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#bookreview
各地のユニーク例豊富に――青木辰司『転換するグリーン・ツーリズム:広域連携と自立をめざして』(学芸出版社、2010年)評
80年代以降、環境破壊や行き過ぎた商業化など、マス・ツーリズムの弊害が世界的に問題視されるようになり、それへの反省から、オルタナティヴ・ツーリズム(大衆観光に代わる新しい観光)への期待が増した。その流れを受け、92年に日本で提起されたのがグリーン・ツーリズムである。 グリーン・ツーリズムとは、都市の人びとが農村に滞在しつつ行う余暇活動のこと。目的は、都市と農村の対等かつ持続的な交流とそれを通じた地域づくりにある。当初、輸入概念の有効性にさまざまな疑問がもたれたグリーン・ツー
AV女優に見る震災の影――山川徹『それでも彼女は生きていく:3・11をきっかけにAV女優となった7人の女の子』(双葉社、2013年)評
東日本大震災をきっかけに、AV(アダルトビデオ)の世界に足を踏み入れ、自らの裸や性行為をさらしてお金を稼ぐようになった女の子たちがいる――。 ルポライターの著者(上山出身)は、被災地をめぐる旅の最中、そんなうわさを耳にする。「東北学」をバックボーンに、上京した若者たちや被災地の人びとのリアルを活写してきた著者がとっさに思い浮かべたのは、1930年代初め、恐慌と凶作で困窮化した東北の農村で、少女たちが、家の借金のために女中奉公や紡績女工、さらには花柳界へと身売りされていったと
生活者目線の支援策探る――三好亜矢子・生江明編『3.11以後を生きるヒント:普段着の市民による「支縁の思考」』(新評論、2012年)評
東日本大震災から約二年。被災した人々に対し、さまざまなアクターによる多彩な支援が行われてきた。それらのうち、特に「普段着の市民」――行政職や専門家など「支援」のプロではない、普通の生活者たち――によって行われた支援をとりあげ、それがもつ可能性や有効性について論じたのが本書だ。 本書では、被災地支援に活躍したNPOやボランティア・グループ、協同組合など、一五ほどの実践事例が詳細に紹介され、それぞれ丁寧な検討や考察が施されている。本県からは、米沢市の生活クラブやまがた生協を母体