパニック状態になりました。スプリンターチームがしっかりとチェックをしていたため、そこからGoupma-FDJとTOTAL Energieの選手が積極的にアタックを仕掛けますが、結局決定的な追走グループはできず、先頭の3名に追いつくことはできませんでした。

EFの作戦としては、序盤に丘を3回連続で越えるので、その区間を使ってプロトンにダメージを与えて逃げて、ステージ優勝&総合アップ、総合争いチームの消耗を狙う予定だったのかなと推測します。最初にTTの強い2名を逃がして前待ちをさせて、最初の丘でプロトンからアタックを仕掛けて少人数の逃げを形成して前に追いつく。プロトンのペースが上がることでスプリンターを脱落させて、それらのチームを逃げの展開に変更させて、強力な逃げグループを作って逃げ切り優勝&総合順位アップ!というような展開に持ち込みたかったのかなと思いました。

しかしスプリンターチームがことごとくアタックを潰し、逃げに対して協力をするチームが少なかったことでチャンスを奪われてしまいました。そして上りが極端に苦手なスプリンター以外は遅れなかったのと、それに加えてアブラハムセン選手が思っていたよりも強く、先頭と追走との差が開きすぎてしまったのも原因ではないか、とも感じます。アブラハムセン選手はフィニッシュ後のインタビューの中で、上りでEFの2名が引かなかったという発言をしているので、追走を待っていたこともあると思いますが、ちょっとペースを下げたかったのもあるんじゃないかなと思いました。

そうしてEFの作戦はうまくいかなかったので、2名をプロトンに戻してアブラハムセン選手の一人旅が始まりました。彼の目標はあくまで中間の山岳ポイントやスプリントポイントを獲得することでのアタックだと思いますが、なにしろペースが落ちない!Lottoのチーム無線で「Intermarcheと協力して差を8分以上には広げるな」という無線が入っていたので、一人でも放置ができない勢いがあったということですね。今回はステージ優勝まで届きませんでしたが、またどこかで見せれくれそうですし、KOMについては中間ポイントだけの獲得でポガチャル選手に13点差。最後までこの山岳リーダージャージを守れるか、今後も彼の逃げに注目が集まります。

EFは最後のアップダウン区間でもヒーリー選手とクイン選手がアタックして、プロトンのペースを上げてスプリンターを脱落させようとしましたが、それもうまくいきませんでした。それくらい今年のツールはスプリンターチームが気合が入っています。例年のツールだったら皆もっと積極的にアタックしていたと思うのですが、今年はスプリンターチームが俄然やる気なので、山岳ステージでスプリンターを諦めさせない限り、平坦ステージの逃げ切りは難しそうですね。

そしてこのステージもバンチスプリントでのフィニッシュになり、Intermarcheのギルマイ選手がステージ2勝目を飾りました。残り3kmくらいでは結構後ろの方にいたので、どうなるのかなと思いましたが、チームがしっかり機能していて、残り1kmでは先頭に出てよい位置をキープしていました。今回のスプリントは上り気味だったのですが、Alpecinのフィリップセン選手に先行されても普通に脚があって余裕があるから、自分のタイミングで踏み出して悠々差しているように見えました。かなり仕上がってます。

一方で、フィリップセン選手は、第6ステージの一件からやはりメンタルにきているようで、心なしか周りに気をつかってスプリントしているように見えます。またAlpecinは他のスプリンターチームに比べるとちょっとバラバラに走っている感じがするので、チーム内でのフィリップセン選手のスプリントに対するエンゲージメントがどうなのか心配です。しかし今回のツールでも位置取りやスプリント力など勝てるレベルにあるので、1勝したら自信を取り戻して連勝してくるんじゃないかなと思います。

あと注目しておきたいのがLottoのドゥリー選手。毎回惜しいところまできますがうまく前に道が開かず、毎回詰まっているように感じます。このステージではスプリントがかかってからの勢いは誰よりもあるように見えるので、思い切り自分のタイミングで仕掛けて欲しいところです。自分の見立てでは、第13ステージか第16ステージくらいにくるんじゃないかと期待しています。

というわけで、第8ステージもアブラハムセン選手、位置取りトレイン、バンチスプリントで幕を閉じました。この感じだと今後のステージでも同じような展開になるパターンがありそうで、スプリント位置取り研究家としてはうれしい限りです。残るスプリントステージはあと4回。ギルマイ選手がこのまま連勝街道を突っ走るのか、はたまたまだ勝ててないスプリンターが名乗りを上げるのか。全てのスプリンターに頑張ってもらいたいです!

そして今夜の第9ステージは、「Les Chemins Blancs」(白い道)と言われる14のグラベルセクターのあるステージです。天気予報は晴れだったので路面がぐちゃぐちゃになる心配はありませんが、距離は199kmあり細かいアップダウンが続くので、どんなステージになるか全く展開の想像ができません。このステージもまた「初」や「伝説」が生まれるのか、はたまた「定番」の選手たちが活躍するのか。今夜のツールも目が離せません。

今回も読んでいただきありがとうございました!今後の記事の励みになりますので、記事を気に入ってくれた方は「スキ」や「記事をサポート」していただけると嬉しいです。他にもこのnoteに走りに関することやサイクリングに関することを書いているので、参考にして楽しんでいただけると幸いです。

第9ステージも楽しみましょう!

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