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【回想録 由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い 第57回】

🔷 「入院」の中の「放っておいたから罰が当たったんだ!」を掲載します。🔷

 『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』
(ハードカバー 四六版 モノクロ264ページ)
2016年1月25日 発行
著者   藤巻 隆
発行所  ブイツーソリューション

✍『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』(第57回)✍

「入院」の中の「放っておいたから罰が当たったんだ!」を掲載します。

入院

「放っておいたから罰が当たったんだ!」

 由美子がテレビを観ていた時、突然、「放っておいたから罰が当たったんだ!」と呟きました。由美子の呟きを聴き逃しませんでしたが、聞こえなかったふりをして、私は黙って本を読んでいました。

 由美子の呟きを訊いた時、由美子は自分が末期がんであることを悟った、と思いました。四年前に右胸にしこりがあることに気づき、周囲の誰にもその事実を告げず、一人で悩んでいたのだろうと推測すると、いたたまれなくなります。

 「俺たちは夫婦じゃないか! どんなことでも相談しあってきたじゃないか!」

 思わずそんな気持ちになりましたが、由美子は私や可奈(当時高校生)に過大な心配をかけたくないと思ったのでしょう。そこが、由美子の優しさであり、相手を思いやる気持ちの表れだと考え直しました。そばにいながら、由美子の気持ちを察することができなかった、私の取り返しのつかない大きな失敗でした。

 断じて、由美子のせいではありません。私のせいです。責められるべきは私であって、由美子ではありません。

(PP.129-130)


➳ 編集後記

第57回は「入院」の中の「放っておいたから罰が当たったんだ!」を書きました。

病室で由美子が呟いた言葉に心を痛めました。そばにいながら、由美子に何もしてやれませんでした。そんな自分に自己嫌悪を抱いただけでした。

いくら考えても正解は出てきません。

あの時、「ああしたら良かったのではないか。こうしたら快方に向ったのではないか」と考えたところで、「覆水盆に返らず」です。



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