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山形よみかき小冊子 ひまひま

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「チェブラーシカ」とは何か――佐藤千登勢『チェブラーシカ』(東洋書店、2010年)評

「チェブラーシカ」とは何か――佐藤千登勢『チェブラーシカ』(東洋書店、2010年)評

オレンジの木箱にまぎれこみ、南の国から1968年のソ連に迷い込んだ分類不能の小動物。バランスが悪く、すぐ倒れてしまうことから「チェブラーシカ(ぱったり倒れ屋さん)」と名づけられたそれが、その弱さゆえ、あちこちでユニークなトラブルをまきおこす。

パペットアニメとして姿形を獲得し、1960~1970年代のソ連社会で国民的なキャラクターとなり、いったんは忘れ去られるも、ゼロ年代の日本でのブレイク――そ

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プーチンのシンフォニヤ(ビザンティン・ハーモニー)ーー中村逸郎『ろくでなしのロシア:プーチンとロシア正教』(講談社、2013年)評

プーチンのシンフォニヤ(ビザンティン・ハーモニー)ーー中村逸郎『ろくでなしのロシア:プーチンとロシア正教』(講談社、2013年)評

ソ連が解体して20余年。かつて腐敗や汚職、停滞、閉塞に淀んでいた社会に、ゴルバチョフとエリツィンとが自由や民主主義をもたらしたことで、ロシアの人びとはのびのび、安心して暮らせるようになった。スターリニズムの悪夢は過去のものとなったのである――というのはもちろんウソ。

社会主義というタテマエが廃棄され、「何でもあり」になったロシアで生じたのは、ソ連時代など比較にならないほどの腐敗や汚職、貧困や格差

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