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オリジナル脚本『花ごよみ』

時間経過を学ぶ基礎科課題「一年後」で提出した課題です。
京都の新人舞妓さんの成長を描いた6枚シナリオです。原文よりちょっとだけ書き足してます。
京の四季は色鮮やかなので、時間経過はわりと分かりやすく書けるので助かりました。笑

* * *

 人物
まめ桜(まめはな) (17)祇園の新人舞妓
まめ優(まめゆう) (27)まめ桜の姐芸妓
男性客1(70)サラリーマン
男性客2(49)サラリーマン

* * *

〇京都市内を走るタクシー中(夜)
   まめ桜(17)とまめ優(27)が乗っている。まめ桜は汚れた桜の花簪を手に持っている。

まめ優「まったくあんたは次から次へと」
まめ桜「(涙声で)すんまへん、まめ優姐さん」
まめ優「あれほど一年目の舞妓の花簪はブラが付いててひっかけやすいから気い付け言うたのに。
まさかひっかけてお客様の料理の上に落とすとはなあ」

   まめ優はくすくすと笑う。まめ桜は堰を切ったように泣き出す。

まめ桜「うち、もう舞妓やめたい!」
まめ優「まめ桜!そんな悲観せんとき。まだ先月店だししたばっかりやろ」
   まめ桜、顔を手で覆い首を振る。
まめ優「またなんぞやらかしたんか?」
まめ桜「……同期でうちだけ、都をどりの版取り来おへんかった」
まめ優「そらしゃあないわ。踊りの覚え遅うて、その分同期より店だしが遅れたしなあ」

   まめ桜、さらにわっと泣き出す。

まめ優「まめ桜、あんたいらちやし、いつも一歩引いて周りをよく見よし。大丈夫!芸名に“桜”があんにゃ。来年の春は必ず都をどりに出れる」
まめ桜「一歩引いて、周りをよく見る?」
まめ優「来年には簪のブラもとれるしな」

   まめ優、優しくまめ桜の鬢のほつれを治す。


〇料亭の宴会場の中(夕)
   まめ桜とまめ優が団体客にお酌をする。男性客1(70)が男性客2(49)に無理に酒を勧める。

男性客1「ほらせっかく芸妓さんがお酌してくれたんだぞ。残さず飲め飲め!」
男性客2「いやもう私はこれ以上は……」

   まめ桜、さりげなくお冷をコップに注ぎ男性客2の元へ持っていく。

まめ桜「(小声で)お兄さん、やわらぎどす」
男性客2「ああ、ありがとう。僕下戸でね、助かったよ。綺麗な簪だね、これは何?」
まめ桜「へえ、八月は団扇の花簪どす」
男性客2「涼し気でいいね。深酔いも覚めるよ」

   まめ優が遠くからウインク。まめ桜の微笑み。


〇祇園甲部歌舞練場・外観
   看板に「都をどり」とある。桜吹雪が舞う。

〇同・舞台上
   まめ桜と芸舞妓たちが桜の枝を持ち舞う。

〇同・楽屋(夕)
   ブラの取れた桜の花簪を挿したまめ桜。まめ優がにこにこと近づいてくる。

まめ優「どうどっか?ブラが取れた感想は?」
まめ桜「まめ優姐さん!せやなあ」

   まめ桜、鏡に映る自分を見る。

まめ桜「これはこれで寂しおすな!」
まめ優「はあ、これだからあんたは!」

   まめ優はまめ桜に軽くでこぴんする。まめ桜の笑顔。

* * *


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