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「はじめの一歩」の積み重なりが、人生だ。/今週の、いちばん。89

ダサい話だけど、編集者になって10数年、著者に企画を提案するとき、いまだに緊張することがある。
相手が自分が強くリスペクトしている人物なら、なおさらだ。
この企画で納得してもらえるだろうか?
「何で俺にこの企画を?」とか思われないだろうか?
仮に賛同していただいたところで、自社で企画を通せるだろうか?
そんなネガティブな疑問がわいては消えをくり返し、打ち合わせ場所に行く途中でイヤになったりする。

じつは、今日もそんな日だった。
詳しくは書けないが、これまで自分が企画を提案してきた方々とは、まったく違うフィールドで活躍している方との打ち合わせ。
カバンの中のペラペラの企画書が、本当に頼りなく感じられて。

だから、とにかく喋った。
企画書を出すために読み込んだ彼のインタビューの言葉を引用し、その方の活躍するフィールドについてどう思っているかを言葉にし、自分が編集者として何を大事にしているかを熱く語り。
いま思えば、もっと「聞く」べきだったけど、それでも、言い残したことがないようにと思いをぶつけた。
結果、企画には快く協力いただけるという返事をいただいた。
とても嬉しかった。でも、それはまだ、「はじめの一歩」にすぎない。

仕事も人生も、いくつになっても「はじめの一歩」がある。
新しい経験、新しい出会い、それを積み重ねて、少しずつ前に進んでいく。
もちろん挫折もある。
力不足とかタイミングとか、いろいろ重なって、次の一歩が踏み出せないこともあれば、途中で引き返しを余儀なくされたりすることも。
それでも、「はじめの一歩」がなければ、先はない。
だけど、自分を含め、みんなそうだとわかっているはずなのに、なかなか踏み出せない。
いつのまにか、それもまた人間なのかな、と思う年齢になった。

今日の「はじめの一歩」はどこまで続くのだろう。
とてもチャレンジングな道だから、必ずしも先の見通しはよくはない。
でも、次の一歩を踏み出す気持ちはとめられない。
最後の最後で、人の書名を引用するのも何だけど。
なるほど、『待っていても、はじまらない。』って、こういうことか。
いまさら腹に落ちたよ、阿部さん。

今週のいちばん、力強い一歩を踏み出せた瞬間。それは9月30日、神宮前のあの人の事務所から、一歩出た瞬間です。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です

(最近は「書かないよりは、まし。」をよく更新しています)

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