見出し画像

鏡に映ったわたし

思春期を迎えた次男は、ちょっと声をかけただけでイライラが始まる。
何かあるごとに責められ、わたしのせいだと言い放つ。
そんな毎日が続いた。

本当にあれは息子だったのか?


彼は小学6年の後半から、どこか怒りっぽくなった。
二人で出かけるたびに、車内で喧嘩になる。
お互い気分が悪いまま帰宅する。

楽しいお出かけが、楽しくない。
きっとそれぞれが感じていたはず。

それが思春期のせいかもと思い始めた頃、
"思春期だから仕方ないよね"、と二人で話し合ったことがあった。


同じ頃、わたしもちょっとしたことで、カーッとなりやすい時期だった。

家でも職場でもイライラしないようにグッとこらえる。楽しい時間の方が、わたしも周りも幸せだと言い聞かせていた。

だけど、彼が言い放つ言葉で急にイライラがマックスになる。
一度キレると、止まらなくなる。
反省する毎日。
更年期のせいかなとも考えたりもした。

お互い沸点が低い状態で、関わるんだから、
戦闘になるのは当たり前だった。


そんな毎日に疲れた頃、
思いきって、全てをほっといてみることにした。
宿題も、洗濯物も、部屋の散らかりも、
何も言わない。
見て見ぬふり。
気になるけど…見てみぬふり。
絶対言わない。

そんな日が一日、二日と経っていくうちに、
わたしの負のエネルギーが抜けていくのが分かった。
心も体も身軽になった。

そのかわり、彼の部屋はすごいことになった。


何も言わないわたしを、どう思っていたかは分からないけど、
彼もイライラして、人を責めたりしなくなった。

あの頃から考えると信じられないが、
今では、自分が悪いと思ったことは、謝ってくれるようになった。

そんな彼を見ていると、
なんだか自分を見ているかのように思えた。

わたしのイライラを半分あげたかのように、
彼もイライラし、
わたしの平和を半分あげたかのように、
彼も平和になった。


あれは、本当に彼だったのか?
わたしを映した鏡だったのではないかと、
今でも思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?