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楽しい時も、悲しい時も。「私」を委ねられる人。

どの友人よりも頻繁に会っている、だけど友人とはちょっと異なる存在。
毎月会いに行って一方的にきれいにしてもらう関係を、かれこれ16年も続けている。


そう。美容師さんである。

話しやすくて、落ち着いていて、笑顔がキラキラでお肌がきれい。学生時代のあだ名が「勇者(仮名)」だったというくらい、努力家で、いつも前向きな女性。
それが私の美容師さんだ。

美容室に行く時は、彼女に会うこと自体も毎回楽しみ。
同い年で意気投合して以来、彼女の転職や独立によりいろんなお店についていって気づけば16年。
嬉しい話、悲しい話、人生観、笑い話。
たくさんの話をしてきた。


今日は、前回彼女が話していた映画を私も見たことを思い出し、感想をシェアした。



(赤と白とロイヤルブルー。前に、同性愛の恋愛ものが心に沁みるという話をしていて、お互い印象的な作品を列挙している時に出てきた映画である)


恋人の抱える悩みについて、「(君にはわからないだろうと言われ)わからない。でも、いま学んでる」ってセリフがいい、とか。
息子から「話があるんだ」って深刻な顔で言われた時、このお母さんみたいに宅配ピザを頼んでリラックスできる雰囲気を作れたら素敵、とか。

「私、映画館より、この時みたいにサブスクで何となく映画を見ている時の方が、ちょっとしたことが胸に響いたり、この考え方は自分も真似したいと思えたりするんですよね」


ああ、なるほどな。


「そうかもしれない。見たい映画を見に行くとき、張り切りすぎているのか、見終わって期待外れだったと感じることがあります」

そんなことを話していた。


帰り道の電車の中で短くなった前髪を触りながら、彼女とのやりとりをふりかえった。

自分を俯瞰して言葉にすることが上手だったり、映画の登場人物すらも自分の成長に活かす材料にしている。彼女のそんな所がやっぱりすごいな、と思う。

私にとって映画は、ストーリーや表現を楽しんだり世界に没入するもので、登場人物を真似しようという考えは持ったことがなかった。しかも、たとえサブスクであっても、予告を見比べた中から慎重に作品を選んで観ることが多い。
何だかいつも「さぁさぁ。最高の体験を与えてくれるんだろうね?」という構えでいるような気すらしてきた。なんとやっかいな視聴者だろう。

もっと肩の力を抜いて、自分のアンテナに引っかかるものが一つあればいいや、くらいの気軽さで、映画を見たくなった。

そんな気持ちに気づいたのも、彼女との会話があったから。

毎年クリスマスシーズンには、お礼をこめてささやかなプレゼントを渡している。喜ぶ顔を想像して、今年は何にしようか考えるのが楽しみになった日だった。

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