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【スポーツ心理学#6】コミュニケーションがパフォーマンスを高める理由は?

こんにちは、早川琢也です。


個人スポーツであれ、チームスポーツであれ、コミュニケーションがスポーツのパフォーマンスにとって重要なのは、多くの指導者や選手が実感していると思います。


では、コミュニケーションがどのようにパフォーマンスに影響を与えているのか?


要因や考えられる背景は複雑ではありますが、今回は説明できる範囲で、コミュニケーションとパフォーマンスの関係をスポーツ心理学・教育心理学から解説していこうと思います。



チーム内に自分の居場所や役割が生まれて、実力発揮しやすい環境が作られる(関係性)

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ひとつ目は、十分にコミュニケーションが取れる事で選手や指導者との関係が良くなり、その結果スポーツに対するモチベーションが高まる、という見方です。


これは、「関係性」と呼ばれる心理的ニーズで、チームに自分の居場所がある、チームに対して自分が貢献できる事がある、という心理状態の高まりがスポーツに対する意欲を高める、というメカニズムです(Deci & Ryan, 2000)。


チーム内でのコミュニケーションが円滑になり、自分がプレーしているスポーツの意欲が高まる事でパフォーマンスも高まる、というメカニズムです。



不安が解消される(ストレスの軽減)

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2つ目は、コミュニケーションを通して不安が解消されるケースです。


不安のメカニズムの1つに、未来に対して不確定な事に対して気が向いていると不安を感じやすくなりやすい、という物があります(Maier & Seligman, 1976)。


試合中にプレーに対する迷いや、今この瞬間に何をすればいいのか分からない時など、次に何をしたらいいか分からないような状態は不安を引き起こしやすい状態と言えます。


そのような課題や悩みを指導者や選手と話す事で解決していき、プレーに関する不安が解消された結果パフォーマンスが良くなる、というメカニズムです。


やるべき事が明確になる(集中力の高まり)

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3つ目は、やる事が明確になりパフォーマンスに対する集中力が高まるケースです。


2つ目の次にやる事が定まっていない状態は、言い換えると集中すべき物がはっきりしていない状態とも言えます。


反対に集中した状態は、その時その時でやるべき事に注意が向いていて、過去の失敗や未来の不安などの妨害要素が気になっていない状態です。


プレーに迷いが生じている、逆にどんなプレーをしていいか分からない時には、指導者やチームメイトとの会話を通してやる事が整理する事が出来ます。


選手の長所や努力が認められる(有能性の高まり)

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4つ目はコミュニケーション を通して自身の長所や努力が認められてプレーに対する自信(自己効力感)が高まるケースです。


自己効力感は、特定のプレーに対して「自分は出来る」など自信を持っている状態です(Bandura, 1999)。


自己効力感は、自分自身で長所を認めたり、自分が目指すお手本となる選手の真似をしたりする事でも高まりますが、他者から長所や努力が認められると認証欲求も相まってより効果があります。


まとめ

簡単にまとめただけで4つの効果やメカニズムがありました。


これまで取っていたコミュニケーションは、この4つのうちのどれかか、今回紹介されなかった他の効果があるような取り方を無意識にしていた事が多いと考えられます。


コミュニケーションはあくまで目的を果たすための方法にすぎないのです。


逆に、働きかけたい目的を意識したコミュニケーションを取る事で、意図的にやる気を高めたり、選手の不安を解消させたり、集中力を高める事が出来ます。


これまで無意識に取っていたコミュニケーションを一度見直して、目的に応じたコミュニケーションの取り方をする事で、指導の質が大きく変わってきます。


是非試してみて、選手の反応を見てみて下さい。



参考文献

Bandura, A., Freeman, W. H., & Lightsey, R. (1999). Self-efficacy: The exercise of control.

Maier, S. F., & Seligman, M. E. (1976). Learned helplessness: theory and evidence. Journal of experimental psychology: general, 105(1), 3.

Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American psychologist, 55(1), 68.






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