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知らない街で感じる春

振り返ってみると、美術館に行くのは半年ぶりだった。

去年から、気になる企画展が次々に延期になって、気付けば延期された日程を知らないまま行けずじまいなことが多かった。

大学生の時、浮世絵や西洋美術に関する卒論を書くことに決めてから、美術館という場所が好きになった。

芸術の専門家のような細かい知識はないけど、美術館に行くと、静かな空間で芸術を身体いっぱいに感じて、癒されたり、パワーをもらったりできて、心が潤う感じがして好き。

今日は、東京国立近代美術館のMOMATコレクションを訪れた。

ほかの企画展も魅力的だったが、「美術館の春まつり」というテーマに惹かれて、MOMATコレクションの春らしい作品をじっくり堪能してきた。

桜や春の風景を描いた作品はどれも美しく、あたたかく、晴れやかで、新生活がはじまる4月1日に観るものにピッタリだと思った。

この展覧会では、そんな春を感じる作品のほかにもさまざまなテーマで作品が展示されていた。
知識の少ないわたしなりに、こんな絵が好きとか、こんなのも素敵だなとか、そういう自分の好みを掴んでいくのもたのしい。

やっぱり、直接アートを観るのはいいな。
今日をきっかけに、今年はもっとたくさんアートに触れてみたいと思った。


美術館で、心がいっぱいに満たされると、自分がお腹を空かせていることに気がついた。

今日は下調べをしたお店に行くと決めていた。
美術館に行ったら、ミュージアムショップで気に入った絵のポストカードを買うのがわたしのルーティンなのだが、お腹が空きすぎてそのまま美術館を出た。


徒歩で行くと20分ほど。
電車を使うか迷ったが、天気も良いし気分も良いので歩くことに。


美術館の周りの桜はほとんどが散っていて、柔らかい若葉が輝いていた。リクルートスーツを着た新入社員らしき人も何人か見かけた。
季節は進んでいるのだと感じた。

店までの道のりは、ひだまりの中、若葉を覗かせた桜の花のほかに、菜の花、つつじ、たんぽぽなどなどたくさんの花が咲き乱れていて、のびのびと散歩をしている人も多く、交番の前できりっと立つ警察官だけが浮いて見えるようなのどかさが漂っていた。


店に着く頃にはもう、お腹と背中がほんとうにくっついているんじゃないかと思うくらい腹ペコで、じんわりと汗ばみ、喉もカラカラで、できればこの陽気を感じながらビールでも飲みたかった。


お店はお酒も取り扱っているようだったので期待していたが、ランチの時間は頼めなそうだった。
さらに、目当てのランチメニューは売り切れていた。14時だからそれはもちろん仕方がないことだ。
完全にビールの気分だったわたしは、一瞬ガッカリしながらも、カレーとレモンスカッシュを頼んだ。


就活を控えた大学生らしい女の子たちの会話を聞きながら待つ。
会社がコロナでボーナスが無くなったかどうかを見るとか、アパレルはイケメンが多そうとか、グループディスカッションは嫌だとか。
がんばれ〜。と他人事として聞き流していると、頼んだものが運ばれてきた。


美味しいものを前にすると機嫌は簡単になおる。
カレーも、レモンスカッシュも、今日の天気や気分のぴったりではないか。むしろ、今日はこれを頼むためにここに来たんだ。

カレーをパクパクと口に運び、レモンスカッシュをごくごく飲みほした。なんていい日だ。

春を全身で浴びた、素晴らしい日だった。

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