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短編小説:交配不可能な2人種がある異世界

俺が転生してきたこの世界には、お互いに交配できないK人とL人という種類に分かれていた。
日本ではK人とL人の比率はだいたい半々で、全世界的傾向でもある。
K人はカーノイド、K型と呼ばれている。
L人はエルノイド、L型と呼ばれている。
輸血ではA型、B型と一緒になってAK型、AL型、BK型、ABL型という風に呼ばれていた。

しかし、見た目はほぼ同じだった。
はるか昔からこの2種は、交配不可能であるのに一緒に行動しており、同じような進化をたどった結果、肌の色をはじめとする見た目の違いも、同じように進化したという説が有力だった。

K型とL型の人々は、普段はその違いを気にせずに一緒に社会生活を営んでいる。
俺たちが通っている高校でもそうだ。一緒に机を並べて生活している。

ただ、決定的に異なることがある。それは恋愛事情だった。
それもそのはずで、KL型が違えば子供ができないのだ。法律上でも、型が違う人とは結婚できない。

俺のあこがれのクラスメイト、ユリカ嬢が俺とは違ってK型だったと知ったときは、ものすごく、落ち込んだ。
見た目では違いなんかない。男女の違いは見ればわかるのに、なんなんだろう。

アイドルでも、KL型がどちらかなのかは話題にはなった。ファンたちは自分と同じ型であるのを望んでいるのだ。

しかしKL型はプライベートということもあり、アイドルだけでなく多くの人は、普段自分のKL型を公表しなかった。
だから掲示板やSNSでは、自分の押しがどちらの型なのか、という話題がつきない。
しかしそれが公にされることは、ほとんどなかった。
例外は、結婚した時に、たまに発表される程度だった。親族は全員が同じ型なので、どこからかKL型がばれてしまうこともある。

中世ヨーロッパや異世界ファンタジーでも、KL型の違いが色々と影響を与えていた。
王族は全員が同じKL型を持っている。
王妃や王様はメイドや執事などに対する浮気を懸念して、王宮の使用人を自分たちとは違うKL型の人のみを雇い入れるのが普通だった。
そうして使用人の中から貴族になる人も出てくる。そうした貴族は王族とは違う型なので、王家への輿入れなどをしないのが通例だった。
しかし逆に、第二夫人など、子供を産めないことを理由に、王宮の補佐的な役割として迎い入れる例もあった。
さらに、超有力貴族にまで上り詰めた王家とは違う型の子供を王様が養子に入れるということもあった。
そうなると、王家のKL型の情勢が一気にひっくり返った。

世界の中には、王族のKL型を理由に「どちらが上か」という主張をする原理主義組織や、宗教なども生まれていた。
しかし多くの国民は、両方の人種がともに生活しているのが実態であるので、そういうものを冷たい目で見て、受け入れてこなかったという。

芸能界で、あるスキャンダルが起きた。
とある女性アイドルグループのKL型が、プロデューサーである中年オヤジのKL型と同じ娘だけが集められているという情報が週刊誌にすっぱ抜かれた。
当然のように「ロリコン」「エロおやじ」とさんざんに批判されて、さらにはKL型が違うファンの多くが失望をした。

地下には怪しい話もある。
KL型が合わない人のみを顧客対象にする性風俗の存在だった。実際には紀元前からそのような風習があるらしい。

ああ、なんということだろう。
俺はユリカ嬢に、告白されてしまった。

「KL型が違っても、あなたのことが好きです。付き合ってください」

こういわれたら、もう「はい」一択だった。
どういうつもりなのだろうか。結婚はできない。
しかし非公式ながらパートナーとして生活している人は、当然のようにこの世の中には数多くいるそうだ。

積極的なユリカ嬢にタジタジになりながら、なんとか高校生活を送っている。
ユリカ嬢と同じK型の男子たちは、大変なショックだったようだ。まさかL型の俺に取られるなんて夢にも思っていなかったようだ。

KL型の違いは、禁断の恋愛と言われて久しいが、まあ風当たりはそれほど強くはない。
子供の問題は、養子という制度だってある。

なるようになれ、としかもう言いようがなかった。

なんでこの世界には、このような違いがあるのか、心底不思議だ。

#小説 #短編小説 #短編 #異世界

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