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【日記エッセイ】「スポーツセンター」

奇形種スポーツセンターに行ってきた。奇形種はある年代まで徹底的に下位のものとして全宇宙で認識されていた。全宇宙でだ。恐ろしい。全宇宙での共通の認識なんぞ、それくらいだろう。オレは、全宇宙という言葉を知っているだけで、その全貌を感じたことは一度たりとも無い。奇形種については、アーカイブに色々と記載されてある。でもそれはだいたいの人がアクセスできるものだから、一定の者に歪められている可能性がある。昔、アーカイブの改竄で一斉に名のある者が捕まったよな。

奇形種たちはある年、大反乱を起こして、破片(ピース)を勝ち取った。それ以降、奇形種専用のあらゆる建物が立った。オレは、奇形種スポーツセンターの二階の飯屋に行きたかった。奇形種専用の建物の飯は基本的に安い。今のオレは金がない、自分で作っても良いんだが、今やってしまうと頭がおかしくなるような気がして出来ない。だから、そこにいくしか無かった。初めていく。入った。受付みたいな場所があった。そこには「選ばれし者」がたくさんいて、働いていた。奇形種ではない私をみるや否や、そこにいる「選ばれし者」は全員でオレを見て、驚きと少しだけ嫌悪の漂う目つきを向けた。オレは、オレの特性からしてその目を直視することはできず、なんとなくそんな目つきであると感じただけであった。二階のラウンジを利用しても良いかと聞いた、あっ、はい。と「選ばれし者」が答えた。その「選ばれし者」がたくさんいる中に若い男が1人いた。同じくらいの若さだろうか、少しあちらが上か。そいつの整った顔立ちと明るさが、オレを見て変貌した時、オレは「選ばれし者」になんて絶対にならないと誓った。あいつみたいになるなら有限として生きることを選ぶと、無限生存に真っ向から反発してやると思った。あいつみたいなのが無限生存を選ぶと思うと、吐き気がする。

「選ばし者」たちがオレに向けたあの眼差しは奇形種たちに向けられていたものだろう。何も変わらないんだなと思った。前に奇形種たちに向けられていただけで、その眼差しが根絶したわけではなく、ただその向きが変わっただけなのだと思った。奇形種センターにいる有形種に向けられたその眼差しは、あの恐ろしい悲劇の種なのだろう。そうか、彼らが全宇宙を相手にして反乱を起こしたのが少し分かるような気がした。オレのこの言葉にならない違和感は反乱の種となるのかと思った。

オレは二階で黙々とプルト定食を食べた。

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